2022年3.15消費者権利Dayで取り上げられたのは?

3月15日(以降315)は「世界消費者権利」(国際消費者機構が1983年に提唱)とされていますが、中国では毎年大々的に消費者権利に関わる特集番組(315晩会)が組まれます。例えば、有名ブランドが広告で謳っている機能が科学的には証明されていないことを専門家の分析から検証したり、人気飲食店の衛生管理が行き届いていないと潜入捜査を通じて暴露する等、315の報道をきっかけに世論が動き、経営にも影響するケースが少なくありません。そのため、戦々恐々として315を迎えるブランドも多いことでしょう。
今年も315晩会は3月15日20時から放送されました。今年は、ライブ配信における詐欺、クチコミ操作、フリーWi-Fiからの個人情報搾取、食品安全問題、美容医療業界の闇など、10種類の問題が取り上げられました。
特徴としては、個人情報保護がこれまで以上に問題視されてきたと言えます。中国では近年個人情報の取り扱いが厳しくなって来たとは言え、欧米や日本ほど厳格に扱われてはいません。今後は社会での意識が高まり、管理の更なる厳格化が進むことが推察されます。
また、広く普及してきている美容医療はそのグレーさがよく問題視されていますが、今回の315でもその従事者育成機構の実体が明らかにされています。業界の規制が今後どうなっていくか注視していきたいところです。
以下、具体的にいくつかをご紹介します。
WechatIDから判明。男性達をカモにした女性ライブパーソナリティの中身は男性だった

中国の上位ライブ動画配信エージェンシーには、女性パーソナリティになりすまして、投げ銭をしている男性ファン達とチャットを通じて仲良くなり、より消費を促すプロの男性運営ディレクターがいることが明らかにされました。チャット内容には曖昧な表現も含まれており、ファンを刺激し、ギフトや、よりお金を使うように誘惑します。ファンが投げたギフト総額の50%はプラットフォームの収入となり、会社側のインセンティブが25%、残りの25%はパーソナリティと運営ディレクターのインセンティブになるという仕組みです。
口コミマーケティング管理会社によるネット検索結果の操作

消費者が会社やブランドのクチコミ情報を調べたい場合、多くの人がネットで検索した結果やユーザーレビュー、関連情報等に基づいて、総合的に判断するでしょう。 ところが、一見信頼性が高く見える情報も高度に操作されていることが指摘されました。
クチコミ管理会社には多数のサクラが在籍しており、素人になりすまして「いいね!」の評価をしたり、レビューの処理をしたりしています。この他にも、「万詞覇屏」と呼ばれる商品を用いて検索結果の最適化を行い、ネットユーザーがキーワード検索をする際、表示される結果は最適化されたものになっています。また、ロボットを使用し、ネットからニュースコンテンツをキャッチして編集を行い、新しい文章としてネットにアップし、プロモーションとして使用しています。更には、ネットユーザーが批判的なレビューをアップした場合、クチコミ会管理社はそのレビューを開けないように処理することが出来ます。業界内ではこれを「404化処理」と呼んでいます。一部のクチコミ管理会社ではマイナスイメージをもたらす文書を直接削除する処理まで行うことが可能であり、処理費用も数千元から数十万元までまちまちです。
これらは中国に限らずプロモーションやデジタルマーケティングの一環として、ある程度は見られる動きと言えます。実際、中国ではこういった問題があまり大きく取り沙汰されることは多くなかったですが、今後はどの程度のコントロールまでが許されるのか等、議論となってきそうです。
老坛酸菜(漬物)は土穴で製造されていた

湖南省華容県にある、野菜の加工を行う比較的規模の大きい企業は、酸菜のOEM業者として多数の大手メーカーから漬物加工を請け負っています。大手インスタントラーメン「老坛酸菜」もそのうちの一つです。
こちらの業者では、輸出用の商品は標準化された工程にて生産されていましたが、一方でインスタントラーメンメーカーに納品される酸菜(漬物)は、他社から買い取った「土坑酸菜=(工場ではなく)土穴で製造された漬物」であったことが明らかになりました。これらの酸菜(漬物)を買い取る際、衛生基準を満たしているかどうかは確認されることがなく、漬物は直接地面に置かれて製造されているなど、衛生管理のずさんさが指摘されています。また、ある「土坑酸菜」業者の責任者によると、生産された漬物には過剰な防腐剤が添加されており、夏なら通常の2〜10倍以上添加されるとのことでした。中国の食品安全には、まだ根強い問題が存在していると言えそうです。
無料WiFiに仕掛けられたワナ

WiFiデコーダーと呼ばれるアプリがあります。これは無料WiFiに繋げる際、ソフトが勝手にダウンロード、インストールされる、またはユーザーが他のアプリをダウンロードするように誘導します。インターネット閲覧中にたくさんの広告がポップアップされると携帯電話がフリーズするだけでなく、バックグラウンドではユーザーの個人情報を収集して送信されるようになっています。
アプリケーションに大量のポップアップ広告が表示され、最低5秒以上閲覧しないとウィンドウを閉じることができず、5秒以上閲覧してもなかなか閉じることができない仕組みになっています。広告には「閉じる」というアイコンは表示されるものの、実際は広告を開くためのリンクになっていることがあります。
テスターのテスト結果によると、例えユーザーがバックグラウンドでアプリケーションをオフにした場合でも、このアプリは自動的に立ち上がり、バックグラウンドで稼働するようになっており、継続的にユーザーの個人情報を収集して広告メッセージを送信していたことがわかりました。
子供向けスマートウォッチが盗撮カメラになっていた

10万個以上ものセールスを記録した子供向けスマートウォッチは、抽選等のキャンペーンを通して悪質な不正アプリをインストールさせていました。テスト結果によると、ローバージョンOSは、アプリをインストール後、ユーザーのアクセス許可なしでもユーザーマイク・カメラ情報、位置情報を獲得できるようになっています。一方、ハイバージョンOSはユーザーがアクセス許可をしなかった場合、即時画面がダウンします。この悪質な不正アプリがインストールされると、ウォッチの位置情報、アドレス帳、通話記録等の情報から、子供の活動範囲などを随時把握することができてしまうため、子供たちの安全が懸念されます。
美容医療短期コースでヒアルロン酸注射による脳梗塞
近年、全国各地で美容整形の事故が消費者に大きな被害を与えています。しかも、そのような医療美容従事者たちが、実は医者ではなかったことが報道されました。
多くの医療美容従事者の養成機構は、インターネットで一対一指導、丁寧な指導、経験ゼロからでもはじめられる、修了後に修了証を発行するといった広告を出しています。ある記者が五千元の受講料を納め、ある養成機構の南京校微整形全科養成コースの一員になりすましました。クラスメート14人は全国各地から来た受講生で、医学的背景を持つ人は一人もいませんでした。
六日間の微整形養成コースが終了すると、ゼロからスタートした受講生たちには、養成機構より高級微整形美容師証書が発行され、発行機構名は「国際整形美容職業認定センター」となっていました。
実は、この認定センターのホームページは公式に認められたものではありません。講座修了後、講師は美容医療用品の卸売業者の連絡先をクラスのチャットグループに送信しています。受講生はこれらの業者を通して各種注射剤を安く仕入れ、上乗せ価格で顧客に注射します。
90年代生まれの小雪さんはこの類の養成機構の受講修了生ですが、このコースにおけるヒアルロン酸注射が原因で左眼を失明し、さらに脳梗塞を発症したと報じられました。

以上、2022年の315の特集をご覧いただきました。現在の社会トレンドを反映したものであると同時に、今後の動きを見る意味でも非常に参考となるかと思います。何かご質問や気になるポイントがあればお気軽にご連絡ください。お待ちしております。