2022.05.30

コロナ再燃下におけるブランドと消費者の「絆」

上海では、新型コロナウィルス感染が再び拡大し、4月1日から事実上のロックダウンとなりました。街中のお店は営業停止、物流が止まっているため、オンラインショッピングも麻痺しています。消費者にとって困難な環境が続いていますが、多くのブランドにとって厳しい状況だと言えます。
このような逆境において、物流問題を克服してVIP顧客にプレゼントを贈呈したり、オンラインレッスンプログラムの提供やオンラインアート展示会を開催するなど、さまざまな形で顧客とコミュニケーションを取り、顧客との「絆」を維持するための取り組みも行われています。上海における施策や、オンラインにおける施策など、今回はコロナが再燃する中国におけるブランドの取り組みをいくつかご紹介します。

高級ブランドからのアフターヌーン・ティーセット

ロックダウン中の上海で、ルイヴィトンとブルガリからVIP顧客に対して、サプライズの贈り物が届けられました。豪華にラッピングされたケースを開けてみると、2段構造のボックスにスイーツが詰められていました。ブランドからのアフタヌーン・ティーのスイーツセットでした。写真から見ると、まさに五つ星ホテルのスイーツを思わせる豪華さです。また、手書きメッセージカードも添えられており、厳しいコロナ禍において、ブランドからの温かい思いやりと誠意が伝わるものとなっています。

必需品でさえなかなか手に入らないロックダウン下においてスイーツは極めて贅沢品です。そんな中で、思わぬサプライズを受け取ったVIPユーザーは大きな慰めを得たでしょう。ブランドに対する好意度が一気に高まるきっかけになるでしょうし、その喜びをSNSにシェアします。結果的に、多くのユーザーの目にふれることになり、ブランドの露出にもつながっています。

ルイヴィトンから上海のVIP顧客に贈られたギフト
ブルガリから上海のVIP顧客に贈られたギフト

DIORが会員に向けてオンラインヨガコースを提供

大都市で暮らす人々の間で、フィットネスやオンライン学習に対する意欲が高まって来ています。ロックダウン中の上海に限らず、コロナの不安が広がる中で外出を控える人も多く、自宅で出来る習い事やレッスンへの関心がより高まっています。DIORはこのようなニーズを掴み、会員メンバーにオンラインヨガコースを提供しています。

DIORはまず会員にメッセージを送り、オンラインヨガアプリ「PURE360」のダウンロードを促します。そして、DIORから送信されるリンクをクリックするだけで、アプリの会員特典が得られ、無料で各種ヨガレッスンを楽しむことができます。

SNS上では、単なる無料コースという実質的な特典を超えて、そういったブランドの姿勢やポジティブなメッセージが精神的にも嬉しい、といった声もあがっています。

ドゥ・ラメールのオンラインアート展

高級化粧品のラメールは、「修復と癒し」をテーマに「Together Healing・New Life・Boundless(共癒・新生・無界)」オンラインアート展を開催しました。
ラメールはWeChatの公式アカウントを通して情報発信し、ワンクリックで楽しめる美術展へ招待しました。WeChatミニプログラムにアクセス後、「癒し」と関連する5つのテーマのサイトが用意されており、それぞれに関連した作品が表示され、「自癒」或いは「共癒」に関連するつぶやきや書き込みができるようになっています。
オンライン美術展という形を通してブランドの高級感やアート性を伝えるとともに、「癒し」に関連する文章を通して感情を表現し、コロナ禍における閲覧者の焦りや不安を解消し、消費者の心に触れ共鳴を起こすなど、消費者との距離感を縮めるプロモーションだと言えるでしょう。

PRADA「オンラインカルチャークラブ」を発表

4月23日、PRADAはWeChat公式アカウントとRedbookにて「オンラインカルチャークラブ」を発表しました。4月から5月の間、PRADAは映画監督4名、歌手3名、作家3名をゲストとして招き、各クリエイターが個人のおすすめ3作品ずつを紹介していきました。自由な行動が制限される時期において、文学、音楽、映画などカルチャーコンテンツは人々の心に寄り添う大事なものです。PRADAはカルチャーによって消費者に寄り添っています。その感銘を受けた人の中から、将来PRADAの真のファンが育っていくと考えられます。

行き届いた心遣いがブランドのファンを増やしていく

Redbookで、上記のようなとても美しいグラフィックを見かけました。

これは、企業が従業員に向けて供給した物資に関するメッセージカードで、上海の従業員に対して特別に救援物資を提供することが書かれています。

自社商品と物資を使ったグラフィックとともに、「上海(沪)を守り、互いを守ろう(沪:上海の別名称、守ると同音)」という心暖まるメッセージが書かれています。福利厚生とともに、企業の真摯な態度が伝わるクリエイティブを受け取った従業員は深く感動したと思います。そして、会社への感謝の気持ちをSNSに書き込んだ人も少なくないでしょう。実際に、WeChatではそういった投稿をたくさん見かけました。ブランドの心遣いは、従業員だけでなく、やがて良いクチコミとして広がりファンを増やしていくきっかけとなるかもしれません。

最後に

ブランドにとって、消費者とどのように「絆」を築くかが大切です。
「絆」は、簡単に出来るものではありませんが、様々な取り組みによって深まり、揺るぎないものになっていきます。コロナ禍のような、厳しい状況だからこそ強い絆の育成につながるケースもあると思います。
私たちバルコニアも、ブランドと消費者の間に強い絆を築くお手伝いが出来るよう引き続き努力して参ります。