2023.07.04

フランス縦断の旅 From Paris to Cannes

こんにちは、クリエイティブの井上です。
執筆活動はとっても苦手な私。ブログ記事は、いつも優秀な同僚たちにお任せしてしまっているのですが、先日とっても有意義な経験をしてきたので皆さんにお伝えしたいと思います。

6月19日から23日までの5日間、南フランスの地中海沿いの街カンヌで、カンヌライオンズという国際クリエイティビティ・フェスティバルが開催されました。70回目を記念する会だったこともあり、大変な盛り上がりをみせ、バルコニアからもCD2名と総経理で参加してきました。
3人ともそれぞれの視点から、消化しきれないほどのインスピレーションを受けて帰ってきたので、その様子もどこかで共有させていただく機会が持てればなぁと思っておりますが、今日はクリエイティビティ・フェスティバル自体のお話ではなく、そのサイドストーリー。
フランスをパリからカンヌまで車で旅行してみた体験を共有したいと思います。

我々の旅はさまざまなトラブルからスタートしました。
行きのフライトはアムステルダム乗り換えでパリに着く予定だったのですが、1本目のフライトがディレイし、乗り換え予定のフライトが出る10分前に着陸。。。走れば間に合うのか?など考慮したものの、結局荷物の載せ替えが間に合わないだろうということで、この便に乗るのは諦め航空会社の振替便のアサインを待つことに。ところが、その振替えも直行便がなく、1.5時間の距離なのに翌日の朝わざわざジュネーブ乗り換えで行くことに。
図らずも、オランダ、スイス、フランスとヨーロッパ3カ国を訪れることとなりました。

14時間弱のフライトの後アムステルダムで足止めを食い、とりあえずビールを飲み始めたバルコニア一同

そんなこんなで、滑り出しから大きく予定が狂い、現地時間の朝10時ごろにパリのシャルル・ド・ゴール空港に到着。休む間もなくレンタカーを借りてカンヌへの10時間の旅が始まったわけです。

【シャルル・ド・ゴール】

少し話がずれますが、皆さんシャルル・ド・ゴールって何者かご存知ですか?
フランス第18代大統領で、ナチスドイツからフランスを奪還した英雄としてフランス史上でとても重要な人物です。
ヨーロッパ一大きなパリの空港にも彼の名前がついているし、有名な凱旋門のあるエトワル広場の駅もシャルル・ド・ゴール。そのほかにもいろんな街の公園や道の名前になっているなど、いろんなところに彼の影響力が垣間見られます。
空港と市内の大きな駅が同じ名前っていうのはなんとも紛らわしいですが、それだけ大きな功績を残し、国民から愛される存在なのでしょう。

その影響力を社会貢献に使おうとした施策が、今回のカンヌライオンズでも1つのグランプリを含む6つのライオンを取っていたので、この機会に簡単に紹介させてください。

シャルル・ド・ゴールさんは3人のお子さんをお持ちだったのですが、2女のアンヌ・ド・ゴールはダウン症を持って生まれてきました。周りにも自分にも厳しかった将軍ですが、アンヌのことは溺愛し、歌を歌ったりお話を読んで聴かせたり積極的に子育てに参画していたと言われています。シャルル・ド・ゴールとその妻イボーンは1945年に、娘のアンヌと同じように障害を持つ子供たちのために、お城を一棟購入し医療従事者を配備して財団を立ち上げました。それが、Anne de Gaulle foundationです。

空港や駅の名前になるほど有名な方が立ち上げたにも関わらず、これまでアンヌド・ゴール財団は大きく取り上げられることもなく、話題にのぼることも少なかったとか。そんな状況を打開し、財団そのものだけでなく障害を持った方々の存在とその暮らしにスポットライトを当てるべく、国際障害者の日にシャルル・ド・ゴール空港を1日だけアンヌ・ド・ゴール空港と名前を変えました。空港を示す交通標識や、空港そのものの掲示物、ボーディングパスや預け入れ荷物のタグなども全て表記を変更したのだそうです。その日空港を利用した方にとっては一生忘れられないインパクトを与えたでしょうし、ニュースなどのメディアにも大きく取り上げられるなど、影響力の強い施策だったと言えます。

状況を知らない旅行者にとっては、迷惑とも取れる行為ですが、空港の名前を変えるなんてものすごい調整力ですよね!
これを成し遂げた広告代理店Havas Parisには、大きなリスペクトを贈りたいです。

【パリからカンヌへの道】

さて、話を我々の旅に戻します。
飛行機を降りてレンタカーに飛び乗り、南を目指したわけですが、40分も運転するとそこはもう広大な野原。どこまで行っても麦畑のような景色が広がっています。

「まあ、たくさんパンたべるもんなぁ」とか思いながら南下していくと、牛たちがゆったりと昼寝をしている草原が現れ(チーズ作ってんのかなぁ?)、リオンを超えたあたりからローヌ川沿い(ワインによく書いてある!)に葡萄畑が広がり、ラベンダー畑になるともうすぐマルセイユ(石鹸が有名なところ)。どんな教科書を見るよりもわかりやすくフランスの産業の紹介を受けたような気持ちでした。
日本の地形って、平地はだいたい街になっているので高速道路には防音壁が施されているし、山間は農地があっても細切れになっていて、なかなか同じような体験にはなりにくいですよね。フランス人が日本に来たら一面の水田に感動するのかしら、何て思いながら旅を続けます。

高速道路を走っていると、サービスエリアのトイレやレストランのアイコンに加えて、シーソーのアイコンがあるのに気が付きます。

[出典] https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Panneau_Aire_de_l%27Isle_d%27Abeau_1000_m.jpg

これは「子供の遊び場」を示す標識で、多くのサービスエリアに滑り台や木馬などがある小さな公園がついていました。離乳食やおむつもサービスエリアに売っているし、何て子育てのしやすい国なのでしょう!
注意して見てみると2−3人の子供を連れている家族連れがとても一般的で、何だかいい国だなぁなんて思ってしまいました。
ちなみに、日本にないアイコンはほかにもあって、「森の公園」や「ランニングコース」を表す標識もあります。行ってみるとちゃんと森の中にシートを敷いて寝ているカップルとか、お弁当を広げてピクニックしている中年の男女がいたりして。
高速道路を移動手段と捉えて「何とか最短時間で辿り着かなければ」と焦っていた我々とは、もうなんか根本的に違うものを感じましたね。
一方で、高速道路の左車線を走っていると「遅い!」って煽られたり中指立てられたりもしたのですが、彼らもきっと急いでいたわけではないのかもしれません。単純にスピードを楽しみたかったのかも。

日本でも近年働き方改革なんて言われていますが、少し人生を見直したほうがいいのかしらと思わされた交通標識でした。笑

【Happy City, Grumpy City】

今回の出張では、主にパリとカンヌを見てきたのですが、同じ国ながら2つの都市間での文化の違いを色濃く感じます。

フランス人は「英語を話してくれない」とか「白人至上主義」だとか言われることがよくあると思います。でも、カンヌに行ってみたらそんな雰囲気は全く感じられず、英語が苦手でも頑張って英語で会話をしようとしてくれたり、こちらが拙いフランス語で話すと笑顔で褒めてくれたり。
街の人がとてもにこやかで、陽気な印象を受けました。

カンヌライオンズ会場近くの、レストランストリート

フランスではチップはマストではありません。サービスチャージが含まれている場合も多く、払わなくても何ら問題はないのですが、カンヌでは何度か ”Do you want to tip? Only if you want to.” のような感じで催促をされることがありました。もちろん払う気ではいたのですが、その催促の仕方がとてもチャーミングでお金のもらい方が上手だなぁと思いました。

一方パリは、カンヌのような陽気さはあまり感じられず、より厳格な感じがしました。英語を話してくれない、と聞いていたので頑張ってフランス語で話したりしていたのですが、 初級のフランス語で外国人に話しかけられている=英語が話せないやつとして馬鹿にしている と感じ取られたのか、反対に気分を害してしまったのかな?と思うシーンもありました。。。
パリ、難しいです。

ディオールやシャネルのジュエリーラインの旗艦店があるヴァンドーム広場。

ただ、ハイブランドのスタッフの方々は素晴らしいクオリティでした。高級店こそ、冷たく平民を突き放すような雰囲気があるのではないかと怯えていたのですが、とても親しみやすくかつ品のある方々が接客を担当されていて、ブランドやコレクションについて世間話も含みながら楽しくお話をしてくださいました。
ブランドというのはこういう人たちが作るのだなと、改めて実感。大きな学びになりました。

パリでもう一つ感じたのは、マイノリティスタッフの質の高さです。街中のレストランやカフェ、帰りの飛行機の中でも黒人系のスタッフの方々のサービスクオリティの高さが光りました。アメリカではマイノリティが成功するためには、白人の2倍優秀でなければならないと言われることがあります。フランスでも似たような状況なのかもしれないですね。いろんなことを考えるきっかけになった気づきでした。

体験デザインを強みとする身としては、コロナで動けなかった4年間に失ったものは大きかったなと、再度外に出てみて痛感します。
百聞は一見にしかず。というように、行かなきゃ見えてこないこと、体験しなきゃわからないことが多くあります。
やっと自由に動ける環境に戻ったので、今後は積極的に外に出ていろんなことを体験し、感性を磨いていこうと決意した旅でした。
おすすめの街や、価値観の変わった体験などお持ちでしたら、是非レコメンドしてくださいな。