2023.07.14

デザイン上海2023――ホームファニシングの最新トレンドが一目でわかる

デザイン上海とは

DESIGN SHANGHAI(デザイン上海)は、Clarion Eventsが主催するアジアを代表するデザインイベントで、「ライフスタイル」を主としたプロダクトデザイン博覧会です。ソファー、ベッド、クローゼット、オフィス機器などのデザインに加え、壁塗装、パネル、スイッチ、壁紙など、さまざまな新素材や新しい製造技術が展示されています。さらには、絵画や絨毯等の大きなものから花瓶、食器、フレグランス等の小物までライフスタイルに関わる様々なものが展示されています。

今年で10回目を迎えるデザイン上海2023は、6月8日に上海世博展覧館で開催され、「サスティナブルデザインの次のステップ: "再創造" - Design for Wellbeing」を主要テーマとしています。この4日間のイベントには、40を超える国と地域から600を超えるブランドとデザイナーが集まり、4日間で77,254人が来場しました。そのうちの75%の来場者がデザインに携わる仕事をしています。また、フォーラムや特別企画展、デザインイベントなどの豊富なプログラムがあり、国内外から100人を超える著名なデザイナーが一堂に集まりました。

デザイナーから見た3つのトレンド

デザイナーとして、今年のデザイン上海から感じた、ホームファニシングにおける消費者ニーズの3つのトレンドをご紹介します。

トレンド1:消費者はデザイン性を求め、インテリアの個性に対するニーズが高まっています。

この傾向は、特にライフスタイルとアクセサリー、デザインの展示エリアで顕著にみられました。フレグランスのカテゴリーだけでも、ポップアート、クールで抽象的なもの、ミステリアスなもの、フレッシュでナチュラルな日本風のものまで様々な、展示エリアのデザインは多様で個性的なものばかりでした。 消費者の多様なニーズは、各ブランドの個性的なブースデザインと絶え間ない人の流れからも感じることができました。

さまざまな香りのブースが、それぞれ異なるデザインで目を引き多くの消費者を魅了しました。

トレンド2:オンラインプロモーションの重要性が増したことによる、特色あるマーケティング方法

どの出展ブランドも、オンラインでの二次的なプロモーションを重視していました。 また、オンラインとオフラインを同時に展開する新興ブランドも数多く見られました。
例えば、若い女の子向けの水晶玉ブランド「JARLL」では、デザイン上海でのオフライン出展の機会を有効に活用しました。6月8日の発表会終了後にモデルを現場に招き、撮影イベントを行いました。ブランドが用意したプロカメラマン以外にも、すぐに大勢の見物客や来場していたカメラマンが集まりました。モデルの際立った姿に魅了された観客たちは、興味津々で後を追い、さらに観客が増え続けました。その結果、警備スタッフが出動し、来場者の動線整理を行う場面も見られまし。

ブースは写真撮影する人々でごった返し、警備員が動線整理をする事態となりました。

カメラマンの撮影した動画素材はすぐに編集され、展示会の2日目にはさまざまな動画プラットフォームで公開され、拡散されました。

WeChat、TikTok、RED Bookで翌日公開されました。

ブランドは一方的な宣伝だけでなく、視聴者とのインタラクションを重要視しています。会場にはHTML5のミニゲームが用意されており、来場者はミニゲームを通じてオンライン水晶玉のDIYカスタマイズを体験することできます。また、生成されたポスターをWeChatモーメンツで共有すると、ブランドからミニ水晶玉、透明エコバッグがプレゼントされました。

今年はほとんどのブランドがPDF資料をWeChat経由で直接送信する方式を採用しました。オフラインの来場者をオンライン・ユーザーに変換することは、ブランドが展示会に参加する重要な目的の一つと言えます。オンライン・ユーザーとつながり続け、価値のある情報を低コストでターゲット層に配信することによって、ブランドは集客動線とコンバージョン顧客を得ることができます。

JARLLのHTML5スクリーンショット&無料の透明エコバッグ写真

トレンド3:民族文化への自尊心が高まり、家具分野における新しい中国の美学を発信。

「新中式」デザインはいたるところで見ることが出来ました。その一例が、ダンファニチャーU+のティーテーブルです。お茶を飲み、客人を迎えるという中国の習慣を反映した中国風デザインとなります。茶卓は古代の食品箱の形をしていて、 ミニマリストの精神が現代の生活に溶け込んでいます。

※「新中式」古典とモダンの融合に重点を置き、古典的な要素を簡素化し、モダンな要素を古典の土台に加えることで、中国式の優雅さと威厳を反映させたスタイル。全体の色彩と素材の選択にデザイナーの腕が試される。

U+の「新中式」茶卓

その他にも「RE STUDIO」は、中国の少数民族である侗族(トン族)が伝統衣装を作る際に使用する「亮布」という生地をデザインに応用し、特殊加工を施した布で作られた花瓶セットを出展。この作品は2023年度Design Shanghai Picks Awardを受賞しました。

※通常の綿生地は湯通し、絞り染め、乾燥、揉み叩き加工の工程を経て、生地が硬くなり、表面に上品なエナメル光沢が出ることから亮布と呼ばれています。

ブライト生地から作った花瓶
左:オフホワイト:「亮布」を染める前、黒:「亮布」を染めた後
右:観客は「亮布」の作品に大きな関心を示していました

注目を集めた国際ブランドブース例

日本のオフィスブランド、オカムラが開発したシルフィー・オフィスチェアは、人間の背中を完璧にサポートする背もたれ調整機能を備えています。準備した商品カタログは5時間で全て配布が終了するほどの人気となりました。
BCG(Boston Consulting Group)とTmallは共同で「家装家居行业经营趋势白皮书」を発表し、次のように言っています。「コロナでリモートワークが多くなった影響や、座って作業することの増えた現代の働き方により、ホームオフィスや空間に対する消費者ニーズは高くなり、その結果支出の増加、購買意欲が高まっています。」
Tmallのデータによると、全体の27%が快適性を高めるために、より高価なホームオフィス用の机や椅子を購入を検討していることが分かりました。
そのため、高品質のシルフィーを展示するokamuraのブースには大勢の来場者が座り心地を試しに来ました。 今回のokamuraのブースは、他ブランドと比べても大規模で、一際人目を引いており、このことからもブランドがどれだけ中国市場を重要視し、力を入れているかが伺えました。

日本のオフィスブランドokamuraのブース

東洋と西洋のデザイン哲学を取り入れた中国ローカルブランド

モダン家具「U+」は、東洋と西洋のデザイン哲学を結合し、高品質の原材料と絶妙な職人技を発揮して作られた「融椅」を初披露しました。

左:「U+」の創設者が観客と積極的に交流。右:「U+」初披露の「融椅」

展示会は非常に多様で、様々なクリエイティブ、アイディアが溢れていました。特別企画展や持ち回りで行われる講演者のラインナップもそうそうたる顔ぶれで、1日で全てのブランドブースを回るには時間が足りないとても充実した内容となっていました。
こういった展示会を通して、我々は常に最新のブランド情報やデザイン、トレンド情報に対してアンテナを張っています。ご興味のある方は、ぜひお気軽にご連絡ください。