2023.08.23

中国でよく似たショッピングセンターが多く存在する3つの要因と現在の傾向

中国では、一級都市から三級都市、さらには六線都市まで、よく似たショッピングセンターが多く存在しているという現象があります。これらのショッピングセンターは、ブランド店舗から内装、サービス施設まで非常に馴染み深く統一感のあるものになっています。その中でも特に知名度の高いブランドは「万達」です。2013年の85ヶ所からスタートし、2022年末には473ヶ所まで急速に拡大し、驚異なスピードで成長し続けています。

万達広場 外観効果図
画像出典:https://gy.news.fang.com/2022-03-01/43177837.htm

ブランドウェブサイトの最新評価データによると、モール分野では、万達グループがトップとなっており、第2位が万象城です。2023年1月現在、中国には31ヶ所の万象城が建てられています。万象城は万達ほどカバー率や浸透率は高くないとお思いかもしれません。万達とブランドとターゲットが異なり、中高級階級をターゲットとし、一級と新一級都市をほぼカバーしており、一級と新一級ではわりとおなじみのモールになっています。そして、第3位のK11は12ヶ所です。

画像出典:https://www.chinapp.com/paihang/mall

中国のショッピングセンターがこれほど急速に拡張して都市の類似性を高めた背景には、以下の3つの要因が考えられます:

1、土地取得の当日に施工図を提出できる開発モデル

2013年、万達は「文化観光都市*」の概念を提唱し、武漢からスタートしました。その後、この概念は急速に二級・三級都市に複製され広がりました。当時の万達のスローガンは、「すべての万達広場は、土地取得後18ヶ月以内に建設と開業を完成させなければならない」というもの。万達は土地取得当日に施工図を提出できるまで作業効率を向上させました。このような開発モデルにより、万達は驚異的な速さで標準化の複製を実現することができるようになりました。

*文化観光都市:文化テーマを通じて、文化観光都市は商業、観光、レジャーを統合し、文化観光+宿泊、文化観光+科学技術、文化観光+スポーツ、文化観光+ショッピングなど、さまざまなタイプのビジネスからなる複合空間を形成しています。

万達長白山リゾート写真
画像出典:https://www.wanda.cn/mobile/textbrigade/

2、「万象城」は新一級都市*の「標準」になっていて、新一級都市はモジュール化が進んでいる

万象城は2004年に深センで開業し、同時に「複合商業施設」という概念を創り出しました。それまで商業施設にオフィスビルとホテルを併設し、周辺に高級住宅もあるというモデルは一般的に知られていませんでした。今ではほぼすべての新一級都市に1つ以上の万象城が存在しており、言い換えれば、万象城は新一級都市の「標準」とも言えるのではないでしょうか。

武漢万象城 効果図
画像出典:https://m.anjuke.com/wh/loupan/484245/

「赢商網」の統計によると、2023年、華潤グループが 5ヶ所の万象城を含む12つのプロジェクトがオープンする予定です。

2023年に、華潤グループがオープン予定のモール
データソース:https://baijiahao.baidu.com/s?id=1765823425874726170

*2023年中国新一級都市:成都、重慶、杭州、武漢、蘇州、西安、南京、長沙、天津、鄭州、東莞、青島、昆明、寧波、合肥。

3、モールが進出する際に、ブランドに「バーター」を要求することになります

過去10年間におけるショッピングセンターの複製は、ブランド店舗も複製されることを意味しています。ZARA、H&M、スターバックスなど、これらのブランドは中国の主要都市にあるショッピングセンターに続々と出店してきました。一時期、競合ブランドであるユニクロとH&Mは、新規オープンする全てのショッピングモールに同時に出店し、まるで双子のように三級や四級の都市のショッピングセンターに現れました。
ショッピングセンターとブランドがタイアップするメリットは、より多くの三級や四級の都市に進出するブランドがサポートを受けられるという点です。賃料の免除、内装の補助金、優れたロケーションなどの特典を享受できるため、店舗開設コストを削減できるのです。一方で、ブランド戦略の観点から、比較的低いランクの都市に進出することによって売上の低迷や、ブランドのサービス水準に達していない新しい地域に進出することによって冷遇される可能性があるなどといったデメリットもあります。
内部情報によれば、ZARAの親会社であるInditexグループは8つのブランドを保有しており、これらのブランドと万達は深い戦略的パートナーシップを築いています。例えば、ブランドが広場のビジネスセンターエリアに開店する場合、それと同じ時期に比較的人気がないエリアにも出店必要があります。これはまるでエルメスの「配分システム」のようです。初めて聞く方は驚かれるかもしれませんが、よく考えてみるとこのようなタイアップ販売モデルは新しいものではありません。数年前に携帯電話の料金プランでよく使われるモデルでしたが、今では不動産業界においても合理的に運用されているようです。

「ここで、エルメス中国の「配分システム」(暗黙のルール)について少しご説明したいと思います。これは、例えばエルメスのBirkinシリーズのバッグを購入したい場合、同時にエルメスの他の商品も購入する必要があるというルールです。日本語でいうとバーターみたいなことになります。この比率は一般的に1対2の間であり、バッグが8万元であれば、8万元から16万元の他の商品を購入する必要があります。具体的な配分は、購入したいバッグの色や人気度によって異なります。」

「厳選された小売店」が静かにブームに

このように、商業センターがますます似てくるにつれて、人々は標準でないものを求めるようになり、独自性を追求する動きが広がっています。その結果、"厳選された小売店"というトレンドが生まれました。上海のTX淮海、成都のCOSMO、北京のTHE BOXなどがその代表例であり、「若さの力」を中心に打ち出した商業エリアは、伝統的な大きなボックス型のショッピングセンターではなく、多くのニッチなローカルブランドを招き、特別な建築空間内で商業施設の運営を行っています。

上海 TX淮海 外観
画像出典:https://m.thepaper.cn/newsDetail_forward_10913161
成都 COSMO 外観
画像出典:https://www.sohu.com/a/625961145_100027972
北京 The Box 外観
画像出典:https://www.shangyexinzhi.com/article/5670917.html

イノベーションは置き換えるのではなく、穴埋めを続けることなのです。一つの都市には多種多様な人がいます、それに対応したさまざまな商業スタイルも必要になってきます。中国でさまざまな都市で人気の「万達」もあるし、新一級都市以上カバー済み高級な「万象城」もあるし、個性的な「厳選された小売店」も必要なのです。