2023.09.08

コンサートチケット入手困難なのに、なぜ黄牛(転売業者)は確保しているのか

※黄牛とは、各種のチケット、切符、クーポン、物資などを転売する非公式な仲介者を指します。彼らは一般の人々が購入できないように大量買い占めするによって、確保している商品を高値で転売し、利益を得ています。

今年、オフラインのコンサート市場は回復したものの、チケット入手困難というトピックが頻繁に検索キーワードにランクインしています。たとえチケットアプリの購入手順を熟知した上で、アラームをセットしたとしても、販売開始からたった5秒で「売り切れ」と表示されるのです。ところが、WeChatを開くと、転売業者は一番離れているスタンド席から最前列までほとんどのチケットを押さえているようです。

コンサートチケットを購入できなかったユーザーからの投稿が殺到
画像出典:REDユーザーのスクリーンショット

ファンがチケットを買えないのはなぜか

実は、コンサートのチケット販売には利益チェーンがあります:チケット代理サービス、社内購入、スポンサー、そして転売業者も含まれています。また、転売業者にもさまざまなタイプがあり、アプリでチケットを購入する場合、まず出くわすのが利益チェーンの一番下流にいる個人転売業者です。一般人が端末でチケットを選んでいる間、プロのチケット転売業者は既に外部ソフトを使って数ミリ秒という速さで自動的にチケットを購入しているのです。

転売業者がチケットを購入している場面
画像出典:REDユーザーのスクリーンショット

主催者にとって、チケットの一次流通市場は多くの販売チャネルの一つに過ぎず、スポンサーへの配慮から、意図的に販売枚数を制限しているのです。たとえば、2019年に香港で開催された実力派歌手のコンサートの場合、内部購入の比率が80%になっており、一次流通で販売されるチケット枚数はわずか全体の20%でした。つまり、収容人数が12,500人の紅磡体育館の場合、一般販売されるチケットはわずか2,500枚しかないということになります。このような内幕取引を防ぐために、中国文化部はチケットの一般販売比率を70%以上にしなければならないという通達を発行しました。したがって、ファンがなかなかコンサートチケットを買えない主な原因として、転売業者がチケット購入ソフトを使ったチケット購入と一般販売チケット比率が低いことが考えられます。

収容人数12,500人の紅磡体育館でコンサートが開催されている
画像出典:https://www.meipian.cn/1gcmoid5

転売業者はなぜ万能なのか

転売業者の強みは、一次流通市場以外からチケットを入手できることです。では、なぜ主催者は転売業者にチケットを譲渡するのでしょうか?それは、コンサートは純粋なビジネスイベントであり、最終決定権を持つ主催者は多くのファンにコンサートを楽しんでもらうことよりも、利益最大化を目的としているからです。

会社がアーティストのコンサート主催権を獲得した後、会場の予約、スポンサーとの打ち合わせ、テクニカルサービス(舞台照明デザイン)の購入、特に有名アーティストの出演料、ステージ設営費、会場の賃貸料など、これらには非常に高額な費用がかかります。たとえば、鳥の巣スタジアムの1日の賃貸料はおおよそ7,200万円もします。これらの費用を支払うと、主催者が直面する課題は言うまでもなく投資回収なのです。しかし、物価管理局がチケット価格に対して制限を設けているので、主催者と転売業者との間に安定したビジネス関係が形成されるわけです。

主催者側は、大部分のチケットを転売業者に通常のチケット価格よりもはるかに高い価格で販売する一方で、チケット販売プラットフォームでは同じ手法で一般販売数量を減らし、転売業者に高価なチケットを譲渡することによってより多くの利益が得られます。その結果、プラットフォーム上では少数のチケットが瞬時に売り切れとなり、コンサートが大変人気でチケットが入手困難だという印象を与え、高額なチケットが転売市場でスムーズに販売される手助けをしているのです。

主催者にとって転売業者は2つの重要な役割を担っています。1つはチケット価格を引き上げることで、もう1つはリスク転嫁です。如何でしょうか、なぜ転売業者が万能に見えてしまうのか、その原因がわかってきたのではないでしょうか。

SNSで転売業者が人気歌手コンサートチケットを転売しているチャット記録
画像出典:REDユーザー投稿

転売業者はなぜ禁止されても後をたたないのか

2021年に発表されたコンサートチケット販売システムサービス及び技術に関する規範によれば、チケット購入実名制の導入が要求されており、チケット購入時には個人の身分証明書が必要となります。残念ながら、これは現在の実名制の中でも最も緩いものです。転売業者は友人や家族の身分証明書を使っているため、ほとんど影響を受けていません。今、転売業者を取り締まるのに最も効果的な方法は、強制的な実名制の導入でしょう。つまり、入場時に顔認識を要求し、チケットの払い戻しや譲渡を不可能にするなど、致命的な一撃を入れることです。

では、この方法を広めることは可能なのしょうか?実は、今年上海で開催されたいくつかのコンサートでこのやり方を採用しました。多くの観客が急用でチケットをキャンセルするという事態が発生してしまい、これに対応するために開催日の1週前に12時間対応を行うキャンセル受付窓口を設置することになったそうです。これは転売業者の撃退に非常に効果的なのですが、観客のキャンセル返金権を損なう恐れがあります。また、キャンセルポリシーを導入すると主催者側のリスクが増加するといった避けられない欠点があります。ですので、転売業者を撃退しつつ、消費者の権益を損なわない方法が見つかるまで転売業者は存在し続けるでしょう。

かつて、中国の鉄道公式チケット予約プラットフォーム「12306」は、春節期間の転売業者を排除することに成功しました。今後、コンサート市場からも転売業者が消えることを願っています。