2023.09.21

日本のFIREよりさらに進んだ、中国の若者の「老後」への準備

出典:「一条」のRED投稿の動画スクリーンショット

中国の伝統的観念では、死は避けて通れないが忌避すべき話題の一つです。過去数年間において、世間では「老いへの不安」、「若さへの執念」にまつわる情報や消費トレンドが続出してきました。しかし、このようなトレンドの中、最近では若者の間で老いることや死について積極的な議論に参加し、老後の生活を事前に計画し始めている人が見受けられるようになりました。下図のとおり、REDと後浪研究所が発表した報告によれば、60%以上の若者(20〜35歳)は、30歳までには老後生活について考えるべきだと回答しています。

質問項目「いつごろから老後生活について考えるべきか」の回答比率

60%以上の若者が30歳までには老後生活について考えるべきだと回答している
出典:RED X 後浪研究所

老後について議論する際、老後に備えてやるべきことといえば、貯蓄と保険に加入することが一般的認識となっています。報告によると、若者たちは老後生活のために、54.6%は資産運用を始めており、39.5%は保険に加入する予定、そして、23.9%は住宅を購入する予定があるという結果になっています。このように、「物質的な備え」が老後の計画において非常に重要であることが見て取れます。

老後に備えて「貯蓄と保険に加入」の割合が最も高い
出典:RED X 後浪研究所

SNS上の若者たちは老後に向けてどんな準備をしているのか?

1、老後のパートナーを探し、高齢者向け施設を検討する

SNS上で、若者たちは老後生活を楽しく過ごすために、意識的にパートナーを探したり、高齢者向け施設を一緒に検討したりしています。

左図:ユーザーが老後パートナーを募集する投稿
右図:若者向け老人ホームの紹介
画像出典:RED投稿

2、遺影写真、遺言書、葬儀で流す曲などの終活

若者の間では死と加齢に対する態度がよりオープンになってきており、SNSには遺言書、遺影写真の生前撮影、葬儀でかけたい曲の候補などを事前に準備する投稿が急増しています。また、生きているうちに自ら「生前葬」を行う人さえいます。

左図:REDユーザーが自分の生前葬で流す曲を選んでいる
右図:あるブロガーが自分の生前葬の全過程をアップしている
画像出典:REDユーザー

3、シニアKOLおよび有名人による関連話題の議論が高まっている

SNS上で個人の日常生活やファッションセンスに関する経験を共有するシニアKOLやシニア世代のインフルエンサー数が増加しており、シニア層向けのモデルビジネスを専門的に手がけるモデルエージェンシーも登場しています。これらのKOLは多くのファッション雑誌やブランドとコラボレーションを行っています。

REDでは「シニアコーデ」ブロガーや関連投稿が話題になっている
画像出典:REDユーザー投稿

なぜ若者たちは早めに老後のライフプランを立てるのか

原因その1:急速に進む高齢化と低い結婚率・出生率

2021年、中国の65歳以上の高齢者は2億人に達し、総人口の14.2%を占め、中国は中程度の高齢化社会に突入しました。同時に、中国の結婚率は年々減少しており、2013年は9.9%でしたが、2022年では5.2%にまで減少しました。また、出生率も2016年から急速に下落し、2022年には6.77%にまで低下しました。若者たちは高齢になった親の介護に備える一方で、自分自身の老後への不安、面倒を見てくれる人がいないことを心配しているようです。

*老年抚养比(老齢依存率):労働人口に対する非労働人口の比率、依存率が高ければ高いほど、労働人口の負担が大きいことを示している。
データソース:国家統計局

原因その2:豊かなシニア生活は若者に好影響を与えている

今日、一部のシニアはすでに定年退職しており、物質的な豊かさもある程度保障され、どの世代とも違う充実した生活を楽しんでいます。そして、ソーシャルメディアの普及が進む中、セルフメディアを通してそのライフスタイルを多くのユーザーに広めています。彼らの老後生活はストレスフルな都市で生活する若者にとって大変羨ましいものであり、その独特なライフスタイルはお手本にもなっているのです。

SNS上では魅力的なシニア層のライフスタイル関連コンテンツの投稿が多く、楽しさが溢れている
画像出典:RED投稿

原因その3:老後生活への憧れを通じて良い意味での現実避逃につながる

「老後の生活」が流行の話題になった大きな理由として、人々は理想的な老後生活に対する憧れと想像を通じて、高ストレス社会と時間に追われる日々の生活や現実から逃げたい、将来への不安を払拭したいといったことが考えられます。

定年後ののんびりとした生活は、都市で頑張っている若者に美しい夢をもたらし、仕事のプレッシャーを和らげている
画像出典:RED投稿

最後に

若者が積極的に老後の生活に備えていますが、その背後にある動機として、老後生活への憧れ、好奇心や可能性の探究などが考えられます。かつての「老いへの不安」、「若さへの執念」などといったフレーズは今の時代にそぐわないかもしれません。若者が老後生活を受け入れる意識や好奇心を持っていることから、ブランドは豊かな老後生活に焦点を当て、多様性に富んだシニアライフスタイルのお手本を示すなど、若者の不安や恐怖を和らげたり、健やかな心と正しい認識で人生に臨むように励ましたりすることができるのではないでしょうか。