ぶらぶらするのが楽しい、デカトロン（DECATHLON）が選ばれるわけ

最近、デカトロン（DECATHLON、フランスのスポーツ用品会社）は2022年のグローバル販売データを発表しました。報道によれば、純売上高が154億ユーロ、純利益が9.23億ユーロ（約73億人民元）、過去最高記録を達成したそうです。これを聞いた時、私は驚きを禁じ得ませんでした。

数年前なら、デカトロンはどちらかというと中規模なスポーツ用品売り場というイメージがあり、デカトロンは実用性と機能性に重点を置いております。店舗レイアウトや内装も比較的地味で、商品の価格を下げることでコスト削減はできたものの、オシャレ感はほとんど感じられませんでした。

それゆえ、巷でデカトロンは「シニア層の楽園」、「直男^※の天国」と呼ばれていましたが、それなりの理由があったようです。コスパの良さはシニア層の心を鷲掴みにし、店内には男性客が喜ぶさまざまな無料の運動器具がずらりと並べてありました。彼らは口紅の色を見分けることができなくても、ゴムバンドの抵抗を使ったローイングマシンと磁気抵抗タイプの違いなら、いくらでも詳しく説明できるでしょう。

※「直男」とは、あまり気が利かず、女心がわからない男性を指します。

その後、デカトロンは少しずつ商品陳列の改善を行い、スーパーの陳列棚のような印象は依然として残っていますが、ローラースケート、サイクリング、アーチェリー、バスケットボール、キャンプなどバリエーション豊かなアクティビティを楽しめる体験エリアがどんどん増えました。また、デカトロンは子連れのお出かけにぴったりな遊び場にもなり、子どもたちは体験エリアで楽しい時間を過ごしています。

特に最近では、REDのファッショナブルな若者たちもデカトロンを積極的に訪れるようになり、「好逛（ぶらぶら歩きに最適）」と賞賛しているのです。REDのデータによれば、昨年10月の投稿数は5万件ほどでしたが、今は11万件以上にまで増えています。ユーザー投稿で「好逛」は最も頻繁に言及されるキーワードとなり、中には「デカトロンなら１日ぶらぶら過ごせるよ」と大げさに言う人もいます。

アウトドアスポーツの人気が高まる中、ますます多くのユーザーがデカトロンの初心者向け商品を推すようになりました。かつてはごく一般的な商品と見なされていたアウトドアジャケットやフィッシングベストも、今ではアウトドア愛好者に大人気です。特にピンク色の少女風リュックサックは、家族旅行や通勤用に「知られざる神アイテム」として愛用されています。    

他にも、「デカトロンのおすすめアイテム」、「デカトロンの宝物アイテム」、「デカトロンの神パンツ」などRED上で人気な検索キーワードとなり、ファッションブロガーたちもデカトロンのスタイリングやコーディネートを紹介し始めています。

では、デカトロンはどのようにして「直男」スポーツブランドからRED女子たちの推しとなるブランドに変身できたのでしょうか。

まずは人々のライフスタイルの変化です。健康への関心が高まるにつれ、サイクリング、ハイキング、キャンプ、フリスビー、SUPなどのアウトドアスポーツは若者を中心に普及しつつあります。この現象はアウトドアスポーツに新たな活力をもたらしただけでなく、関連装備の需要も持続的に増えています。

次に、デカトロンは女性消費者に注目し始めたのです。デカトロンは、中国の女性スイミングユーザーのニーズに合った製品を提供するために、イノベーションデザインチームを設立しました。スイミング製品に加えて、ヨガやピラティスなど女性向けスポーツカテゴリーも展開しており、潜在力を最大限に引き出し、女性市場を勝ち取るチャンスを掴むことができたのです。

最後に、最も重要な点は、スポーツの参入ハードルを下げるというデカトロンのブランドポジショニングであると考えます。デカトロンはより多くの人が運動やスポーツを楽しみ、生活習慣の一部となるように参加を促しているのです。

このように、デカトロンは若年層のアウトドアスポーツトレンドに目配りしつつ、女性市場にも積極的に布石を打ち、誰でも気軽に参加できるように運動やスポーツの参入ハードルを下げる等の取り組みを通して、多くの消費者を引き寄せました。これこそがデカトロンの持続的な成長を支えた最大の要因ではないでしょうか。