2024.07.01

「2024年中国上海美容博覧会」へ行ってきました

2024年5月22日〜25日、中国最大級の美容博覧会「2024年中国上海美容博覧会」が開催されました。今年も会場に足を運び、その様子を視察してきました。

中国美容博覧会とは

中国美容博覧会(以下CBE)とは、美容業界をリードする BtoBプラットフォームです。
アジアはもちろん世界でもトップクラスの規模を誇る展示会で、毎年、展示面積23万㎡もの巨大な会場に、3200社以上の企業が集結し、化粧品やヘアケア、美容機器などのプロダクトのみならず、OEMメーカーや、包装、機械、原材料メーカーなどのサプライヤーまで美容業界に携わる様々な企業が出展し、世界中の美容関係者が繋がる機会となっています。

CBE視察レポート

青:CBE Supply (上海日用品化粧品技術展)、ピンク:化粧品展示会、紫:ハイエンド美容展示会
(画像出展:https://mp.weixin.qq.com/s/nZmeTcHaY1D-b-M901XMJA)

今回は、日系ブランドが出展する「N5」エリアに加え、ヘアケアやメイク、スキンケアブランドが出展する「W1」「W2」エリアをメインに回りました。会場の様子やブースを回る中で私が注目したポイントをみなさんにもシェアできればと思います。
CBEに参加された方も、残念ながら参加ができなかった方も、是非この記事を参考に、中国美容業界のトレンドについて理解を深めてもらえたら嬉しいです。

スキンケアカテゴリ

日系ブランド

去年は日系ブランドの出展エリアでも、日本ブランドに見せかけたローカルブランドが多く見られ、日系ブランドの存在感が弱かった印象でしたが、今年は日系ブランドの出展も比較的多かったです。

N5エリア(日系)出展ブランド:KOSEやORBIS、HABAなど多数の日本ブランドが出展
(CBEパンフレットより)

N5エリアを回る中で、ブースに立つスタッフの方に色々質問をしてみました。日本人にとっては嬉しい話がいくつか聞けたので、みなさんにもシェアしますね。

● なぜ日系ブランドを取り扱っている?

日本の商品を取り扱ういくつかの代理商になぜ日本ブランドを積極的に取り入れているのか聞いてみました。共通して聞かれたのは、「ものがいい」という点です。
「ブランドの知名度が高くなくても、もの自体がいいものは売れるという認識。実際、KOLマーケティングによって露出を増やすことでバズり、売り切れ状態が続いたため、新たにチャネル開拓をしている」という話や、「日本の商品はクオリティが高い。韓国などの商品と比べても効果実感がよく、日本で人気になっている商品は、中国でも反応がいいので積極的に扱いたい」などといった話がありました。

日系抗老化保養スキンケアブランド「Beaub」KOL投稿により中国でバズる

中国消費者が盲目に消費をする時代は終わり、日系ブランドだから買う、という傾向は以前ほど強くはないものの、日本のブランドに対するクオリティへの期待や信頼は一定レベルで存在していると感じました。

● どんなチャネルで展開している?

日系ブランドを見かけたら、この商品はどこで売っているか?という質問を何ブースかで聞いてみましたが、「サロンで取り扱っている」という回答があり、日本でサロンを全国展開していて、そこで使っている商品を扱ってくれる中国のサロンを探したり、中国に店舗を展開したりしているケースがいくつかありました。
有名ブランドではない場合、ブランド自ら空中戦のマーケティング施策を仕掛けるよりも、提携先のサロンというチャネルを利用して商品を卸していくやり方の方が、効率よく卸し先を広げていけるでしょうし、こういったブランドは今後も増えていくのではないでしょうか。

● 処理水の影響は?

処理水放出の影響を受け、去年日系ブランドが受けたインパクトはとても大きかったです。多くのブランドの売り上げが落ち込み、W11などの商戦期でも厳しい戦いを強いられました。スタッフの方にもまだ影響はありそうか?と聞いてみましたが、今は処理水による影響はほぼない、という話も聞かれ、今年のCBEは新たに中国市場に商品力のある日系ブランドを持ち込む機会として捉えられている様子が伺えました。

近年のスキンケアのトレンド

近年の中国では美容医療が非常に流行しており、Mob研究院の「2023医美人群洞察报告(2023美容医療ユーザーの動向レポート)」によると、その市場規模は2022年時点で2300億元となり、2017年比で104.6%の成長率、また、美容医療ユーザーは2023年時点で2354億人にたっし、2017年比で488.5%の成長率となっています。

2017年-2022年の中国美容医療市場規模
Mob研究院「2023医美人群洞察报告(2023美容医療ユーザーの動向レポート)」より抜粋
2017年-2023年の中国美容医療ユーザー規模
Mob研究院「2023医美人群洞察报告(2023美容医療ユーザーの動向レポート)」より抜粋

弊社でもスキンケア意識に関する消費者調査などをやる機会が多いのですが、美容医療を受けて美しい肌を保ち、スキンケアで普段の基礎的なケアをするという意識を持った中国人消費者が増えてきている印象です。そういった傾向に伴い、美容医療と合わせて使用することで、さらにその効果を上げるといったスキンケア商品が市場に多く出回るようになってきました。

人々がスキンケア商品に対しても、より美容医療級の効果を求めるようになる中で、今年のCBEでは美容医療ほど即効性は謳わないものの、短期間で肌悩みを解決ができそうと思わせる、従来のスキンケアと美容医療の間を取ったような訴求を直感的に分かりやすい表現で打ち出すブランドも複数見られました。

「14天解决暗、纹、垮 敏感肌抗老专研(14日間でくすみ、しわ、たるみを解決 敏感肌の抗老化専門研究)」というコピーで打ち出している美容液。

商品の効果効能を実際に検証していることを説明した「14天 人体功效验证(14日間の人体効果検証)」という文句。

「专攻深纹 2周速褪(深いシワにアプローチ 2週間ですぐに消える)」という打ち出しのコピー。

14日間というのは、中国人にとってちょうどいい期間なのか、14日で効果実感という文言が多数見られました。もしかすると、嘘くささも大袈裟さもなく、受け入れやすい期間なのかもしれませんね!

ヘアケアカテゴリ

W1、W2エリアを回る中で私が注目したものの一つは、ヘアケアブランドです。
中国人の50%以上は頭皮がオイリーで、頭皮・髪の悩みの元となる1番の原因となっており、REDの頭皮ケアに関する投稿でも、キーワードとして上位に上がってくるのが「头皮护理(頭皮ケア)」「控油蓬松(オイルコントロール・ふんわり)」「头皮健康(頭皮健康)」などとなっており、そういった悩みにアプローチできる商品が売れています。

CBNDATA「2023年国民头皮健康白皮书」より抜粋

今回私は各ブランドがどのような訴求で打ち出しているのかに注目してみました。やはり中国人の頭皮・髪悩みにアプローチできる「抜け毛防止」や「ふんわり髪」と言った効果効能を謳っているブランドが多かったのですが、私が面白いなと思ったのは、「頭皮のケアが心身まで影響する」という訴求を打ち出しているブランドがいくつかあったことです。

Off&Relux(日系ブランド)は、「净化从发肤直至身心(浄化は頭の肌から心身まで届く)」というコピーを打ち出し、その商品の特徴である「洗浄効果」を訴求するとともに、心まで浄化されるという表現になっています。

Venaisas(フランスブランド)は、メインコピーは「焕发每一丝可能(髪1本1本の可能性が光り輝く)」という打ち出しになっているのですが、ブランドの紹介文の中に「功能从发肤直至身心(効能は頭の肌から心身まで届く)」という表現が使われており、Off&Reluxと似たようなメッセージを打ち出しています。

CBNDATAの「2023年国民头皮健康白皮书(2023年国民頭皮健康ホワイトペーパー)」によると、調査対象者1000人のうち、約90%の中国人消費者は頭皮・髪の問題をその見た目への影響だけではなく、心理にもマイナスの影響を及ぼしていると回答したと報告しています。

CBNDATA「2023年国民头皮健康白皮书」より抜粋

頭皮や髪の外見的な悩みにとどまらず、その悩みから生まれる「自信をなくす」や「人との交流が億劫になる」「生活の質や幸福度が下がる」などといった心理的な影響をうける人も多く、上記で紹介した2つのブランドは、そういった中国人消費者のインサイトをうまくキャッチし、メッセージを打ち出すことができているのではないかと思います。

サンケアカテゴリ

W1、W2エリアを回る中で、サンケア商品にも注目しました。
今年のCBEでは、日焼け止め+スキンケア機能がついているサンケア商品がいくつかみられました。

lurara(日系ブランド)の日焼け止めは、「防晒又养肤 清透好肤感(紫外線から守るだけでなく、潤い溢れるツヤ肌ヘ」というコピーになっており、日焼け止め効果+美肌成分によって角質層のケアや保湿ができる商品であることがアピールされています。

ROPO(中国ブランド)の日焼け止めは、「防晒+控油+修脸 一瓶解决(日焼け止め+オイルコントロール+顔修復)」という効果効能を謳っています。

ANESSAなど日本のブランドも日焼け防止効果がいいとしてずっと大人気で、今年のCBEでも大きなスペースでブースを構えていましたが、中国人は肌のベタつきを嫌ったり、日焼け止めは肌への負担があると考える人も多く、+αのスキンケア機能がついているサンケア商品が、今後は有力な選択肢になってくることが予測されます。

その他

私がブースを回る中で他にもよく見かけたのは、「お茶」の香りや成分を取り入れた商品が多かったことです。シャンプーブランドやスキンケアブランド、フレグランスブランドなど、さまざまなカテゴリでお茶の商品を見かけました。
中国のお茶文化への誇りと、お茶に対する効果感のイメージなど、中国人のお茶への根強い文化背景を感じました。

六神という蚊除け商品の老舗ブランドは、若者をターゲットにしたリブランディングに力を入れていました。中国では「花露水」という一家に一本必ずある瓶詰めになった蚊除け液があります。

花露水
画像出展:六神旗艦店(タオバオ)

その見た目は緑色の瓶で、そのデザインはおばあちゃんの家にありそうな感じなのですが、リブランディング後は、持ち運びに便利なパッケージとサイズ感、スプレータイプになっているなど、使い勝手の改善はもちろん、従来の渋いデザインとは打って変わり、ポップな色使いやIPコラボなど、かなり若者に寄せた見た目になっていました。
また、従来の瓶の形状の商品もありましたが、ボトルのデザインを中国レトロの雰囲気にしてギフト需要を狙ったり、時代に合わせて変化を試みる老舗ブランドにも注目してみると面白いかもしれません。

まとめ

以上が私が今年のCBEに行って注目したポイントです。
人々の意識の変化やテクノロジーの進歩と共に、新しい概念や商品が次々と生まれるこの時代で、日系ブランドが生き残っていくためには、中国の社会の動きや文化背景などを深く理解し、ローカルブランドに負けないスピード感で消費者へのサプライズやリスペクトを伝えていくことが必要なのではないかと思います。
少しでもみなさんにとって有益な内容となっていれば幸いです。

もし中国でのブランディングでお困りのことがございましたら、お気軽にバルコニアまでご相談ください!