新中式スタイルが若者の間で人気
伝統的な東洋の要素と現代美学を融合させた新中式スタイルが、若者の間で広く注目を集め、受け入れられています。このスタイルはファッションや飲食、美容、インテリアなどさまざまな分野に浸透しており、ソーシャルネットワークでの人気も急上昇しています。たとえば、REDでは新中式に関連する投稿の閲覧数が累計58.9億回を超えています。これは、若い世代が伝統文化への関心が高まり、自信を持っていることを示しています。
新中式スタイルの流行に伴い、多くのブランドがこのスタイルを活用してマーケティングに取り組んでいます。それを通じてブランドの認知度を高め、消費者の関心を引こうとしています。ブランドは新中式の要素を取り入れることで、独自のブランドイメージを作り出し、若い消費者の個性や文化的共鳴に応えようとしています。このトレンドは、新中式スタイルは単なる美的センスの表れだけでなく、ブランドと消費者をつなぐ効果的なコミュニケーション手段でもあることを示しています。
今回の記事では、新中式マーケティングを取り入れたブランドの事例をいくつかご紹介したいと思います。
新中式茶飲料:霸王茶姬×国家レベル無形文化財「煙花火龍」
霸王茶姬は、東洋文化を伝承することを主旨とした茶飲料ブランドです。2024年初頭、広東省揭陽の国家レベル無形文化財である「煙花火龍※1」とコラボレーションし、一連の関連商品とイベントを発表しました。イベントでは、伝統的なお茶を使用した商品を通じて「煙花火龍」という古い技術への敬意を表しています。
※1 「煙花火龍」は広東省揭阳市の伝統的な舞踊で、国家級の無形文化遺産に指定されています。
今年の初め頃にはデザイナーと協力して、「煙花火龍」からインスピレーションを得て、このテーマに関連した春聯やドラゴン模様の皿、コースター、スマホスタンド等の周辺グッズを発売しました。無形文化財を現代人の生活に溶け込ませようとしているのです。
また、ブランドは《ELLE》雑誌、俳優・龔俊と協力して、無形文化財の魅力をより多くの人々に知ってもらうためのプロモーションを実施しました。お茶の香りを通じて、古い技術に新しい活力を吹き込むことができました。
新中式コスメ:薇诺娜×雲南の千年彝绣
薇诺娜(Winona)は、雲南からインスピレーションを得たコスメブランドであり、製品開発とブランド理念に雲南の自然要素及び文化的な特徴を取り入れています。主力製品であるスキンケアやメイクアップ化粧品は、雲南の植物資源、伝統的な技術と現代の化粧品技術を融合し、東洋美学を反映させたと同時に、今日の消費者のニーズに応えられる製品の開発に尽力しています。
2024年5月、薇诺娜と女優・劉詩詩がコラボし、彝绣をテーマにしたキャンペーンが微博の検索上位にランクインしました。刘诗诗と彝绣※2(下の左側の図の民族衣装)、馬面スカート※3(下の右側の図のスカート)の両方がホットな話題になりました。520ネットバレンタインデーには、1700年の歴史を持つ雲南彝绣に焦点を当て、雲南の楚雄で「個性的な彝绣」というタイトルのプロモーション動画の撮影を行いました。そして、愛を象徴する無形文化財技術を掘り起こし、新たな発見につながるように、「彝绣無形文化財ギフトボックス」を発売しました。
※2 イ族刺繍(彝绣)は、四川省凉山イ族自治州の伝統的な美術で、国家級の無形文化遺産の一つです。
※3 馬面スカート(マーミエンチュン)は、中国古代の女性の主要なスカートの一つで、明清時代の女性の最も典型的な服装です。
このイベントを通して、感情を癒し、勇敢に愛を表現し、愛がもたらしてくれる自由を楽しむようにと人々を励ましています。そして、ブランドの社会的責任感を高めたと同時に、消費者のブランド文化と価値への認識を深めることができました。
新中式百貨店:POPMART×無形文化財彫刻アート
2024年4月、POPMART(泡泡玛特)は無形文化財の承継者である黄旺旺氏とコラボし、MEGA SPACE MOLLY 400%「藏金無痕・木」を製作しました。このプロジェクトでは、潮玩(Z世代たちが作りあげた大人たちのためのおもちゃ)の分野から「新中式」美学を演出しようとしています。
彫刻一家の5代目の彫刻家である黄旺旺氏は、百年以上受け継がれてきた精巧な彫刻の技を身につけただけではく、芸術に対する独自の見解を持っており、伝統芸術と現代美学を融合させた格別なアートスタイルを創り出しています。
このMEGA SPACE MOLLYは木材で作られており、古法錯金工芸(主に木製の器物に針金をはめ込んで模様や文字を表す中国の特殊工芸の一つ)技巧を施した金属模様は、トーテムと同様に深い意味を持っています。「夔龍」要素(商代の甲冑戦士の守護トーテム)や「商代獣文」鎧(威厳と勇気を象徴する)ともつながりがあるとされています。
最後に
「新中式」スタイルの人気は高まりつつあり、より多くのブランドが参入しています。文化的要素と理念の深い融合が、「新中式」マーケティングを実施する上での鍵となっており、ブランドにとっても効果的なマーケティングの方向性を示しています。しかし、同質化した簡単なIPコラボでは消費者に飽きられてしまう可能性さえあります。ブランドが本気でマーケティング効果を最大化するためには、伝統を超えた斬新的でユニークなアイデアを磨き上げ、若い消費者とのつながりを構築することが大切です。