2024.12.16

香港で野球というマイナースポーツをやっていた話

こんにちは!balconiaの土居です。僕は生まれは日本ですが、生まれてすぐに香港に引っ越したため、中学を卒業するまでの15年間を香港で過ごしました。香港と言えば高層ビルが立ち並ぶアジアのハブ都市ですが、実は「野球」とはほぼ無縁の場所なんです。

それでも僕は子供の頃、香港で野球を始めました。この記事では、僕の野球体験を通して、香港の野球事情をご紹介します。

きっかけは野球漫画

もちろん香港なので日本語で楽しめる娯楽が少なく、子供の頃はたまに日系の百貨店で買ってもらえるコロコロコミックが何よりの楽しみでした。連載の中で一番のお気に入りは「ドラベース」。この漫画を読んで、「野球ってすごく面白そうだな」と思ったのがきっかけです。

それから一時帰国したときに別の野球漫画「MAJOR」を買ってもらい、さらに深く野球の魅力に引き込まれました。試合のリアルさやプレイヤーたちの情熱が描かれていて、より憧れが強まったのを覚えています。

そして、実家が関西だったこともあり、帰国した際にはテレビで阪神タイガースの試合を見る機会がありました。そこで初めて本物のプロ野球を目にして、「かっこいい!自分もやってみたい!」と思うようになりました。

香港では野球をやっている人はほとんどいませんが、僕は日本人学校に通っていたため、野球好きの友人から香港でも少年野球チームがいくつかあるという情報を得ることができました。

親に頼んで見学に連れて行ってもらい、実際に練習や試合を見てすぐに「ここでやりたい!」と思いました。このようにして、僕の野球人生は香港でスタートしました。

野球をする環境は整っておらず、プレーするにも大変

実際に香港で野球を始めてみてどうだったかといいますと、正直、野球がやりやすい環境とは言い難かったです。

まず、香港には野球場がほとんどありません。正式な野球場は1つしかなく、それも国際大会の開催があるときに特設のフェンスを設置しないと使えない状況でした。練習はほとんどがサッカー場で行われ、試合も正式な野球場ではなく硬い土や小石がむき出しの簡素なグラウンドでのプレーでした。日本の部活のように毎日グラウンドが使えるわけではなく、活動は土日のみでした。そのため、本気で上手くなりたい人にとっては物足りない練習環境かもしれません。

また、野球用品を手に入れるのも一苦労です。香港ではスポーツショップで野球グローブやバットなんて見たことがありません。なのでチームで一括で海外の通販サイトで購入したり、日本や台湾に旅行に行った友人に買って帰ってもらったりしていました。一時帰国した際、スポーツ用品店で山積みの野球道具を見て大興奮したのを今でも覚えています。「夢の国に来た!」って感じで、何時間でもいられるくらい嬉しかったです(笑)。

ここまで環境が整ってないのは、ひとえに野球がマイナースポーツだからです。野球の存在自体は知っている人が多いですが、香港で野球をやっていると言うと、「香港でもやっている人がいるんだ」「知ってる、のび太くんがやってるやつでしょ」「KAWAI日本肝油丸のやつね」などと珍しがられます。

香港でも「カワイ肝油ドロップ」は「KAWAI日本肝油丸」としてよく知られています。
この製品のCMに登場する少年が、「野球」と聞いて連想する数少ないものの1つとなっているようで
出典:香港屈臣氏オフィシャルサイト https://www.watsons.com.hk/zh-hk/p/BP_126329

なぜ香港では野球はマイナーなのか

その理由として主に歴史と土地事情の2つがあると思います。

香港の歴史

香港は1841~1941年と1945~1997年に渡って計150年以上もの間、イギリスの統治下に置かれていました。そのためスポーツもイギリスの影響を受けたと考えられます。

野球はアメリカ発祥のスポーツでありイギリスでは人気がないので、香港でも関心が高まることが少なかったことが推察できます。事実、香港にはプロ野球リーグはなく、学生を中心にごく一部の人が週末に集まって活動している程度です。そのためメディアなどでの露出も極端に少なく、例えばテレビでの試合の放送はおろか、スポーツニュースで取り上げられることすらありません。そもそも香港で野球の魅力に気づくチャンス自体が、極端に少ないのが現状です。

逆にイギリス発祥のサッカーは、香港でも人気です。香港ではプロサッカーリーグが1908年に発足されており、これはアジア最古のプロリーグだそうです(日本のJリーグ発足が1993年なので、その歴史には驚きですね)。今でも地元・海外プロリーグの試合がテレビで放送されてますし、「キャプテン翼」や「ブルーロック」といったサッカーアニメも放送されています。また、海外リーグの試合に対してはスポーツベッティングも認められており、幅広い層が各々の方法でサッカーを楽しむことができます。

香港の土地事情

香港はとにかく狭くて人が多いです。約1100㎢と東京都の半分くらいの面積しかありませんが、人口密度は東京都より高いです。地価も高く面積が限られているため、日本とは違い、多くの学校は専用の広いグラウンドを持っていないようです。日本ほど部活動が盛んではないことも納得ですよね。

特に野球は、専用の大きな扇形のグラウンドが必要となります。しかし前述の通り、香港には野球場がほとんどありません。このような環境では学校の部活動で野球を取り入れることは難しく、香港で野球を体験する機会は非常に限られてしまいます。

香港で野球をしてよかったこと

確かに香港では野球は普及していませんし、環境も充実していません。それでも僕は胸を張って「香港で野球をやって良かった!」といえます。それは、日本で野球をやっていたら絶対に経験できなかったようなことをたくさん経験できたからです。

中でも最も印象に残っていることは、香港代表として様々な国際大会に出場できたことです。これを言うと「香港代表?すごい!」と言ってもらえることも多いですが、これは僕がすごく上手いというよりかは、香港で野球がマイナーなため、ライバルが少ないからというのが大きいです。そのため日本のように野球が人気で競技レベルが高い国と比べると、代表入りする難易度が非常に低いと言えます。

大会にもよりますが、国籍が中国(香港)でなくとも香港代表として出場できる場合もあり、香港代表チームには日本人やアメリカ人など外国出身選手も多いです。なので香港で野球を頑張れば、香港代表として国際大会に出ることは十分現実的なことなのです。

国際大会では、香港と同じように野球がマイナーな国も出場していますし、日本・韓国・台湾のように野球強豪国と試合をすることもあります。特にプロ野球選手の卵が所属しているような強豪国との試合は、ボコボコにされたとしても対戦できただけで思い出に残りますし、逆に善戦すると、「なんとしても食らいつくんだ!」とチームとしての自信と士気が上がります。今でもその頃を思い出すと、多様なバックグラウンドをもつチームメイトとの文化差を乗り越え、共通の目標に向かって情熱をもって野球に取り組めたことは、貴重な経験だったなと改めて感じます。

いかがでしたでしょうか?この記事を通じて、少しでも香港での野球事情や僕の経験に興味を持ってもらえたら嬉しいです!

野球について書いていると、ひさしぶりに野球がしたくなってきました。ただ実は日本に来てからは野球をやったことないので、野球大国のみなさんとは実力差があるのではと少しビビっております・・・。緩めの草野球から始めたいので、ぜひ誘ってください!

最後まで読んでいただきありがとうございました!