2025.06.18

オフィスワーカー達のデスクに隠された「心の解毒剤」

2025年の職場では、「情緒安定グッズ」が若者たちのオフィスデスクの置物として人気になりました。これらの小物は単なる飾りではなく、職場で働く人々にとって癒やしや情緒安定、さらには金運アップの御守として役割を担っています。天猫のデータによれば、2025年春節休み明け、同カテゴリーの商品の売上が前年比117%増、月間検索数も前月比5倍に急増しました。ダジャレやネットミームが”情緒経済”と結びついて生まれたこの消費ブームは、現代の働き手たちがストレスに対処し、心のバランスを求める新たなニーズを浮き彫りにしています。

「新浪」から転載:2025年春節休み明け、オフィスデスク用の”情緒安定グッズ”の売上が、
前年比117%増、月間検索数が前月比5倍に増加しました。

「オフィスデスク上の情緒経済」の広がり

最近の職場では、デスクは単なる物理的なスペースではなく、感情がぶつかり合う「情緒の戦場」となっています。ハードな業務や複雑な人間関係の中で、若者たちは目に見える形で感情を発散できる手段を強く求めています。そんな中、2024年の初めに「オフィスデスク情緒安定グッズ」というコンセプトがじわじわと広まり、ダジャレを活かしたユニークな商品が一気に人気を集めました。これらのグッズは、「感情を表現したいけれど、周囲の目も気になる」という職場で働く人の心理にぴったりハマり、SNSでは「#デスク写真晒し」が人気のハッシュタグとして拡散されました。心理カウンセラー陳佳氏は「これは自己コントロールできるセルフヒーリングの一種です」と言います。つまり、職場のデスクを整えることで、どうにもならない職場のストレスを自分でコントロールできるように変えようとしているのです。

ユーモア・可愛らしさ・運動でストレス発散

1、「放青松」シリーズ置物

2024年3月「放青松(=“放轻松”=”リラックス”の語呂合わせ)」をコンセプトにしたグッズが発売されました。盆栽や時計、ナイトライトなど実用性を兼ね備えたアイテムは、職場のストレス解消グッズとして大ヒットしました。例えば「放青松リラックスナイトライト」はただの照明ではなく、心を落ち着かせる暗示効果もあり、ストレスや不安、焦りを和らげ、心を穏やかに保つ手助けをしてくれます。

左:放青松(リラック)置物;中:放青松(リラックス)ナイトライト;右:放青松(リラックス)盆栽
画像出典:タオバオ

2、ディスプレイに飾る癒やしのマスコット

ひとつ10元以下の子ブタやキリンの小さい置物たちは、特に実用性があるわけでもなく、「ただかわいい」という理由だけで人気を集め、すでに2万個以上売れています。

販売数量2万件超えのディスプレイ用小物オブジェ。
画像出典:タオバオ
ユーザーからは「ストレス解消の神グッズ」と好評です。
画像出典:タオバオ

3、無意識にブラブラ「足元ブランコ」

商品説明では「血流促進、静脈瘤の予防、足関節の運動、慢性痛の緩和、ダイエット効果」と、万能なオフィスグッズとして紹介されています。大袈裟なように見えますが、ユーザーレビューを見ると、「癒される」「リラックスできた」「足を組む回数が減った」など、案外ポジティブな声が多く寄せられました。前述の2つのグッズと比べると設置にやや手間がかかるため、販売数はさほど多くないのですが、すでに600人以上が買い物カートに入れている注目商品となっています。

デスク下に置く足元ブランコ。
画像出典:タオバオ

タオバオで「オフィスデスク情緒安定グッズ」を検索すると、このような小物アイテムは他にも数多く見つかりました。価格も手頃で、安い物で数元(約200円)、高くても30元(約700円)ほどです。一見するとただの置物なのですが、そこには職場で働く人々が情緒を安定させたい、幸運を呼び込みたいという願いが込められており、デスクの上に広がる独特な光景となっています。

画像出典:タオバオ

なぜオフィスデスクに「情緒安定グッズ」が必要なのか?

1、情緒経済が生んだ必然のトレンド

マッキンゼーが発表した「2024年中国消費トレンド」によれば、64%の消費者は「心の充足」を重視しており、特に若年層が高い割合を占めています。モノ消費の需要が飽和する中、情緒的価値が次の購買の原動力になっています。

2、ソーシャルカレンシーの見える化

SNS上でデスクの小物をシェアすることはある種の自己表現となっています。特にダジャレや流行ネタを取り入れたグッズの場合、持ち主のセンスや価値観を伝える手段となり、共感を呼ぶきっかけにもなっています。たとえば映画『哪吒2』に登場するキャラクター「敖丙(アオビン)」が職場での“あるある”な性格や行動を象徴する存在としてネットで話題になり、「正式に職場のアオビンと認定された」というミームが広まりました。この流行を受けて関連グッズのフィギュアが大ヒットし、単なる商品を超えて共感や連帯感を生み出しています。

REDでは多くの人がデスク写真のシェアを通じて、自分の思いを表明したり、共感を得ようとしています。 
画像出典:RED

3、販売者による情緒的のニーズへの的確なアプローチ

単なる置物から「情緒」と「機能」を融合させた商品へと進化し、販売者の戦略も高度化しています。たとえば、「放青松時計」は時間管理とストレス軽減を両立させたアイテムで、検索数が40倍に跳ね上がりました。さらにスマートモデルには、ワイヤレス充電やBluetoothスピーカーといった機能が加わり、利用シーンが一気に広がっています。

まとめ:情緒価値が示す現代の時代背景

デスクの情緒安定グッズが広まった背景には、現代の若者たちが職場のストレスに対して柔軟かつユーモアをもって立ち向かう姿勢があるのではないでしょうか。彼らはユーモアで厳しい現実を和らげ、創意工夫によって新たな秩序を作り出し、限られたデスクの空間に「心の避難所」を築いているのです。販売者はこうした消費者の心の動きを理解し、創造力を発揮することで、新たなビジネスチャンスをつかむことができるでしょう。