2025.08.14

独自の発展を遂げる「新中式」

みなさんこんにちは。今回は私が最近素敵だなぁと感じている「新中式」についてご紹介したいと思います。

「新中式」という概念を体験し、興味が湧いたのは、今年の5月頃に中国でウェディングフォトを撮影したことがきっかけでした。私が選んだ撮影プランは4回の衣装チェンジができたのですが、そのドレスの選択肢の中に「新中式」のジャンルがありました。

チャイナドレスの要素を含みつつ、少し西洋のドレスの要素も感じさせるようなデザインで、従来の漢服とは違った美しさを感じました。衣装さんのおすすめもあり、私も新中式のドレスを1着着用しましたが、華やかで雰囲気のある素敵な写真になりました。

その他にも、最近友人と行った「元古雲境」というレストランがあるのですが、店舗内装や料理の見た目など、洗練されたモダンな中国要素が詰まっていて、とても心地よく、つい写真を撮りたくなる空間と料理でした。

新中式ドレスに関する投稿 RED投稿より
元古雲境に関する投稿 RED投稿より

「新中式」とは?

「新中式」とは、中国の伝統的で古典的な文化と現代的なデザイン手法を融合させたスタイルです。書香門第(学問や文化の香り漂う家柄)、アンティーク調の家具、著名人の書画、上品な色彩といった伝統的な中式文化のクラシックな要素を残しつつ、現代のデザイン理念を取り入れているのが特徴で、中国らしい趣を残しながらも、現在の生活スタイルや美的センスに合う表現方法として、独自に発展を遂げています。

この「新中式」という概念は、中国の著名な建築学者である梁思成(りょうしせい)が提案したもので、当初は主に建築分野で用いられました。

その後、国風(中国伝統文化ブーム)への注目が高まるとともに、新中式スタイルは建築分野だけではなく、装飾品やファッションなどにも応用されるようになりました。

北京にあるホテル「北京前门文华东方酒店」RED投稿より
左:REDでの「親中式ファッション」検索結果
右:タオバオでの「新中式レディースファッション」検索結果

「国潮」との違いは?

「国潮(グオチャオ)」も2018年頃から若者を中心に広がった概念で、愛国意識から生まれる中国ブランドへの支持が背景にあります。中国の伝統的な模様や文化的要素を、鮮やかな色彩や現代的なデザインで表現するトレンドで、ファッション、コスメ、食品、雑貨など幅広い分野に広がっています。

左:国潮xコスメ RED投稿より
右:国潮xファッション RED投稿より
国潮xファッション RED投稿より

両者とも「中国の伝統文化 × 現代」という点では似ていますが、成り立ちや適用分野、雰囲気はかなり異なります。

1. 概念・背景の違い

2. デザイン・表現方法の違い

新中式はどのように発達してきたのか?

新中式は、「欧米風への憧れ」→「伝統回帰の兆し」→「伝統と現代の融合」→「文化自信による大衆化」→「多分野への拡張」という流れで発展してきました。

1. 経済成長による生活水準の向上
○ 2000年代以降、中国の都市部で中級階層が急増し、住宅やインテリアに「高級感」や「文化的価値」を求める層が拡大。
○ 単なる西洋風ではなく、自国の伝統を取り入れたデザインへの関心が高まった。

2.都市化と住宅デザインの多様化
○ 都市住宅が増える中で、限られた空間でも中国らしさを表現する「ミニマル×伝統」の新中式が受け入れられた。

3.グローバル化と文化への自信
○ 世界の舞台で中国文化を再評価する機運が高まり、「自国の美意識」を現代的に表現する動きが活発化。

4.観光·文化産業の発展
○ 高級ホテル、茶館、レストランなど観光業で新中式が採用され、それが一般住宅や商業空間にも波及。

また、芸能人が新中式の衣装をきている姿を公開したり、ファッション系のインフルエンサーの推奨などで、このスタイルは一気に若者の間で広まりました。

人気スター肖战が春晚で着た新中式の衣装 RED投稿より

まとめ

中国のクリエイティブはユニークに発展を遂げていると思います。特に中国人の愛国心や伝統文化を尊重する姿勢は、今後も弱まることなく様々な分野に融合されていき、独自の発展を続けていくのではないかと思います。中国独自の美しさをに対する自信はとても強い力となり、グローバルでもその存在感を増していくのではないでしょうか。

中国に向けたクリエイティブを考える際の一つのアイデアとして、新中式にも注目してみてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。