2019.07.25

エンドウ一粒とホモ・デウス

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アンデルセン童話「エンドウ豆の上に寝たお姫様」に、本物のお姫様を判断する三つの条件があります。

1.みんなに礼儀正しい
2.貧乏人とお金持ちのどちらも愛している
3.皮膚が非常に敏感

どの程度を非常に敏感と判断するのでしょう?例えば、二十枚のマットレスの下にエンドウを一粒置き、マットレスの上に転がってエンドウの存在を感じられるでしょうか。本物のお姫様であればエンドウの存在を感じることができます。どうしてお姫様はこんなに敏感なのでしょうか?条件一と条件二は「良い人」であれば可能です。条件三だけ、小さい頃から豊かな生活を過ごし、敏感な感覚が養われている人のみ可能なことです。

このストリーには、「敏感度」が人間のレベルを区別するというメッセージがあります。皮膚の敏感さだけでなく、様々な感覚の敏感さも含まれています。例えば、細かい事まで観察できる人もいればそこまで細かく観察できない人もいます。後者は敏感度が足りていません。人とコミュニケーションを取る際、もし敏感度が足りないと失礼な発言をしてしまったり、相手を不愉快にさせてしまう可能性があります。さらに相手の暗示も理解でず、高度なジョークを言ってもその人には伝わらないのです。もしその人が良い人ですごい専門技術を身につけていたとしても、本質的な部分は鈍感なのです。

敏感度は生れつきのものでしょうか?

敏感度は学んで身につけられます。
昔、春晚(中国のお正月番組)を見て、舞台は豪華にセットされているのにダサい気がしました。ただ、何がダサいかは説明出来ません。その後、デザイナーの友達から「彩度」という概念を学びました。彩度が高いほど高級感は弱くなるようです。春晚の舞台がダサかった原因は大量に彩度の高い赤と緑を配色していたからです。この概念を知ってから、課題を新しい角度から見ることができるようになりました。コンセプトさえ明確にしたら、敏感度は二倍、三倍とアップしていくのです。

仕事での敏感度は新人とベテランに分けられる

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時々こんなコピーを目にしませんか?―― “品質継承、栄耀人生”。パッと見た時はすごいな〜と思うのですが、ちゃんと考えるとどんな品質?なんで私の人生を栄耀するの?私と関係ないよ…と気づきます。こういったコピーは「自己満足のコピー」と言われています。つまり、自分の世界に入り込み楽しんでいるだけで、他人には全く理解できず、伝わらないのです。もしこの概念を知っていたら、今後コピーを書く際にこういった「自己満足」は避けられます。

一度問題を発見し困った結果に直面したら、一つのコンセプトで物事をまとめてみるといいと思います。そうすると、また同じ状況になった時、非常に敏感に物事を考えられるようになります。

敏感度には副作用もある

敏感度が高すぎても問題が出てきます。あまりに敏感すぎて、相手が気軽に発した一言が何か暗示していると勘違いし、ただ冗談を言っただけなのに怒ってしまう人もいます。我々は敏感度を高めると同時に鈍感さも必要なのです。

見たり感じたりしたことを見て見ぬふりするのは受動的な無視、意識的にその方向を見ないことは主動的な無視です。このような無視のレベルを獲得したい場合は、何が重要で何が不要かを見極められるようになることが必要です。私たちは重要なことに対して敏感になり、重要ではないことに鈍感にになるべきなのです。

では重要なこととそうでないとことは一体何なのでしょうか?私たちをあれこれ考えさせることは重要ではなく、物事や思想を考えることこそが重要なのです。

フランクリン・ルーズベルトの妻は「偉大な人たちは、アイディアについて話し、凡庸な人たちは、出来事について話し、狭量な人たちは、人々について話す。」と名言した。

アイデアがあれば、新しいものを作れます。優秀な人が新しい物事を生み出し、積極性と主動性を持ってアイデアを出していきます。凡庸な人は受動的で、ほとんどが傍観者として存在し、起こった物事について話すだけです。もう一種の人は、前の2種類の人たちを喜ばせることだけを考えています。

敏感の最高レベル

最高レベルの敏感度とは「物事の苗を見たら、本質とトレンドが分かる」ことです。

ネット画像:丙吉问牛

”西漢の丙吉という大臣が地方へ行き民間を視察する時に、街でケンカをする人を見たが、見て見ぬふりをした。一方、病気で弱っている牛を見つけたら、その牛の状況を確認しに行った。部下は大臣に「なぜケンカを無視して牛の病気なんかに関心を持ったのですか?」と聞いた。大臣は「ケンカは地方管理者の仕事で、私が管理しなくてもよい些細なことだ。しかし牛の病気は、今年は異常気象の前兆かもしれないから、大事なことだ。」と答えた。”という有名な物語があります。

誰もが「物事の苗を見たら、本質とトレンドが分かる」レベルに到達できるわけではありませんが、より高いレベルを目指して努力する事はとても大切です。
今の時代、敏感度はとても重要なことです。

イスラエル歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの著書「ホモ・デウス」にはこういう方程式を提出した:知識=体験×敏感度。

ハラリは宗教信仰のない現代で、人生の意義を探すためには体験と敏感度が必要だと言いました。ここでの敏感度は、「過去の経験から学び、その経験から自分変えていく」ということです。常に経験から学び、世界を深く理解できれば、よりすばらしい人になれるのです。

----Memo.K