2018.12.19

日中でのコスメの色や流行りの比較

こんにちは、初めまして。前慧(qian hui / チィエンホイ)と申します。
日本で生まれずっと日本で育ち、Web制作や米系ブランドコンサルティングの会社を経て、現在はbalconia上海に在籍し、クリエイティブディレクターをしています。

中国語や中国のことは上海に来てから学び始めて2年、クリエイティブやPR、広告表現も文化背景の違いによって目新しく映ることがまだまだ多く、その経験を記事にしていく予定です。

前置きが長くなりましたが、今回は化粧品の色の名前について3つ事例を紹介します。
①投票でローカライズの色名を決める巻き込み型キャンペーンを実施した「NARS」
②スター商品でかつ恋愛関連色でも、名前や色に文化差が出ている「YSL」
③日本では絶対に言われない名前「生理色」を非公式でECや消費者が使用・拡散していく

①投票でローカライズの色を決める巻き込み型キャンペーンを実施した「NARS」

アメリカ発化粧品ブランドで2000年から資生堂資本のNARSが2017年に中国市場に進出した日本でも人気商品であるORGASM(オーガズム)は同じ意味の”高潮”でしたが、「呼ぶのが恥ずかしい?そしたらあなたのアイディアを教えて!」と同社の公式SNS微博(weibo)でユーザーから名前を募りました。

この投稿は約9000の転送、約15000のコメント、約4000のいいね、と大変反響を呼びました。
中国では必ず中国語名をつける習慣でして、例えばコカ・コーラは 「可口可乐(kekou kele)」、スターバックスは「星巴克(xingbake)」となっています。
そういった中国名を付けるときには、字の意味や音、同音異義字や有名なフレーズなどを考慮して慎重に考慮を重ねるのですが、文化背景や言語レベルが相当高くないと難しく、ユーザーからはもっとよい案があるでしょ!と文句が出がちです。
そこをNARSはうまく利用し、スタートダッシュに話題作りしたよい例だと思います。

ECの大手淘宝(taobao)で検索したところ、残念ながら2018年現在、一つもヒットしないくらい使われてないみたいです。。。

②スター商品でかつ恋愛関連色でも、名前や色に文化差が出ている「YSL」

“斩男色”というインターネット上でよく使われる色を表す言葉があります。この色は直訳すると「男を落とす色」です。主には赤やピンク系の色を指し、商品で言うとYSLの12号の色を指していることが多いです。
(中国ではイブサンローランのことをYSLと表記することが多い)

中国のモバイル特化型越境ECアプリ小红书(xiaohongshu)での検索結果。

日本でもかなり流行った同じ商品があります。「プロポーズさせるミルキーコーラル」の異名を持つ婚活リップとして流行った15番でして、番号違いの商品です。
これを持っていると結婚できるといったお守り的なアイテムで、色はかわいらしくフレッシュな色で少女性や無垢さを連想させ、全体的に受動的なものでした。

対して中国では「男を落とす」として能動的なネーミング、また色も「小悪魔アプリコットレッド」でわりと赤色に近い、でもかわいらしさを少し残した色になっています。

イブサンローランの公式サイトから。https://www.yslb.jp/static/images/cms_parts/product/Y20108/Y20108_product_introduction_170331.jpg

③日本では絶対に言われない名前「生理色」を非公式でECや消費者が使用・拡散していく

ここ最近ワインレッドやダークレッドがメイクでは流行りですが、中国の一部では「姨妈色」と呼んでいます。 

直訳すると「おばさん色」なのだけれど、由来は「大姨妈来了」(直訳:おばさんがきた、意味:生理が来た)です。なので姨妈色は生理の色、、、という意味になります。

もちろん公式でどこかが言い出したわけではなく、ECやKOL、また一般ユーザーの間で広まり、かなりつかわれる単語になったようです。

中国のモバイル特化型越境ECアプリ小红书(xiaohongshu)での検索結果。斩男色よりも2万件強記事数が多いです。 

女性なら言いえて妙と思う色かもしれませんが、日本ではこの色のネーミングは絶対に流行らないと思います。おそらくダークチェリーなどの名称になることでしょう。 
この流行りからは中国で女性を取り巻く環境や、生理に対するとらえ方、また流行の作られ方や広がり方など異なる点が多々ありすぎて、学ぶことがたくさんあるなぁと頭を殴られた気持ちになりました。この異なる部分については別の機会に掘り下げようと思います。 

ざっくり3つ紹介しましたが、中国特に上海は3か月ごとに街並みが変わるような都市なので、すぐに古い話になってしまうかもしれません。 
そういったところも含めて、私が思う日本と中国の違いを感じていただけたら幸いです。 

前慧