2021.08.19

バーチャルヒューマン「AYAYI」が中国で人気上昇中

 AYAYIがSNSに初回投稿した証明写真が9.6万もの「いいね」を獲得しました。アメリカで大ヒットした《ラブ・デス&ロボット》の主人公ロボットのような可愛らしいアニメ顔をしているAYAYIは、デビューしてたった1ヶ月で、ライセンス契約に向けて国際的なブランドとの商談が始められたそうです。

 一方で、彼女が「本物の人間かどうか」というトピックについて熱い議論が交わされており、中には、「その顔どこで整形したの?連絡先を教えて欲しい」など、極端なコメントを寄せたネットユーザーもいたようです。

AYAYI  小紅書(RED)
出典:https://zhuanlan.zhihu.com/p/387511331

 AYAYIはUnreal EngineのMarahumanがプロデュースしたバーチャルヒューマンのキャラクターです。つまり、AYAYIの顔もボディーもロールプレイングゲームに登場するキャラクターと同じく、クリエイターによって作られたものなのです。私たちが普段SNSでよく目にする「デジタルヒューマン」のほとんどは、人間の動作とバーチャルヒューマンのイメージを合成して作られています。

デジタルツールエンジン MetaHuman Creator
出典:https://baijiahao.baidu.com/s?id=1692315064224108440

 しかし、バーチャルヒューマンとリアルでのブランドとのコラボは決して珍しいことではありません。世界的に知られているバーチャルヒューマン「初音ミク」は、2016年にGIVENCHY(ジバンシー)の高級ドレスを身につけて登場しました。人気ゲーム《ファイナルファンタジー》のヒロイン「ライトニング(Lightning)も」ルイ・ヴィトン(LOUIS VUTTON)のファッションモデルとして、2016年春夏広告のキャンペーンに起用されました。その他、アメリカのリル·ミケーラ(Lil Miquela)と日本の immaも注目を集める”デジタルヒューマン”です。

初音ミク、「Givenchy」ドレスアップ
出典:https://menclub.hk/style/6555
ライトニング(Lightning)がルイ・ヴィトン(LOUIS VUTTON)の2016年春夏広告のキャンペーンに登場
出典:https://www.themarysue.com/pixelthreads-final-fantasy-louis-vuitton/

 リル・ミケーラ(Lil Miquela)は2016年にインスタグラム(Instagram)の個人アカウントを開設しました。19歳のアーティストとしてキャラクター設定されたハーフの少女は小麦色の肌色をしており、ブラウンのダブルお団子ヘアに可愛らしいそばかす、どれも識別性の高い特徴を持っています。2018年、彼女はミラノコレクションのショーに招待され、PRADAとコラボし、インスタグラムでライブキャンペーンを行いました。同年には、ファッションブランドのカルバン・クライン(Calvin Klein)の広告で人気モデルのベラ・ハディッド(Bella)との共演を果たしています。

PRADAに招待されたLil MiquelaがINSでライブキャンペーン
出典:https://thecurrentdaily.com/2018/02/27/prada-enlists-computer-generated-influencer-ss18-show/
Lil MiquelaとモデルBellaがCalvine Kleinのプロモーションビデオに出演
出典:https://www.thecut.com/2019/05/bella-hadid-lil-miquela-calvin-klein-apology.html

 そして、日本で誕生したバーチャルモデルimma(イマ)は、「原宿系」の顔をしており、ピンク色のショートボブヘア、色白な肌、キレイな整った顔のパーツとその超個性的なファッションコーディネートでSNSで多くのフォロワーを獲得しています。2019年、immaは女優の綾瀬はるか、中国出身の歌手窦靖童(Leah Dou)、ファッションモデルのべハティ(Behati)とコラボし、SK-IIの人気化粧水フェイシャルトリートメント・エッセンスのキャンペーン動画に出演しました。今年の1月にはAmazon The Dropとコラボしてキャンペーンイベント「Tokyo Chaos」のムービーモデルも務めています。

immaと綾瀬はるかがSK-IIの化粧水キャンペーンムービーに出演
出典:https://www.sohu.com/a/347623062_100217779
immaがAmazon The Dropとコラボ、キャンペーンムービーに出演
出典:https://www.moguravr.com/virtual-human-imma-3/

 中国で誕生した「デジタルヒューマン」として、AYAYIの顔はリアルな人間とほとんど変わらず、さらには、キメ細かい皮膚の線まで綺麗に生成されています。異なる環境や光の影響による皮膚と毛髪などの見え方の違いも、見事に再現されています。このように、究極なまでにリアリティを追求し、再現できたからこそ、「ハイテクフェイス」に馴染んでいる中国のネットユーザーにさえも「AYAYIは本物の人間なの?AIなの?」とびっくりされているのではないかと思います。

AYAYI  小紅書(RED)ノート
出典:https://zhuanlan.zhihu.com/p/387511331

 IP(知的財産)が氾濫する時代において、仮想IPがブランドに更に歓迎されてきていると言えます。2次元市場は拡大しつつあり、バーチャルキャラクターもブランドIPとして人気を集めています。Z世代が消費の主役になるにつれ、彼らの好みに合わせた2次元文化は新しいスタイルのブランドマーケティングの手段になっていくでしょう。

 バーチャルキャラクターはパーフェクトなキャラクター設計が可能で、デザイン性にも優れています。リアルなイメージモデルと違って、ブランド側としてもスキャンダル等でブランドにマイナスイメージや悪影響を及ぼすというようなことを心配しなくてよいでしょう。このような観点から見ると、バーチャルキャラクターは、「パーフェクトな美しさを追求する」現在の消費者の美的意識に合う以外にも、様々なメリットがありそうです。

 これはつまり、ブランドがKOLを起用してプロモーションをする時代がついに終焉を迎えようとしていると言えるのでしょうか・・・?今後の展開をじっくり見守りたいですね。