2019.10.25

割・得・八・合(中国語の発音だとゴールドバッハ)の「数字」予想(上編)

はじめに

ゴールドバッハの予想は数学の超難題で、この記事の本文で述べたい「数字」の問題と関連しています。タイトルの「割得八合(ゴールドバッハ)」ですが、日本語でこの四文字はそれぞれ違う意味を持っていて、それに関する数字の予想も違います。「予想」とは心理的なものです。今回は数字と人の心理の関係について述べたいと思いますので、引き続き本文をご覧ください。


もしショッピングモールの価格が「割(割引)」されていたら、「この商品は販売価格より安い」ということになります。この表現方法はシンプルで分かりやすく、消費者は割引後の値段を自然と計算します。同時に心理にも作用し、「販売価格」と「割引価格」の差が大きければ大きいほど購買欲求が高まります。この時、消費者にとってこの商品が必要かどうか、この商品の割引価格が他の商品より安いかどうかはどうでもいいのです。心理学者はこの概念を「deal/promotion proneness」と呼んでいます。この定義は「プロモーションに対する心理的な反応の傾向性」で、「deal/promotion proneness」が高い人は「割引」を目にすると必ず食いつき、必要ないものまで衝動買いしてしまうのです。

もしある一定時間の間に継続的にこういう消費者に「割引」を行ったらどうなるでしょうか。

定期的に5万人に「商品目録」を郵送する心理実験がありました。毎回参加者の中には、初めて参加する顧客(新規顧客)とすでに購入経験のある顧客(既存顧客)がいます。参加者に購入するかどうかを判断してもらい、最後に結果を統計します。この実験では全く同じ商品を3割引きと6割引きの値段で販売します。一定期間ごとに前回購入したいと答えた消費者に新しい商品の目録を郵送し、購入したいかを聞きます。するとおもしろい結果が出ました。新規顧客は「3割引き」の時より「6割引き」の商品を買うと答えた人が多かったのに対し、目録を何度か受け取ったり、購入すると答えた既存顧客はこの割引にそんなに興味を持たなくなりました。既存顧客のこの心理現象は「perceived price difference」と呼ばれています。人は商品価格と自分の参考価格を比較して、比較結果が同額もしくは安かった時に購入する傾向にあります。

つまり、以前6割引きに心を打たれた人は、「3割引き」の目録をまた受け取った時にはあまり心を打たれないのです。それに対して新規顧客にとってはまだ自分の参考価格の情報がないので「deal/promotion proneness」の影響を受けてすぐに消費欲求が生まれます。

上記で述べた「perceived price difference」以外に、消費者は「deal/promotion proneness」時の間の影響も受けます。もし消費者にある商品のプロモーションに対して期待があるのに結局プロモーションがない場合は消費者の購買する決定は少なくなります。プロモーションがある商品に出会った時、もし次のプロモーションまでの時間が長かったら、かえって目の前のプロモーションはより魅力を感じ、より簡単に購買を決定するのです。

 心理学上「Loss Aversion」と呼ばれています。同等の割引の条件で、人間は「収益あるいは利益」の感覚より「損失」の感覚のほうが強くなり、損失を回避して収益を得ようとする傾向にあります。

 予測の結果は「割」が含んでいる「deal/promotion proneness」「perceived price difference」「deal expectation」を活用して、新規と既存の顧客をどちらでも取り巻けます。

「得」は日本のショッピングモールの入り口でよく見かけます。「得」の表示は通常キャンペーンでお得な価格を直接商品の前に書かれています。間接的に言うと「現在の価格はこれだよ」と顧客が得られるメリットをそのまま表しています。

「得」は価格の数字上で色んな遊び方があります。例えば、価格の端数を奇数で設定する「odd-ever pricing」の方法があります。ある大型スーパーの価格分析で面白い事実が浮かび上がりました。店内の約80%の商品定価の端数が全て9で終わります(例:5.99ドル)。商品価格を奇数にすることを「女性の消費心理」と言うことがあります。整数ではない「8.9ドル」といった小数点で終わる価格を見ると、女性は価格に心を打たれやすくなります。

では、この奇妙な「odd-ever pricing」の方法について1891年のアメリカドルが標準化された時までさかのぼってみましょう。当時イギリスから輸入した商品は価格変更を行わなければなりませんでした。イギリスポンドをアメリカドルに変えた後、価格は全て奇数でした。当時の人々の印象の中では、イギリスのものは質が良かったので、奇数の価格の商品は「高品質」の証になっていました。

もう一つの面白い解説が、価格の端数を奇数で設定する方法が従業員の窃盗を防止する効果があったことです。現金がメインのスーパー小売りで奇数の価格によって、従業員は顧客にお釣りを渡さなければなりませんでした。これにより、お代を隠して販売勘定に記入しないことが難しくなりました。当時、メイシーズ百貨店が20世紀初期に99ドルの定価法を採用してから売上が伸び、世界中の小売業が真似をしてきました。

これが若い消費者あるいは購買決定を簡単にする状況(例えば安いものを買うとき)に対して特に役に立ちます。

もう一つの研究では、0.9や0.99が端数の価格に対して「降格効果」があると発見しました。つまり、価格が19.99ドルの商品は「20ドルしない」という見方になり、もしあと0.01ドル足したら「20ドル以上する」という見方になります。実は心理的には微妙で大事な比較です。

0.01ドルの価格差はもう一つ重要な問題を持っています。価格の最初の数字が違うことです。これまでの例の中で19.99ドルのものは「20ドルしない」の分類でしたが、価格の最初の数字、つまり一番左の数字が2から1に変わると、元々「let-digit effect」(大きい位の効果)が定価原則になるのは人は先に左側から見かけて注目されやすいのです。

「odd-ever pricing」が小売業に有効なだけでなく、生活の中でも人の心理に影響を及ぼします。ジムトレーナーがランニング目標距離を10kmではなく9.9kmに設定したら、ジムに来た学員はもっと言うことを聞いてくれるかもしれません。医者がもし患者の万歩計の目標を10000歩ではなく9563歩に下げてあげたら、患者はもっと続けられるかもしれません。

おわりに

 「割」「得」は人のマクロの心理に影響を与えるだけでなく、最後にバタフライ・エフェクトのように人の行動を決定する効果もあります。本編の数字予想では小売りと定価でしたが、皆様の学びに繋がれば幸いです。「ゴールドバッハの数字予想」後編は異なる文化の起源、意義、表現方法で数字の秘密を探ります。

EASTER ISLAND Moais - Ahu Tongariki on rise of sun. Chile.

次回の下編「八」と「合」を紹介することもあなたの心を動かせるものになると嬉しいです。