2020.06.15

コロナ離婚急増と「離婚冷静期間」の制定は今後の離婚率を下げるか

5月28日に北京で行われた全国人民代表大会で「民法典」が可決した。
その中の一つに、離婚を希望する夫婦に30日間の離婚冷静期間を義務付けたものがある。元々は30分程度で手続きが完了する離婚手続きが、離婚届を届け出てから受理されるまで30日間待たなければならず、期間内にどちらかが離婚を撤回したくなったら離婚届を撤回できる。2021年1月1日から施行される。
この規定は大きな反響を呼び、Weiboでもトレンド入りする話題となった。#离婚冷静期#というハッシュタグを含む投稿の閲覧数は12.6億にもなる。(2020/6/1現在)

※6/12現在、weiboは別の問題で6/10 15:00 - 6/17 15:00までトレンドの更新を停止しています。

在宅時に離婚が過熱

新型コロナウイルスの関係で長期間外出できずストレスがたまって夫婦や家族の関係が悪化したこと、窓口がしばらく休止していた影響から離婚届受付再開したタイミングで予約が殺到した。一日の受付数に上限があるため、予約すらままならない状態が各地で見られた。

もともと離婚数は15年増加傾向

中国の離婚数は2003年から2017年まで連続15年上昇を続けていた(2018は下落)。2019年は結婚総数947.1万組に対し、離婚が415万組と大変多くなっている。反対に、婚姻件数のほうは2014年から減り続けている。

引用:人民日报:年轻人晚婚了离婚率连续15年上涨
http://finance.sina.com.cn/china/gncj/2018-08-16/doc-ihhtfwqs0350428.shtml

結婚への高いハードル

中国での結婚相手への条件として、門当戸対(家の格式が同程度なこと)、さらに男性側に有車有房(家や車を持っていること)が前提条件という風潮がある。そのため結婚は子供だけでなく親にとっても、一家にとっても非常に大変な一大イベント。そのため親からの結婚相手への要求も大変多い。

近年は少しずつ変わってきているが、中国では30歳までに90%程度の女性が結婚することから、「剩女」(売れ残り女:20代後半以降で結婚していない女性を指す)なんて言葉もあり、勝手に設定されたリミットに向けて急かされ、一家が認める条件を満たしている相手を見つけて、さらに結婚するという大変めまいがする“結婚レース“のような状態があった。
2017年のSK-2の「運命を、変えよう (#changedestiny)」はまさにその重圧を真正面からとらえたキャンペーンだった。
SK-II: Marriage Market Takeover (Please turn on subtitle)
https://www.youtube.com/embed/irfd74z52Cw
その条件のハードルを乗り越え、“レース”を終えたとしても、性格の不一致など生活の根幹にかかわる部分があれば当然離婚に結びつく。

離婚数の上昇の理由は、経済発展などの社会変化、それにともなう中国の婚姻の概念に変化が生じていることなどが背景として大いに考えられる。さらに女性が経済的自立している場合も多い点も離婚のハードルをさげるものと考えられる。
また近年では「闪婚闪离」「闪离闪再婚」(直訳:フラッシュ結婚フラッシュ離婚/意訳:すぐに結婚離婚を繰り返す)という言葉があり、この言葉からも離婚はあまりハードルが高くない事柄なのが予想される。

離婚率各国の離婚状況

2019年の中国の離婚率のデータが見つからないので計算すると、2019年の中国の離婚数は415万件、年平均総人口(※1)は139771.5万人より、2019年の中国離婚率(※2)は2.97%になる。
年度や総人口計算方法が微妙に異なれど、やや高めの数値のようだ。

引用:世界の統計2020_表紙~第8章
http://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2020half1.pdf
婚姻率:人口1,000人に対する1年間の婚姻数(住民登録による。)。再婚数を含む。
離婚率:人口1,000人に対する1年間の離婚数(裁判記録又は住民登録による。)。

実は韓国にも離婚熟慮期間(이혼숙려기간)なるものが2008年から施行されています。
離婚届を出した夫婦に1〜3カ月の熟考期間を与える制度ということで、今回の民法典ととても似ている。

かくいう2008年から韓国の離婚率は実はそこまで下がっていない。
以下の離婚件数と離婚率の推移を見ると、2008年に少しへこみがあるが、横這いやや下落という感じの緩やかな線である。

引用:[2019혼인이혼] 지난해 부부 11만쌍 헤어져…40대 이혼율 가장 높아 https://www.mk.co.kr/news/economy/view/2020/03/285507/

結婚への高いハードル、社会の急激な変化、コロナウイルスによる長時間の隔離がさらに離婚が急増した状況で、民法典が可決されたことは離婚数の増減に影響するのか。
経済や人口流動に比例して中国の家族の在り方、意識の変化は今後もめまぐるしく変化していくことだろう。

(※1)

2019年の総人口が見つからなかったため、(年初人口数+年末人口数)/2で計算。
(2018年末总人口+2019年末总人口)/2=(139,538+140,005)/2=139771.5万人。
国家数据:年末总人口
http://data.stats.gov.cn/search.htm?s=%E5%B9%B4%E6%9C%AB%E6%80%BB%E4%BA%BA%E5%8F%A3

(※2)

中国の離婚率は以下のように計算される。
離婚率=離婚数/年平均総人口
(参考:http://finance.sina.com.cn/china/gncj/2018-08-16/doc-ihhtfwqs0350428.shtml)