2021.07.19

タオバオの新コンテンツ「逛逛(ぶらぶら)」の機能は何か?

 みなさんこんにちは!balconiaのフロントエンジニア、Cavalierです。今回は、みなさんにタオバオ(中国最大級オンラインショッピングモール通販サイト)が昨年リリースした「逛逛(グアングアン=ぶらぶらする)」というコンテンツの機能についてご紹介したいと思います。
 UI(ユーザーインターフェイス)の視点から見ると、 「逛逛(ぶらぶら)」は幾つかのバージョンを経てどんどん「小紅書」 (レッドブック:中国発SNS型クチコミサイト)の画面に似てきている感じがします。私も両方のアプリの常連ユーザーとして、タオバオが新コンテンツ「逛逛」を打ち出した狙いはなんだろう、まさか「小紅書」のクローンバージョンを出しただけ・・・?などと色々なことを考えさせられました。
 今回は、新コンテンツがリリースされた背景や、タオバオ(アリババ社)の戦略的アプローチについて、私なりに探ってみたいと思います。

タオバオ「逛逛(ぶらぶら)」のご紹介

 タオバオの新コンテンツ「逛逛(ぶらぶら)」はもともと「買家秀=ユーザーシェア・ショー」という機能のアップグレードバージョンです。中国では、このユーザーのクチコミ・シェアコミュニティに関しては「小紅書」が大成功をおさめてきました。それもあり、上述の通りUIの視点から見るとタオバオの「逛逛(ぶらぶら)」機能は「小紅書」のコピーではないかと思ってしまうほどです。

 ユーザー体験の際も、購買意欲を植え付ける、つまり「种草(植え付け)」スタイルのプラットフォームとよく似ていることに気が付くでしょう。ここでは、多くのユーザーがクチコミを投稿したり、購入体験談をシェアしたりしています。また、売り手側も自社ブランド・製品のプロモーションのコンテンツを展開しています。

左画像「逛逛(ぶらぶら)」、右画像「小紅書(レッドブック)」

「逛逛(ぶらぶら)」が出現した背景は?

ユーザーのアプリ利用時間獲得合戦

 「極光」が発表した「2021年Q1モバイルインターネット業界データ研究レポート」で、モバイルネットユーザーのアプリ利用状況に関する調査結果が発表されていました。

 こちらのグラフをご覧いただければお分かりになるかと思いますが、ユーザーがネットで費やす時間は、ショートムービーが断トツの一位で、ECショッピングモールのシェアはほんのわずかです。EC最大手のタオバオとして、膨大な数のユーザーをカバーしているにもかかわらず、「来訪者数がまだ少ない」、「ショッピングが終わればすぐにサイトを離れてしまう」といった課題を抱えており、他のプラットフォームからユーザーの利用時間を獲得することが当面の急務という状態です。

タオバオの良質なコンテンツを構築するためのアップグレードチャレンジ

 2019年、ジャック・マー(馬雲)は 「毎晩約1700万人のユーザーが天猫やタオバオサイトを訪れても何も買わずに去ってしまう」と発言しました。

出典:weibo

 しかし、タオバオのサイトには、当時ショッピングサイト以外にも、「ifashion」や「買家秀(ユーザーショー)」、「微淘(Weitao)」、「有好貨」など、コンテンツがたくさんありました。なぜユーザーの滞在時間は他のプラットフォームに比べ少ないのでしょうか。実際には、サイト内に滞在しても商品購入にまで至らないことが多いのはなぜでしょうか。
 その根本的な原因はコンテンションの魅力に問題があると考えられます。他のプラットフォームがユーザーにとって有益なコンテンツや楽しみをもたらす仕組みを構築し、ユーザーの利用時間をどんどん伸ばしている中で、タオバオサイトで費やす時間はどんどん減ってきていたと見られます。結果として、タオバオは高品質なコンテンツを作成しなければならないという状況に迫られていたと考えられます。

タオバオにとって、「逛逛(ぶらぶら)」にはどんな意義があるのか?

 「逛逛(ぶらぶら)」はタオバオライブコマースをサポートする重要な機能である。

 みなさんご存知のとおり、昨年はコロナ禍の影響を受け、「タオバオライブ」をはじめ、ライブコマースが更に盛況となりました。しかし、ライブコマースは大手ブランドにとってはお祭り騒ぎだったのに対し、数えきれないほどの小売業者にとっては、人気パーソナリティを起用したり、他のプラットフォームで認知獲得の宣伝をする費用がないため、タオバオライブの効果は薄かったようです。
 ところが、「逛逛(ぶらぶら)」の出現により、「逛逛(ぶらぶら)」にコンテンツを露出し、そこでユーザー数をある程度獲得してからライブを実施するという流れが出来るため、顧客転換率の向上につながり、ライブコマース参入のハードルを押し下げることを実現したと言えます。
 「逛逛(ぶらぶら)」は購入に至るまでの最初の段階である、購買意欲を植え付ける「种草」のフェーズとして、ユーザーの時間を奪取するためのパワフルなツールと言えます。

従来型の通販ECからコンテンツECへ、タオバオ「逛逛(ぶらぶら)」 のアップグレード戦略

 従来型通販ECとは京東(JD)、タオバオのようなECプラットフォームであり、ある意味ではオフライン売り場のオンラインバージョンと言えます。中にはユーザーが興味を持つコンテンツも含まれているかもしませんが、商品紹介をメインとしているサイトです。ユーザーはショッピングするというニーズを持ってサイトへやってきて、そして商品を購入します。つまり、ユーザーが欲しい商品を自分で探すというロジックになっています。

 コンテンツECとはショートムービー、ロングムービー、画像やレビュー・投稿といった形を通じてコンテンツを展開し、コンテンツの内容で消費者に興味を持ってもらい、最終的な購入へと直接的に転換するというモデルです。つまり、ユーザー自身がもともと探していようといまいと、良質なコンテンツによって興味関心を植え付け購入に至るまでのプロセスです。

 相対的に見ると、やはりコンテンツECの方が多くの可能性を秘めていると言えます。これまで、タオバオは第三者プラットフォームを通じて購買意欲を植え付け、顧客転換してきましたが、「小紅書(レッドブック)」のような購買意欲を植え付ける「种草」をメインとするプラットフォームもECモールとしての役割を強めて独自のエコシステムを構築しはじめたことから、ユーザー離れを防ぐための対策が急務になってきたと言えます。それが「种草」機能を持つ「逛逛(ぶらぶら)」を打ち出した背景だと考えられます。

 私個人としては、「逛逛(ぶらぶら)」の出現は、重大な危機に直面するタオバオがリリースした重要なコンテンツ機能であり、そして、コンテンツECへモデルチェンジを行う上での重要な戦略ではないかと思っています。

 以上が、タオバオの新コンテンツ「逛逛(ぶらぶら)」に対する考察です。みなさまのご感想、ご質問等、お気軽にお寄せください、お待ちしております。