2021.09.16

中国若年層のダイエットブームからみる新たな食生活について

こんにちは!インターン生の今井美佑です。今回で3回目のブログとなります。最後まで読んで頂ければ幸いです。

早速ですが、皆さんは#中国式ダイエットというのを聞いたことがありますか。私がこの間TikTokをみていたときに、#中国式ダイエットというハッシュタグが付いた動画を見つけました。とてもバズっていて、なんだろうと思い調べてみました。これは音楽に合わせて汗だくになりながら、おなかを上下するエクササイズなのですか、中国の方がこのエクササイズを行っている動画がTikTokで広まったことから#中国式ダイエットと呼ばれているようです。(元ネタ参照:https://www.tiktok.com/@janny14906/video/6947720868474785030?lang=en&is_copy_url=0&is_from_webapp=v1&sender_device=pc&sender_web_id=6999571279473411586)

これに限らず、最近日本のSNSで中国のインフルエンサーが行っているダイエット動画をよく見かけるようになり、中国のダイエット事情にとても興味を持ち始めました。

そこで、中国版インスタグラムである小紅書(RED)でダイエットについていろいろ調べていくと、私が思っている以上に健康意識が高い中国の若者が多いことに気づきました。ダイエットにおいてエクササイズだけでなく、食生活を見直そうという人が多くみられます。その中でも小紅書(RED)を見ていて特に頻繫に見かけたふたつの新たな食生活について挙げたいと思います。

1. 「軽食」(ライトミール):サラダやゆで卵、ささみ、玄米等ヘルシーな食材を1つのお皿に盛り合わせたものです。中国においてのライトミールは日本で言うサラダボウルを指します。

2. 「代餐食品」(食事代替品):低カロリー、低脂肪、低糖質で気軽に栄養補給できるものです。日本で言うプロテインバーや、健康スムージー等を指します。

この2つはここ数年徐々に、中国の若年層中心に「新たなトレンド」になってきています。

食生活の変化は、今の中国市場を観察するのにとても重要だと思い、今回はこの2つの例を中心に若者たちがどのような食生活を好むようになったのか、その変化について調べてみました。

1. 「ライトミール」について

人々の健康意識の高まりにともなって、低脂肪、低カロリー、低糖質、低塩分、豊富な食物繊維、満腹感を得られやすいなどをうたった気軽に食べられる「ライトミール」が、特に若者の間で人気を集めています。

引用:小紅書(RED)

「ライトミール」ブームに乗っかるように、街中やデリバリーサービスでライトミール専門店を多く見かけるようになりました。

例えば、Moka Bros(摩卡站)は上海、北京等で展開するライトミールをメインにしたチェーンレストランで、「EAT WELL, FEEL GOOD」をスローガンにさまざまなライトミール中心のメニューを販売し、価格は60-100元(日本円で1000~1700円)ほどとなっています。また、すべてのメニューに動物性食品を一切使わないヴィ―ガン(完全菜食)対応や、グルテンフリー対応などが明記されています。

引用:大众点评
引用:大众点评

Moka Bros藍色港湾店店員の趙奎楽さんは今年5月の人民網の取材[1]に対し、「ここ2年ほどではっきり感じるのは、ライトミールを買い求める人がますます増え、多くの消費者が長期的にトレーニングをしたりヨガをしたりするようになって、飲食品や栄養のバランスに対する要求が高くなったことだ。店が混む週末には、1日の来店者数が延べ約400人から500人にもなり、若い女性が多い」と話しています。

食品デリバリーの美団が発表した「ライトミール消費ビッグデータ報告」もこの現象を裏付けています。ライトミール消費では「90後」(1990年代生まれ)の消費者が62%以上を占め、「80後」(1980年代生まれ)は26%、また女性が70%以上を占めているとあります。(参照:美団外買発佈《輕食消費大数据報告》,“食草系”白領熱衷健康輕食新風尚 (baidu.com)

2. 「代餐食品」(食事代替品)について

「ライトミール」の他にも体に必要なすべての栄養素を手軽に補給できる「代餐食品」(食事代替品)が現在、中国で大人気です。中国最大級のECプラットフォームT-mallとJD.comの調査報告書によると、2019年「代餐食品」(食事代替品)のEC売上は10億元を突破しています。

「代餐食品」(食事代替品)が中国で人気を集めた一つ目の理由は、食事の時間を確保できず、「ご飯を軽めに済ませたい」と考える人が増えたからといわれています。

885勤務(8AM出社8PM退社週5日勤務)や996勤務(9AM出社9PM退社週6日勤務)の人が増加してきたことで、仕事を早く終わらせるために、「食事代替品」を活用するサラリーマンが増加しています。また私自身も中国の大学での生活の中で、食事時間を勉強時間に回したいから「食事代替品」でお昼を済ませている大学生などをよく見かけました。

二つ目の理由は、肥満人口の増加です。

iiMedia Researchのデータによると、中国では肥満人口(BMI>30)が6000万人を超え、過体重人口(BMI>25)は2億人に上っているという現状があり、男女問わずに「ダイエット」ブームが続いています。(参照:若い世代で人気急上昇の食事代替品、ヘルシー志向が好調を後押し | 36Kr Japan |

中国国内の食事代替品市場で発売される商品は主に2つのコンセプトあります。

一つは、プロテインバーや栄養ドリンクなど「単品」形式で販売するもので、もう一つは、何日間の食事代替品をセットで販売する「ボックス」形式です。

「ボックス」形式はダイエットなど、特定の目的があり、短期間で痩せたい人を対象にしており、「単品」形式は一食のみ食事代替品に食事を置き換えたい消費者へのニーズに応えているため、作られました。

「単品」形式の例として、最近中国で人気のブランド「ffit8」が挙げられます。「ffit8」では、「単品」形式で、タンパク質豊富のプロテインバーを発売しています。

引用:百度図片

GymSquareの調査によると、アメリカ等での国際的な基準では男性が一日70~110g、女性が65~90gのタンパク質摂取量が必要ですが、ご飯や麺類を中心に食事生活を過ごしている中国人は、平均のタンパク質摂取量が40gと大幅に基準を下回っていました。そのため、「ffit8」の商品はダイエットをしている人のみでなく、タンパク質摂取量が足りない人もターゲットとなります。(参照:健康食品新机会:更多人健身,也需要更多蛋白質|GymSquare (baidu.com)

このように幅広い層の消費者をターゲットとする「ffit8」は、「中国最大のECセールの日」11月11日の前夜に、「2020年グルメブランド」の項目でトップ10に入ったことで注目を浴び、栄養ビスケット部門で第1位に輝きました。

また、2020年3月からJD.com、T-mall、シャオミが展開するECプラットフォーム「小米有品」で販売を開始し、二週間内に売上が1000万元(約1億6000万円)を突破しました。(参照:代餐有哪些消費趨勢?听三家頭部代餐公司説一説 | 干貨 (toutiao.com)

次に「ボックス」形式の例として、「Smeal」が挙げられます。

引用:百度図片

「Smeal」では、「代替ミルクシェイク」と呼ばれるドリンク系の「セット」商品を販売しています。味は、「抹茶ラテ」、「トリュフ」、「キャラメルコーヒー」など、幅広く展開し、「低カロリー」をキャッチフレーズにしています。

これまで、乾燥食材や穀物をパウダー状に加工した「食事代替品」は35歳~40歳の消費者の中で一時的なブームを起こしましたが、現在の20代の若年層消費者が大半を占める「食事代替品」市場では、商品の「味」と「手軽さ」は勝ち残るためのポイントとなりました。

日本ではプロテインシェイク等を飲んでいる方が最近増えてきていますが、ほとんどが粉の状態で販売されていて、自分で水などを足し、シェイクを作るというものだと思います。この「Smeal」のように、すでにシェイクされているものは気軽に飲めることができ、また栄養も取れるのでとてもいいアイディアだと思います。

また、シンプルなパッケージデザインもこの商品の特徴です。持っているだけでオシャレなこのデザインは、流行に敏感な若い世代にとても人気が出る理由の1つだと考えられます。

今まで中国のコンビニ等や通販等を見ても、健康食品だとナッツ類や穀物、果物ジュースや豆乳等しか目にしたことがなかったので、このような新しい「食事代替品」が増えてきていることにとても驚きました。

これらの「ライトミール」と「食事代替品」の急速な発展の背景には、中国人の食事に対する意識が「お腹いっぱい食べる」、「おいしいものを食べる」から「健康的に食べる」へと変わりつつあることがうかがえます。元来中国では医食同源の考えがあり、特にシニア層では日常的に散歩をしたり、広場で踊ったり、中国伝統の健康食品(漢方や豆類などの乾燥食材)を食べるなど健康を意識する人が多くみられます。よって健康的に食べるという考えが受け入れやすい土壌であるとも思えます。

英ユーロモニターのデータによると、2022年に中国の「ライトミール」と「食事代替品」の市場は1200億元(約2兆440億円)に達するとみられています。また、19年に発表された「中国の穀物安全保障」白書[2]によると、1996年と比較すると、中国人の1人あたり平均穀物消費量が減少した一方で、動物性食品、根菜類、野菜、果物といった穀物以外の消費量が増加しており、食べる物がより多様化し、飲食がより健康的になったとあります。

以前より日本ではプロテインバーや低カロリーの惣菜、健康飲料等が気軽に手に入れることができます。そこで、日本の経験やトレンドから何か中国進出のチャンスを見出すことができるのではないかと思いました。

「食事代替品」を中心としたダイエット商品を展開している「初吉食品」の創立者である徐怡俊氏は、2017年タオバオの傘下であるメディア会社「电商在线」でこのように話しています。「長年日本に住んでいた後、日本の食事代替品文化が非常に成熟していることを発見しました。 スーパーマーケットやコンビニエンスストアでは、あらゆる種類の食事代替品を購入できます。現地の女性は、食事代替品を直接食事として食べることもできます。 中国の人々は栄養価の高く健康的な食品にますます注意を向けており、「ダイエット」は永遠のトピックですが、食事代替品の分野の国内ブランドは非常に限られています。今の中国の食事代替品市場は、10年前の日本のレベルと同等です。」

https://m.toutiao.com/i6864489894971081229/ )

このように食事代替品、ライトミールのブームはまだ中国で始まったばかりです。

日本には、カロリーメイトをはじめとした栄養バーや、種類豊富なプロテインバー、こんにゃく麺をはじめとした糖質オフ麺、カロリーゼロ商品がたくさんあります。無印良品が糖質カット商品の展開を始めて話題を集めたことからもわかるように、日本において健康食品市場は競争がとても激しく、日々新たな商品が販売され、商品のレベルがアップデートされています。(低糖質パン・お菓子(糖質10g以下) 通販 | 無印良品 (muji.com)

そして、ただ健康というだけではなく、高いレベルの味や食べ応えのよさを求められている日本の健康食品は中国においても注目され始めています。このように先行する日本市場のノウハウをベースに、中国の新たな食生活ブームに目を向けることは新しい機会創出につながるのではないでしょうか。

すでに中国で流通している出前一丁や、カップヌードルのように、中国人の好みやライフスタイルに合わせた味付け、パッケージにする「カルチャライズ」をしていくと、中国の健康食品市場で新たな機会が得られるのではないかと思います。

【中国で注目を集め始めている日本の商品】
引用:小红书(RED)

【日本で販売されている糖質オフ商品】
引用:ヤフージャパン

参考:代餐有哪些消費趨勢?听三家頭部代餐公司説一説 | 干貨 (toutiao.com)

CBNData:2020代餐輕食消費洞察報告 | 互联网的一些事 (yixieshi.com)


[1] 今日は「草食べた?」 健康志向からライトミールが人気に--人民網日本語版--人民日報 (people.com.cn)

[2] 《中国的粮食安全》白皮書(全文)_保障 (sohu.com)