2021.09.09

Z世代がけん引する高級品中古市場(前編)

 昔の中国では偽物ブランドが売られていたり、海賊版DVDが売られていたことがありました。このような印象から中国でブランド品を買うとなると本物かどうかを疑う人は多かったのではないでしょうか。ましてや中古になるとその真偽はより不確かになる上に汚い、貧乏くさいなど様々な理由から敬遠されていたと思います。
 しかし近年中国で大きく盛り上がりを見せている中古高級品市場。その市場の伸び、またどうして伸びているか、何が売れているかをご紹介します。

2025年には世界最大高級品市場となる中国

 「中国二手奢侈品市场发展研究报告2020」によると、2019年の高級品消費額はすでに1兆元(約17兆2,000億円)を超えて世界の約1/3の消費を担っています。

中国高級品消費額全世界比。2019年には1051十億元(1兆円超)の消費額となり、世界の約27%ほどを占める。
引用:中国二手奢侈品市場発展研究報告2020

 2020年4月に広州のエルメス旗艦店がリニューアルオープンした際に1900万元(約2億8000万円)を超え、中国での1日記録を更新したというニュースが日本でも話題になったと思いますが、2020年のコロナ禍でも高級品への消費が勢いをとどまることを知りません。

(参考:「エルメス」、中国で移転オープンした店の売り上げが1日で2億8000万円! 新型コロナ禍をものともせず
2020年はコロナにより国内消費が増え、+48%成長。

2025年には世界最大の高級品市場になる予測。
引用:2021中国二手奢侈品電商平台消費洞察報告-04151500-連合

中国の中古高級品市場は黎明期。けん引するのはY,Z世代、1,2級都市。

 近年、中古車や中古コンピュータ、中古携帯電話の取引の透明性と市場化に伴い、中古品が徐々に消費者に受け入れられるようになりました。高級品にも同じ波が来ているにもかかわらず、中古高級品市場は高級品市場規模の5%しか占めていません。日本やアメリカなどは25-30%前後という数値からも、中国の中古高級品市場はまだまだ黎明期のようです。

各国の高級品市場における、中古高級市場の割合。中国は5%ほどしかなく、
ほかの国より中古という存在が高級品市場でまだまだ割合的に少ない。
引用:中国二手奢侈品市場発展研究報告2020

 中古高級品の年齢構成は70%以上が30歳以下となり、2018年よりも若年齢化の傾向は明らかになっています。主な消費の中心はY世代(1983-1995生まれ)、Z世代(1995-2009生まれ)、都市別だと深圳を筆頭とし、南京、杭州、北京、上海などの1-2級都市で45%を超えています。

2020年は2019年より中古高級品市場の若年化傾向がある。
引用:中国二手奢侈品市場発展研究報告

中古高級品鑑定数は倍増、Y,Z世代で中古品が延々と回っている

 鑑定数は2019年から1.5倍になっており、急激な増加を見せています。またその内訳が新品1/3、中古2/3という点、先ほどの中古高級品のメイン世代から考えると、わりと短期サイクルで定期的に中古高級品を売買し、中古高級品はZ世代内で回っているのではないか?ということが推察されます。

売れているブランドは依然として定番Louis Vuitton。2020年はよりクラシックへ。

 ハイブランドのヴィトン、エルメス、ロレックスとマイケルコースやコーチなどのやや安価なブランドが名を連ねています。
 ヴィトンはクラシックモデルの手頃な価格、精緻な作り、価格の安定さや認知度の高さから依然として人気を誇っています。グッチの伸び率は2015年からアレッサンドロ・ミケーレがクリエイティブ・ディレクターに就任し、若い世代ともブランドがコミュニケーションしてきた点や、Dionysus (ディオニュソス)が注目を集めたこと、またもともとのスター商品Sylvie、marmont、Ophidiaなどがけん引しています。
 シャネルも依然として人気ですが、最近価格が大幅に上昇したために中古市場の需要も合わせて伸びています。

 さらに2020年の傾向としてはクラシックへの傾倒です。下の2019と2020のモデル別人気商品を見てもらうとわかる通り、特徴あるモデルも多く存在する2019年とは異なり、2020年は一転してクラシックモデルが人気です。
 さらにエルメスバッグの人気は依然として高く、特にバーキン、ケリー、コンスタンスの3つのクラシックモデルの価格は着実に上昇しており、一部のモデルは定価を超えることさえあります。その人気の理由には中国のテレビドラマ「三十而已(Nothing But Thirty)」のあるシーンがSNS上で注目を集めたことが大きく影響しています。

(参考:「エルメス」が中国で人気沸騰 ドラマの影響からSNSで話題に

後編