2020.12.02

中国で注目を浴びるバーチャルアイドル

こんにちは、balconiaの不破です。今回の記事は中国でのバーチャルアイドル(虚拟偶像)の活躍について書いてみようと思います。
中国プロモーションを企画する際にKOLやKOC、REDやWeibo等が注目されがちですが、それらを揺るがす存在になるだろうと言われているのがバーチャルアイドルです。
そんなバーチャルアイドルがなぜ人気なのか、実際にどのようなプロモーションで起用されているのか、についてまとめていきたいと思います。

バーチャルアイドルの広がり

 中国でバーチャルアイドルが人気を集めるきっかけとなったのは、実は日本の初音ミクです。もともとは日本文化が好きな中国人がニコニコ動画やbilibili動画で初音ミクの動画を観覧していましたが、次第にWeibo等のSNSにも動画が拡散されるようになり、若者を中心に注目を集め、ここ数年で注目度が急激に高まっています。
2012年頃から中国でも様々なバーチャルアイドルが出現するようになりました。初音ミクをローカライズした中国版のバーチャルアイドル洛天依(luo tian yi)や、モバイルゲーム王者荣耀のキャラクターで結成されたバーチャルアイドルグループ「无限王者团」等、2018年には既に30以上のバーチャルアイドルが中国で誕生しています。

洛天依(luo tian yi)

参照元:洛天依公式Weibo

无限王者団

参照元:https://kuaibao.qq.com/s/20191105A0KBDR00?refer=spider

iQIYIが発表した「2019虚拟偶像观察报告」(2019バーチャルアイドルに関するレポート)では、アニメコンテンツの市場規模が2018年時点で141億6000万元(約2124億円)となり、2012年と比べると約20倍の規模になっています。

参照元:2019虚拟偶像观察报告

中国全土で3.9億人がバーチャルアイドルに注目、または興味を持ち始め、その中でも「95後」から「05後」の若者が64%を占めていると発表されています。

※95後:1995年生まれ以降の若者を指す
    05後:2005年生まれ以降の若者を指す

参照元:2019虚拟偶像观察报告

バーチャルアイドルの活躍

これらのバーチャルアイドルは今や動画の中だけの存在にとどまりません。人間のアイドルと同じように芸能活動を行っています。近年こうしたバーチャルアイドルと契約を結び、自社製品やサービスのプロモーションに起用する企業が増えています。
洛天依(luo tian yi)を例に上げると、今年の11月までで彼女と契約を結んだ企業は30を超えています。化粧品や飲食、ファッションや車等、様々な有名ブランドのイメージキャラクターを務めています。
以下で中国におけるバーチャルアイドル起用事例をご紹介します。

初音ミクがライブコマースに登場!

参照元:Weibo

2020年6月8日、初音ミクが「タオバオ」のライブコマースツール「タオバオライブ」に参加しました。1時間の生放送配信の最大視聴者数は300万人に達し、同サイトのサーバーを一時ダウンさせるほどアクセスが殺到しました。

洛天依が天猫(Tmall)の618アンバサダーに

参照元:https://xw.qq.com/cmsid/20200618A0PS8H00

天猫(Tmall)の618アンバサダーに就任した洛天依はライブコマースで18商品を紹介しました。ライブ観覧者数は630万人を超えました。

人気オーディション番組「青春有你2」にバーチャルバンドグループRiCH BOOMのRainbowが出演

参照元:https://news.163.com/20/0413/17/FA4309MG00019OH3.html

前回の記事でも紹介したオーディション番組「青春有你2」にバーチャルバンドグループRiCH BOOMのRainbowがスペシャルゲストとして出演し、練習生たちとダンスバトルを繰り広げました。練習生たちの先輩として登場し、「かっこよすぎる」などとみんなの憧れの存在となっていました。
RiCH BOOMはデビューから1年も経たないうちに《我是唱作人》《中国新说唱》《潮流合伙人》といったiQIYIのバラエティー番組に出演したり、様々な企業に起用されて商業効果を上げています。

中国トップKOL李佳琦と洛天依がロクシタンのライブコマースでコラボ

参照元:ロクシタン公式Weibo

15分で15000本の口紅を販売することから口红王子と呼ばれる中国のトップKOL李佳琦と洛天依がロクシタンのライブコマースでコラボしました。

王者荣耀がコスメブランドM・A・Cとコラボ

参照元:https://www.139y.com/gl/125203.html

2020年4月21日に王者荣耀のゲームユーザーによる人気投票で選抜された5人組アイドルグループの「无限王者团」がコスメブランドのM・A・Cとコラボしました。

M・A・Cがネット上で王者荣耀のキャラクターにM・A・Cの口紅がすごく似合う!という投稿でブランドへの注目が集まっていることに着目したり、M・A・Cと王者荣耀のターゲットが18歳~24歳の若者であるという点が重なり、今回のコラボを企画しました。
このコラボ企画は女性だけでなく、男性の注目も集め、消費者たちの間で話題になり、現時点でコラボした口紅は全て完売となっています。

※2020年11月30日現在M・A・C公式サイトより

まとめ

このように中国ではバーチャルアイドルが商業目的でアンバサダーやイメージキャラクターに起用されることが増えています。
人間のアイドルはスキャンダルを起こしたり、年をとったり、現実的な一面が必ずあるのに対して、バーチャルアイドルは常に美しく常に輝き、無限の可能性があります。また、外見やキャラ設定が自由にできるため、多方面で人々の好みに合わせた”理想”のアイドルなため、企業側のリスクも少ないのが特徴です。
こうした安定性やハイテクさ、未来感がトレンドを追い求める消費者のニーズにマッチし、ここ数年で急激に発達してきた文化と言えるでしょう。また、AIや5G技術の普及と共に、中国ではバーチャル文化の発展が加速しており、音楽ライブ等でもバーチャルアイドルとアーティストがコラボするなど、現実世界との境界線が薄れてきている傾向にあります。
時代はバーチャルと共にエンタメを築いていく流れに向かっていると思います。
中国でプロモーションをされる際に、ターゲットや商材に合わせてバーチャルアイドルの起用も検討されてみてはいかがでしょうか?

美月