2019.01.17

Backcasting Landscape(バックキャスティングランドスケープ) 未来から逆算してイノベーションを考案するフレームワーク

balconia Shanghai 総経理の久保山です。
今回はbalconiaが考案するBackcasting landscape(バックキャスティングランドスケープ)をご紹介します。一言でいえば、「未来から逆算してイノベーションを考案するフレームワーク」です。
今の延長線上に大きな成長が見られない時、10年後、20年後の未来に起こるであろう変化から逆算して、非線形なジャンプが必要になります。しかし、イノベーションのアイデアはあっても、それがオンブランドなのか、オフブランドなのか、というブランド戦略上の観点が置いてけぼりになることがあります。それらを統合しながら未来にあるべきブランド拡張のアイデアを発散し、議論するフレームワークとして、考案しました。
下の図はこんな考え方を概念図にしたものです。先に未来のある地点を想定して、そこに対してinnovationを起こしながらブランド価値をあげていく、ということです。

バックキャスティング概念図

■ Backcasting Landscape (バックキャスティングランドスケープ)

こちらがバックキャスティングランドスケープの全体像です。ひとつずつ項目をご説明しますね。

A: 未来の変化

最初に未来の変化を整理してみます。ターゲットとする未来にどのような変化が起こっているか?世の中で様々な人が予測を発表しています。予め私たちに関係する未来予測をカード化しておき、その中から抽出して議論をしていくと良いです。
未来予測に関しては様々なシンクタンクが発表していますし、書籍も多々あります。ここから抽出していく作業自体も意識を未来に向けるものになるのでぜひ関係者を巻き込みながら実施することをおすすめしています。

情報ソース例

未来年表|生活総研

書籍例

マッキンゼーが予測する未来
〔データブック〕近未来予測2025

※よく私たちもワークするので、カードも一緒にご提供しています。よかったら問い合わせフォームからご相談くださいね。

B:未来の顧客の価値観

そうした未来予測の中で、私たちがターゲットと定義する人々にどんな変化が訪れているかを議論します。Aを参照しながらBを考えていくわけです。
例えば、未来遺伝子操作が後天的に行いやすくなる、コスメでも、美容整形でもない方法で、手軽に美しくなれる時代にコスメをお客様はどう思ってるんだろう?他のお客様はわからないけれど、私たちのお客様だと、それでもコスメの時間を大切にしたりするんじゃないか?などというふうに議論を深めます。
いくつか予測が出てきたら抽象化して、どのような傾向が出てくるか議論してみましょう。

C:イノベーション

ここはすでにあるフレームワークをマッシュアップして活用します。Doblinというイノベーションコンサルティングの会社があるのですが、彼らが提唱するTen types of innovationというものがあります。過去にわたってイノベーションを研究したところ、イノベーションのタイプは10タイプにわかれる、と主張しています。また、そのうち3つのイノベーションが起きている会社、5つのイノベーションが起きている会社を比較すると、多くのイノベーションが同時に起きている会社のほうが成長率が高いと実証的に示しています。
さらにその10タイプのイノベーションそれぞれに対して戦術の定義もなされていて、これらを選び取ることで、強制発想法的にアイデアが出てくる、というものです。
抽象的だと思うので、少し具体的な例で。
タイプの1つに「収益モデル」というものがあります。その中には「割賦販売」「サブスクリプション」「フリーミアム」などが含まれています。例えば、TSUTAYA DISCASはビデオレンタルをサブスクリプションにしたことで出てきたイノベーティブなビジネスプラン、ということになります。(例が古くてすみません。。)
Aで議論した未来の予測に対して、どんなイノベーションがブランドに求められるのか議論しましょう。

書籍

Ten types of innovation を詳しく知りたい方はこちらへ。
日本語版:ビジネスモデルイノベーション
原著:Ten Types of Innovation: The Discipline of Building Breakthroughs
※日本語訳少しだけわかりにくいので英語わかる方は英語のほうがおすすめです。

D:ブランドプロポジション

イノベーションの案はさまざま出てくると思うのですが、Ten types of innovationだけで完結しないものとしてブランドでON/OFF?という観点があります。出てきたアイデアに対して、ブランドが定義する提供価値(=ブランドプロポジション)に照らすとオンブランド?オフブランド?ということを議論してみましょう。そうすることで、将来のブランドに起こしていくべきイノベーションが案として出てくると思います。
逆に、このブランドプロポジションがしっかり定義されていないと、Cのイノベーションがぐずぐずに広がりすぎてしまって、提供価値の鮮明化がけっこう大切だね、って結論になることもあったりします。

E:顧客との関係性

B:未来の顧客の価値観 と C:イノベーションを受けて、顧客とブランドの関係性は将来どうなるんだろう?というのを一言化してみましょう。いまある顧客との関係性と比較してみることで、未来の顧客の価値観も起こすべきイノベーションも振り返ることができ、また、未来にブランドがどういう存在になっていないといけないか、俯瞰して議論することができるはずです。

■ おわりに

と、いろいろ綴ってみたんですが、フレームワークは所詮フレームワークですし、バックキャストにしろフォアキャストにしろ、未来を予測することは結果的にできません。
大切なのは、そうした未来に向けて私たちが危機感を持つべきことや、機会を一緒にチームで議論できる、というところです。少なくとも一緒にワークしたお客さんからは「ブランドそのもののありかたが問われている感じがした」「意外と近い将来に起こる変化にすら対応できていなくて危機感を持った」「思ってなかったブランド拡張のアイデアを広げることができた」などというフィードバックがありました。 今の延長線上にない何かを発散していきたい、という時には手応えを感じていただけるワークかなと思うので、そんなことでお悩みでしたらぜひご相談くださいませ。
もちろん、やりっぱなしじゃなくって、マイルストン化、施策化、予算化、などの後続アジェンダもよくご一緒しています。このあたりのお話は別の記事で。

最後まで読んでくれてありがとうございました。

久保山