2022.03.04

2021年注目を集めた異業種コラボマーケティング事例

昨年末、デジタルメディアプラットフォーム「数英DIGITALING」は「2021年度異業種コラボブランドプロジェクトトップ20」を発表しました。アクセス数、保存数、いいね数及びユーザーコメントなど各種指標より2021年度の異業種コラボマーケティングトップ事例を選抜しています。

出典URL(中国語):
https://www.digitaling.com/articles/679853.html

異業種コラボマーケティングは既に珍しいものではなくなりましたが、消費者の好奇心や期待が高まる中で、異業種コラボレーションもその形式からアイディア、コンテンツ面において革新的な試みが見られています。

そこで今回は私が個人的に最も心を惹かれた2つの事例をご紹介したいと思います。
1、TikTok ライブ配信 x 徳雲社
2、ワトソンソーダウォーター x バーチャルアイドルimma

1、TikTok(Douyin) ライブ配信 x 徳雲社

画像出典:https://www.digitaling.com/articles/679853.html

みなさんご存知のとおり、TikTok(中国ではDouyin)は近年中国で大流行しているショートビデオプラットフォームです。一方、徳雲社は中国伝統芸能である相声(日本で言う漫才)パフォーマンス集団です。これらの新旧二つのコラボは非常に興味深い試みだと思います。

相声の機関として多くの団員を抱える「徳雲社龍字課」は、Tik Tokとコラボして今年オンラインでの独占的な団員募集を行いました。ライブ配信サービスを通じて、募集とともに多様な層からの認知度向上とファン獲得をはかりました。
具体的には、今回TikTokライブ配信と徳雲社がコラボしてTikTokアカウントを開設し、オンラインで「龍字課」の団員募集を行いました。大衆へのウケを狙い、中国伝統芸能とインターネットライブ配信を連結させると同時に、積極的に団員募集に参加してもらうために彼らは何を行ったのでしょうか。
もともと、徳雲社のカリスマ芸人であり国民的芸能人である郭徳網とその弟子である雲鶴九宵ブラザーズは多くのファンを保持していました。オフラインではチケットの入手が困難であり、ステージの爆笑ネタはTikTokでもブレークしています。徳雲社はTikTokのコラボにより、相声の舞台をTikTokのライブ配信ルームに移動させ、オフラインのファンをTikTokのオンラインユーザーに転換することをはかりました。

アイデアの解説:
デジタルを使って、伝統芸能をいかに魅力的に、より広い層に届けるかという試み自体がアイデアとして面白いと思います。さらに企画では「龍字課」をコアアイデアとして設定し、平面から動画全体に渡ってクリエイティブに落とし込まれています。
モチーフとして、龍の造形デザインは徳雲社のイメージにマッチしており、3D方式で各種の面白い個人オフィシャルサイト宣伝ポスター及び群像KY(キービジュアル)を作成しています。
動画では徳雲社の漫才をライブ配信ルームに移動させ、TikTokのUI(ユーザーインターフェース)と強く結合し、オンライン生徒募集の動画を作成しています。雲鶴九宵ブラザーズはライブ配信の形式でそれぞれの名場面を演出し、郭徳網は審査員としてライブ配信のコメントをするなど、TikTokライブ配信式生徒募集イベントのユーザー注目度の向上及びボリュームアップ、後日の応募を促す役割を果たしています。

施策の効果について:
徳雲社TikTok独占ライブ配信生徒募集の累計動員数は5,295万人以上;シングルライブのオンライン観客動員数は164万人;コメント数2,813万以上;郭徳網のフォロワー数は599万以上人増加;応募予約人数は250万以上となっています。ウェイボーでは、なんと10回も人気キーワードにランクインしています。関連話題記事のアクセス数は12億回以上に達しています。

ウォーミングアップ動画のURL
https://www.bilibili.com/video/BV1Df4y1E7Jj?zw

考察:
徳雲社 x TikTokライブ配信のコラボレーションは、伝統芸能を最新のプラットフォーム、テクノロジーで再活性化させる一つの良い事例だと感じます。優れたアイデアをベースに、撮影や平面デザインも秀逸で、相声の「楽しい」を最大限にアピールしています。普段マーケティング戦略を考える際に、無理やりにでも若者に合わせようとすることも多いと思いますが、本事例の反応を見て分かる通り若者層は特に伝統文化から遠ざかっているわけではなく、ただその良さを知らなかっただけ、というケースも多いはずです。そのような状況に対して、アイデアを持って若者たちとコミュニケーションを進めていけば、本事例のように若者たちの注目を集めることができる可能性は大きいと言えます。

2、ワトソンズソーダウォーター x バーチャルアイドルimma

画像出典:https://www.digitaling.com/articles/679853.html

バーチャルアイドル関連の話題は、本ブログで何度も取り上げていますが、ブランドマーケティングとバーチャルアイドルのコラボレーションも頻繁に行われています。ご興味のある方はこちらのブログもご覧ください:
「バーチャルヒューマン「AYAYI」が中国で人気上昇中」https://www.balconia.cn/blog/ayayi_is_gaining_popularity_in_china.html

ワトソンズソーダウォーターは中国ドラッグストア大手ワトソンズの人気売れ筋商品ですが、2021年に新しいフレーバーを新たに発売しました。こちらのドリンクはアルコール度数が0.5%以下と、ノンアルコール飲料とアルコール飲料の間にあるような独自のカテゴリーです。
このような商品をプロモーションするにあたり、ワトソンズは若年層の価値観を商品特性に掛け合わせて伝達していきました。若年世代とは簡単に定義できない、無限の可能性を持っており、他人に定義されるより、自身の感受性を重視する世代です。そういった価値観は、まさに本商品と同じである、といった共感を狙ったコミュニケーションになっています。

アイデアの解説:
カテゴリーの定義が難しい新商品は「X Soda Water」と名づけられました。X、というのは定義されず、神秘感溢れる魅力的で無限の可能性を持つものです。Xはワトソンズソーダウォーターの「融合」のDNAであり、ソーダウォーター x ジュース x  アルコール x …… 未来世代に属する商品であることを伝えています。ストーリーの続きは未来世代のイメージキャラクターにバトンタッチしましょう!ということでアジアの人気バーチャルアイドルimmaを起用し、ワトソンズソーダウォーター初となるバーチャルアイドルがイメージキャラクターを務めることになりました。彼女の存在自体がバーチャルとリアルの融合でもあり、本商品の特徴を示すものでもあります。

施策の効果について:
現時点で本プロジェクトは全エリアのプラットフォームでの露出回数は275,770,000回以上、バーチャルアイドルimmaが参加した未来感のあるテレビCMヒット作の再生回数は132,370,000回以上、インタラクション回数1,500,000回以上、ECサイトへのアクセスは延べ2,150,000人以上に達した他、京東で初日リリースされたオンライン限定商品が一部のエリアで売り切れる等、大きな反響を得ました。

動画のURL:
https://v.qq.com/x/page/o32551gkmg4.html

考察:
アイデア自体は革新的というものではないかもしれませんが、アイデアをベースにしたクリエイティブやプロモーション施策の実行が素晴らしいと感じました。動画からはテクノロジー感と未来感が感じられ、今のトレンドにも合致しています。バーチャルアイドル自体もニッチから徐々にマスへと浸透しつつあります。視点を変えれば、この事例はブランド自体の若返り化にも成功していると言えます。今後、若者たちのクリエイティブやバーチャルアイドルに対する期待値はどんどん高まっていくでしょう。継続的に若者たちの注目を浴びるには、バーチャルアイドルをどのように使用するのか、というマーケティングアイデアにも更に奇抜でユニークなものが求められていくと言えるでしょう。

最後に
上記事例をご覧いただきましたが、いかがでしたでしょうか。ブランドマーケティングは日進月歩です。私たちは常に市場の変化に注目し、最新動向をお届けして参りますので、少しでもお役に立てれば幸いです。何かご質問や気になるポイントがあればいつでもご連絡下さい。