2023.07.31

中国神話の意味と啓示

豊かで複雑な中国の古代神話体系

世界中の多くの文明は独自の神話体系を持っています。 世界神話の中でも、特に古代中国の神話体系は複雑で、多種多様な神々や女神が登場し、同じ神々や女神でも古文書によって設定がまちまちとなっています。

《山海経》からみる神話

中国最古の書物で、最も多くの神話が記されている《山海経》。その《山海経》の中から、現代まで語り継がれ、中国の人々に親しまれている3つの神話《精卫填海》、《夸父逐日》、《大禹治水》をご紹介します。
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神話一:《精卫填海》(「精衛」海を埋め尽くす)

画像出典:https://www.penglaipavilion.com/article/855.html

この神話は《山海经、北山経》の序盤に出てくる神話です。小学校4年生の国語の教科書に掲載され、誰もが触れたことのある物語となっています。

小学校4年生の国語の教科書の《精卫填海》
画像出典:https://www.kj7707.com/article-578-1.html

《山海经、北山経》にはこのように記されています。
炎帝(帝王の名前)の娘「女娃」がある日、東シナ海に泳ぎに行ったところ、不運にも大嵐に遭い、海に飲み込まれて溺死してしまいました。 炎帝は死後、「精衛」という名の小鳥に姿を変え、自分の幼い無垢な命を奪った東シナ海を憎み、復讐することを誓いました。
それから「精衛」は毎日、西の山から石や枝を運んでは海に投げ込み、東シナ海を埋め尽くそうとしたのです。もちろん結果は失敗に終わります。これが《精卫填海》の物語です。
中国の小学生はこの物語から、文章の表現方法を学び、同時に古代人の忍耐と不屈の精神を学びました。

神話二:《夸父逐日》(夸父、太陽とかけ比べ)

画像出典:https://www.zhihu.com/tardis/zm/art/566545527?source_id=1003

この神話も有名で、小学校の教科書にも記載されています。また、小学校に入る前でも絵本や読み聞かせなどになっており、多くの人に知られています。

絵本の《夸父逐日》
画像出典:
http://product.m.dangdang.com/product.php?pid=1191318787
http://m.bookschina.com/8703331.htm

《山海経、海外北経》にはこのように記されています。
昔夸父という巨人族の男がいて、夸父は太陽に追いつこうと、追いかけたのです。途中、喉が渇いて水がほしくなり、河水(黄河の古称)と渭水で水を飲んだのですが、河水と渭水だけでは足らず、北の大澤湖まで行き、水を飲もうとしたのですが、到着する前に乾きで死んでしまいました。死ぬ間際、彼は杖を投げ捨て、その杖は桃の木立に姿を変えました。という内容です。

ストーリーは非常にシンプルですが、この神話から様々なことを学ぶことが出来ます。
現代人は自然は壮大で、人がコントロールできるものではないと根本的に分かっていますが、古代の人々は自然をも克服することができると信じていました。
子供たちは読み聞かせや絵本を読むことで自然を征服しようとする古代人の壮大さ、強さを学びました。

神話三:《大禹治水》

画像出典:https://slt.henan.gov.cn/2021/05-27/2152966.html

《大禹治水》が記された書物は特に多く、人民教育出版社発行の小学2年生の教科書にも掲載され、幅広く知られています。

小学教科書の《大禹治水》
画像出典:https://www.zixuexi.com/yuwen/20200129-365759.htm

《山海経、海内経》にはこのように記されています。
ある日、大洪水が起こり、鯀(大禹の父)は天帝(中国神話における最高権力者)の命令を待たずに、洪水を食い止めようと帝の息壌(自ら育つ土)を盗んで天帝を怒らせました。 古代の宗教的考えから、天帝の権威を傷つけることはあってはならず、天帝は部下に鯀が自身の孫であるにも関わらず、鯀を殺すように命じたのです。そして 死んだ鯀のお腹から大禹が誕生しました。大禹は大帝の名を受けこの洪水を治めようとします。
洪水を治めるために、大禹は13年間全国を周り、3度故郷を通り過ぎましたが、一度も家へ帰ることはありませんでした。それは洪水を治めるという任務遂行の決意の表れでもありました。そして彼は幾千万の人を率いて水路を整備し、洪水を治めたのでした。
この物語から、大禹の決断力と強いリーダーシップ、困難に立ち向かい、乗り越えることの大切さを学びました。

神話の啓示

子供の頃、神話を読んだ時には、奇妙な怪物や、魔法のような物語に没頭していました。 大人になってからは、物語に登場するさまざまな設定や空想に惹かれました。 そして、今回、知識を得るため、物語の全体像を理解するために様々な文献から情報を集め、改めて神話を読んでみると、古代人がなぜ神話を作ったのかを少しずつ理解することができ、また今までとは違った幸せや満足感を感じています。