2023.10.23

「原神」の異業種コラボに見るIPを活用したマーケティングーその2「ブランド・トラフィックエンパワーメント」

画像出典:キャデラック公式サイト

前回の記事(https://www.balconia.cn/blog/3453.html)では、原神IPマーケティングの特徴の一つであるシーン設定についてご紹介しました。具体的な行動を通して独自の体験を創造し、プレイヤーの自発的な参加を促し、オンラインとオフラインをつなぎ、ゲームへの共感力を高めることがいかに重要か、お分かりいただけたでしょうか。優れたコンテンツはトラフィックを増やすのに役立ち、優れた運営はトラフィックを確保することができます。今後、ゲーム企業が主導権を握るためには、プレイヤーに喜ばれるコンテンツを継続的に生み出していくことが鍵となるでしょう。
実は、中国国内の多くのゲーム企業はすでにシーン設定の重要性を認識しており、実践に移しているのです。ところが、激しい競争が繰り広げられる中、原神はこれまでと異なるアプローチに乗り出したのです。そのアプローチとは、今回の記事でご紹介する「原神IPマーケティング」のもう一つの戦略である「ブランド・トラフィックエンパワメント」なのです。

「原神」 X「キャデラック」

2022年9月から、原神のIPコラボは新たに別の道を切り開いたので、「社死の合言葉」を叫ぶ必要もなくなったのです。限定グッズがもらえるという点ではこれまでのイベントと同じですが、そのハードルは大幅に引き上げられました、キャデラックとのコラボがその良い例です。新しいアプローチでは原神が自身ブランド力で、コラボブランドへのトラフィックのエンパワーメントを図ろうとしていることがうかがえます。

9月19日、キャデラックのCT4およびXT4の原神コラボレーションモデルが正式に発売され、価格はそれぞれ23.57万元および27.57万元で、各モデルが60台の限定販売となっています。コラボ情報の発表によって、みんなの二次元DNAが激しく揺さぶられ、原神プレイヤーのコミュニティで大きな話題となります。BILIBILIには何百万回も再生されるコラボ関連ビデオが次々と登場し、プレイヤーたちのキャデラックに対する議論も盛り上がり続けます。
公式はオフラインの試乗イベントと「キャデラック・原神と一緒に帰る」イベントを開始し、多くのプレイヤーが実店舗で体験しに訪れ、キャデラックにとって優れたZ世代のアクティブなファンを集めたと言えます。

Bilibiliの百万再生回数の動画
画像出典:BILIBILI
WEIBOでの関連トピックの人気
画像出典:WEIBO
店舗での試乗と送迎イベント
画像出典:WEIBO、RED
「原神」 X「キャデラック」のコラボイベントグッズ
画像出典:キャデラック公式サイト

中国ではゲームというと、「薬物依存、ゲーム依存性」を連想する人が多くいます、そのためゲーム業界の評判はあまりよくないのです。しかし、最近では原神とキャデラックのようなコラボイベントが増えるにつれて、ゲームブランドは製品を通じて集客だけを目的とするのではなく、トラフィックの共有、ブランドのエンパワメント、さらには文化的アウトプットを目指しているのです。

このような一見何の関連性もないブランドコラボなのですが、米哈游(miHoYo)にとっては新たな試みに挑戦する突破口となったのです。ゲームを長期にわたって運営するには、新しいプレイヤーを引き込むことが必須です。しかし、プレイヤーは常に新しいものを好み、古いものを嫌うので、IPの影響力を拡大するためには、型破りにつながる機会を探し求め続ける姿勢が重要でしょう。

「原神」 X 「支付宝(アリペイ)」

2023年4月22日、原神と支付宝(アリペイ)は第二回の「天朗风清 绿色出行」(快晴の日、エコフレンドリーな外出)。イベントはエコな移動方式とCO2の削減を中心に、原神のIPの影響力を環境保護活動と結びつけ、多くのプレイヤーに低炭素で環境に優しい生活様式を実践するよう呼びかけます。

「原神」X「支付宝」のコラボイベント インフォメーション
画像出典:アリペイ

プレイヤーはアリペイで交通バスや地下鉄を利用したりするとエコポイントが貯まります。公式情報によると、「天朗风清 绿色出行」コラボイベントの参加者数は現時点で2000万人以上を超えており、全国民がエコ交通を通じて生成された累計エコポイントは2万トンに達したそうです。このエコポイントは、アントフォレスト(蚂蚁森林)のチャリティー植樹プロジェクトに使用されますので、砂漠に100万本の梭梭を植えたことになります。

重慶、厦門の「天朗风清 绿色出行」テーマバスと列車
画像出典:原神公式WEIBO
CO2削減量2万トン達成のお祝いとして、ユーザーに特別なアイテムを贈呈
画像出典:アリペイ

今回のコラボイベントからも同様に、原神はトラフィック誘導に加え、正しい「価値誘導」に取り組んでいる姿勢がうかがえます。精神レベルでプレイヤーがより深い、持続的な満足感を得ることができれば、ゲームはやがて認められ、最終的には長期的な発展につながるでしょう。

今や原神は多くの注目を集め、名誉を手に入れてきましたが、社会的責任を果たすことも不可欠で忘れてはいけません。米哈游(miHoYo)の取り組みは、単に優れたゲームを作るだけでなく、ゲーム特有のメディア属性を活用し、コラボを通して多様な価値を創造してきました。ゲーム内外2つの次元において、ゲーム産業の高品質な発展を実現したのです。
如何でしたでしょうか。もしIPコラボレーションにご興味をお持ちでしたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。