2024.03.27

2024年3.15消費者権利Dayで取り上げられたのは?

皆さんこんにちは。インターン生のMEIYOUです。
今年もやってきました3月15日、世界消費者権利デー※1

※1 世界消費者権利デーは、1962年3月15日に、米国のケネディ大統領によって消費者の権利(安全への権利、情報を与えられる権利、選択をする権利、意見を聴かれる権利)が初めて明確化されたことを記念し、消費者の権利を促進するために国際消費者機構(CI: Consumers International)が提唱している世界的な記念日です。(参考:消費庁)

中国では、毎年この日に不正をしている企業を暴露する特集番組(315晚会※2)が放映されます。今年は全部で9つの分野における不正が取り上げられました。
この記事では、特集番組で取り上げられた中でも衝撃的だった3つの内容を紹介したいと思います。去年の特集はこちらの記事をご覧ください。https://www.balconia.cn/blog/3034.html

※2 今年度の315晚会は、「誠実さの構築と安全性の共有」をテーマに、火災安全性、食品安全性、金融安全性、データセキュリティなどの分野に注目しています。消費者権利の保護を強化し、消費環境を最適化し、商品とサービスの継続的な品質向上を促進し、より良い生活を実現することに力を注ぐことを目的に開催されました。

写真出典:生放送スクリーンショット

今回紹介された数々の不正の中でも、特に3つの分野における不正が命に関わる内容だったので、ピックアップして皆さんに詳しく紹介させて頂きたいと思います。

1.防火基準※3に満たない防火ガラス

今回の不正は、天津市と河北省における防火ガラスを販売する一部の市場で、深刻な規格外品質の製品が出回っているという通報により判明しました。番組記者はこの情報を確認するため、天津の防火ガラス生産専門企業を訪問しました。驚くことに、その生産現場では一般の防火ガラス生産ラインで行われる耐火液の吹き付けや乾燥などの工程が一切行われていなかったことが判明しました。

記者の度重なる質問に、ある従業員は、自分たちが製造しているのは実は普通の強化ガラスで、防火処理はしていないことを告白しました。さらに衝撃的なのは、市場に回っているほとんどの防火ガラスは単に防火ラベルが貼られているだけで、実際の防火性能はないことがほとんどだということでした。天津の企業だけでなく、河北省某所の防火ガラス製造企業も同様の偽造行為を行っていました。業界関係者によると、これらの企業は高価な適格耐火ガラスを用意し、自社製品のふりをして検査に出し、適格検査報告書を不正に入手した後、規格外性能の粗悪品を堂々と販売し、莫大な利益を得ていたようです。

番組ではさらに偽造された防火ガラスと本物(基準を満たしている)の防火ガラスの防火性能の違いを検証しました。その結果、いくつかの偽造防火ガラスは4分未満の耐火時間しかないことが判明しました。このような製品が実際に高層ビルで設置されていたとなれば、住民の生命と安全にとって大きな脅威となります。

本物の防火ガラス(上)と偽造防火ガラス(下)
写真出典:生放送スクリーンショット

※3 中国国家が定めた「建築物設計における防火基準法」の規定によると、火災が発生した際に住民が逃げ出す時間を確保するため、高さが54メートルを超える建築物において設置される外窓は1時間以上の耐火構造でなくてはならないとあります。

2.消火できない消火器

2024年1月初旬、番組の記者が中国中部にある有名な金属・電化製品市場に潜入しました。中国国内で使われているほとんどの消火器がこの市場から卸されています。番組記者はある消火器販売店に立ち寄り、そこの従業員から衝撃的な発言を聞くことになります。

「もしあなたが30元(約600円)の消火器を購入したとしたら、その消火器は火を消すことができないやつである。」
写真出典:生放送スクリーンショット

従業員は加えて、消火器には2種類あり、1つは国家が定めた基準をクリアしている国の認証マークがあるもの、もう1つは基準をクリアしているように見せかけているが国の認証マークがないものだと言います。

写真出典:生放送スクリーンショット

認証マークがあるものとないものでは、消火剤に含まれている主要成分の割合が全く違うことが判明しました。

写真出典:直播画面スクリーンショット

国家が定めた基準によると、ABC粉末消火剤の主成分であるリン酸二水素アンモニウムの含有量は75%に達するべきであるとあります。しかし、番組記者が訪問したほとんどの店舗では基準を満たしていない消火器を販売しており、価格に応じてリン酸二水素アンモニウム含有量50%のものや含有量20%のものが存在していました。さらに従業員の証言によると、リン酸二水素アンモニウム含有量が50%を満たしていない消化器は、消火機能を一切用いていないといいます。しかし、これら違法製品は表面上、リン酸二水素アンモニウム含有量70%と記されており、加えて消火器の形やデザインも基準を満たした製品と全く同じであるため、見た目だけでは違いを判断することがとても難しいと言います。

番組記者は、この違法消火器たちが生産されている湖南省株洲市の工場を尋ねました。番組記者が質問すると、生産担当者は「国家基準に満たさない消火器でも、顧客の要望に応じて、リン酸二水素アンモニウム含有量をカスタマイズできる」と回答しました。

番組では消費者に向け注意喚起し、資格のある消防機器を扱う正式な販売チャネルを選択することを勧めました。同時に、関連部門が製品品質管理の監督を強化し、消火器における違法な生産と販売を取り締まることを求めました。

3.違法肉を使用した預制菜

暴露された預制菜の商品「梅菜扣肉」のイメージ
写真出典 http://food.umtheme.com/caipu/14.html

「預制菜」とは、あらかじめ加工・調理された食品を指し、近年中国で急速な発展を遂げている産業であります。今回、「預制菜」として販売されていた商品に違法であるお肉が使用されていたことが判明しました。使用されたのは豚の頸部にある肉で、リンパ線の分布が最も多い部位であり、脂肪腫や深刻な健康被害を引き起こす甲状腺を大量に含みます。またリンパ腺にはウイルスや細菌が多いため、国家の食品安全基準において、豚肉を販売する際は必ずリンパ腺及び甲状腺の排除処理を行うことが定められています。

事実を確かめるため、番組記者は安徽省にある複数の冷凍食品市場を訪ねました。調査の結果、商人たちは豚バラ肉の代わりに未処理の豚頸部肉を使用していることを明らかにしました。番組記者は続けて生産工場を訪問すると、工場の加工処理エリアでは、豚頸部肉が大量に置かれており、作業員が未処理の豚頸部肉をスライスし器に入れ包装していました。未処理のままでも調味料を追加され加熱された豚頸部肉は正常の肉と区別がつかないといいます。また工場外においても包装を外された豚頸部肉が完全に屋外に露出して衛生管理が一切されていないことが判明しました。

対象の企業は中華人民共和国食品安全法に違反したとして今年2月に49680元(約994万円)の罰金が下されました。しかし今回の番組記者による調査によると、罰せられた企業は今もなお未処理豚頸部肉の使用を継続しており、以前に増して極秘で違法行為をしていることが判明しました。

その他

上記3つの分野以外に取り上げられた内容は、

◼︎マザーボードの闇産業チェーンの存在について:20枚のスマホ基盤を1台のパソコンのマザーボード※4に組みこむことで、一台の装置で同時に20個の携帯電話を制御・操作できることが判明しました。さらに、闇業者はこの技術を利用して何百ものスマホ画面を操作することで、偽の広告閲覧数や偽フォロワー数を稼ぐ不正ビジネスを展開していたことが判明しました。

※4 マザーボードは、コンピューターや携帯電話などの電子機器において、中央処理装置(CPU)、メモリ、入出力ポートなどの各種コンポーネントを接続し、統合して動作させる基盤のことです。

◼︎高級白酒として有名な「听花酒」が虚偽広告で販売していたことについて:免疫力向上や睡眠の質の改善などの効能があり国際特許を取得していると宣伝していたが、実際に特許はなく、ミントのエキスを添加していたとして広告法及び製造法に違反していたことが判明しました。

◼︎AIの顔変更技術による違法行為について:悪徳業者がAIの顔変更技術や音声変更技術を活用し、被害者の知人・友人になりすまし金銭をだましとっていたことが判明しました。

◼︎婚活サイトにおいての詐欺行為について:完璧な条件を満たしている仮想の人物を作り出し顧客を引き付け、その後経済能力が高い顧客に焦点を当て、高額な会員費をだまし取っていたことが判明しました。

◼︎中国BMWの異音について:BMW購入者によると、新車にもかかわらず、ドライブシャフトからがたがた音がすることが判明しました。

◼︎闇金融アプリについて:闇金業者はアプリ内を通じてギフトカードでお金を貸し、実際よりも多い金額を借り主に請求していたことが判明しました。

まとめ

今回の暴露は主に近年中国でビジネスを拡大している加工調理食品産業、またAIやアプリを使用した詐欺などが目立ちました。例年と比較すると、今年は食品、生活安全、金融などとても幅広い範囲での不正が暴露されました。

個人的にはここ数年、中国において安全面・衛生面への規制が進んでいる印象を持っていたので信用し始めていたのですが、まだまだ規制をかいくぐることが可能なことに驚きました。

これからもこのような暴露特集番組が放映されるなど、不正をしている企業が排除され、消費者にとって安全で信用できる購買環境が整ってほしいなと思います。