2023.03.27

2023年3.15消費者権利Dayで取り上げられたのは?

3月15日(以降315)は「世界消費者権利」(国際消費者機構が1983年に提唱)とされていますが、中国では毎年大々的に消費者権利に関わる特集番組(315晩会)が組まれます。

毎年恒例のCCTV 315晩会は、各大手ブランドのPR担当が最も緊張し、最も重要視するイベントであり、「広報業界の春節晩会」だと揶揄されているくらいです。今年の中国経済は消費の回復拡大を最優先にしています。超大型市場のスピーディーな回復に伴い、景気は穏やかな回復を見せており、内需拡大が期待されます。

今回の315晩会では例年同様10個の消費問題が取り上げられました。その中から3つをピックアップして詳しくご紹介したいと思います。

1)美容医療における美容注射問題

近年、医療美容業界は数千億ドル規模の新しい分野として急速に成長しています。医療美容医薬品は莫大な利益が得られるため、犯罪者の偽造ターゲットになっています。315晩会では、多くの消費者から医療美容業界に関する苦情が寄せられました。

例えば、2022年7月武漢で開催されたBeauty Expoに多くの美容医療機器メーカーや化粧品会社が出展しました。あるブースのスタッフが主力商品であるグルカンポリペプチドを紹介しました。この商品は顔の注射に使用される化粧品として登録されており、主な機能はシワの改善や皮膚を滑らかにし、顔を盛り上げて若く見せる効果があると話していました。

2022年3月30日、国家食品薬品監督管理局は、27種類の医療機器に関する「医療機器分類カタログ」の内容について調整を行うと発表しました。中でも美容整形外科用の注入材料は、最も厳しいレベルである第Ⅲ類医療機器として管理されることになりました。化粧品類の日用化粧品の使用範囲は皮膚表面のみとされているため、規定に違反していることは明らかです。

さらに驚いたのは、この会社のスタッフは医師免許を持っていないにも関わらず、展示会場で顧客の顔に注射を実施していたのです。展示会場では、このような注射光景は珍しくありませんでした。ペプチドファクターバイオテクノロジー株式会社のブースでも同様に、スタッフがお客様のこめかみや額、頬などの部位に注射を実施していました。

国の規定によると、化粧品類商品は皮膚の表面にのみ使用できると定められています。本来医療資格を持った医師だけに許される行為が、これらの企業では一般スタッフが公の場で消費者に注射を実施していたのです。記者が調査したところ、多くの製品にはロット番号さえ表示されておらず、いわゆる三無産品(製造日、品質保証証、メーカ名が記載されていない製品)と呼ばれるものです。

2)クレーマーライバー、シニア層をターゲットに

デジタル時代において、高齢者たちも時代の流れについて行くべく、オンラインショッピングを学び、ライブ配信を楽しむのはとても良いことなのですが、ライブコマースで演技派のエモーションタイプのライバーに遭遇することがあります。彼らはライブ配信ハウスで台本を手にしながらパフォーマンスをしたり、悲惨さを見せたり、正義の味方を演じるなどして、視聴者の感情を掻き立て、商品を売ってお金を稼ぐという仕組みになっています。

山西省平遥市の李さんは、母親が何人かのエモーションライバーを賞賛し、ライブ配信で推奨された、奇跡的な治癒効果があると言われる製品をたくさん購入したと話していました。実際のところ、これらの製品は固形飲料や粒状キャンディーなどごく普通の食品に過ぎなかったようです。

ライブ配信室から流れるこのようなデタラメな芝居の目的は、ライブ配信を通じて「信憑性」を視聴者に売り込むためです。しかし実際では、それらの商品は一般食品類に属すただのキャンディーで、宣伝されているような効果がないどころか、高齢者が食べるとかえって血圧の上昇やその他の健康問題を引き起こす恐れがあります。

さらには、論争を解決するリーダーや仲介役をする人もまた、ライブ配信を通して高齢者をだまして製品を購入させることが目的なのです。このようなライブ配信は莫大な利益を得ています。 例えば1.2元で仕入れた商品を「10箱で99元」で売ることができれば、ライバーに80元のマージンが入ります。これらのアカウントが公開されると、プラットフォーム側にて即座に禁止処理が行われました。

3)歪んだネットステマ部隊

ライブ配信型ネット販売が爆発的に増えると、ネットステマ部隊も戦場を移し、多くのWebサイトではネットステマ部隊の売買が大々的に行われています。ステマを雇うことは、今やライブ配信業界ではほとんど暗黙の了解になっています。

あるステマ部隊は、自分たちのコンピューター室まで晒しています。棚には数百台の携帯電話が並べられ、業者から24時間セルフサービス注文の受け付けやレビュー、いいね、コメント数増やしなどの依頼を受けています。ステマ部隊の利用価格は「ライブ配信の人気が1000人アップで1時間当たり49元、いいね10万回で18元、コメント30個で59元…」というように明記されており、価格によってステマ対応も異なります。一部の会社ではリアルさと効果を出すため、ステマ部隊の入室時間をずらすしたり、発言内容の詳細まで事前設定を行なっています。

中には、ゲームプラットフォームの監視を避けるため、市民情報を取得して実名認証を行うチャネルまで持っているところもあります。これは単なるごまかしではなく、違法で犯罪行為なのです。

上記以外にもいろいろ取り上げられましたので、併せてご紹介いたします。

4)食用エッセンスで調合された偽タイ産ジャスミン米

ジャスミンの香りがするタイ産米が、実は食用エッセンスを配合したもので、 30トンの米に約2.5kgのエッセンスを加えただけのものが販売されていました。

5)電気自転車用ヘルメットの品質不良

電動自転車に乗る際にヘルメットを着用することは、すでに一般常識となっています。しかし、市場にはさまざまなヘルメットが出回っており、その多くは品質基準を満たしておらず、人々の安全を守ることもできません。

CCTVによって実施された「衝突エネルギー吸収性能」試験の結果、国家新基準を満たしていないものが6タイプもあり、製造過程において手抜きや材料をごまかしていたのが原因だったそうです。

6)保健機能食品の新トリック

吉林省の農村部では、毎月多くの高齢者宛にたくさんの無料パッケージが届けられています。中には100個以上のパッケージを受け取ったという人もいます。パッケージには各種の「ミニラジオ」が入っていました。不思議なのは、このラジオは通常のラジオ放送を聞くことができず、再生されるのはさまざまなヘルスケア製品の広告だけなのです。ミニラジオを通じて購入する商品の価格は正規のEコマースプラットフォームの3倍以上です。保健機能食品業者のマーケティングトリックには頭が下がります。

7)インターネット詐欺、ますます深刻に

成都の陳さんは、ETC 情報に誤りがあるため、再認証が必要というショートメッセージを受け取りました。これは典型的なフィッシング詐欺です。

このほかにも、画面共有詐欺と呼ばれるものがあります。詐欺師は、画面を共有を通して消費者の携帯電話での操作をスパイした後、確認コードを送信するだけで、遠隔操作で送金ができてしまうのです。

8)観光地で使われている安全ベルトが危険

一部の観光地ではいまだに写真のような3点式安全ベルトを使用しています。試験の結果、このベルトでは観光客の安全を守ることができないということがわかりました。

9)使用済みや古い碍子を再生品として販売

村人たちは、これらの古い碍子は加工、塗装などの処理を経て、検査なしで全国各地で販売されていることを認めました。同じ仕様の新品碍子は1個あたり20元以上しますが、再生品は10元くらいで買えるとのことです。

10)高水準農地の手抜き工事

パイプの価格差が140元もあるため、建設業者は規格外のセメントパイプを使用することで、鉄筋の使用量を半分に減らしていたことがわかりました。

まとめ:

今年の315晩会では大手ブランドに関するスキャンダルは特になかったのですが、一般人に知られていない巧妙な手口が数多く公開されました。まとめると、次の3つの特徴が見受けられます。

■ 3級以下の都市や農村部に焦点を当ててみると、1級や2級都市の市民が見落としていた多くの問題が、メディアによって曝け出されるのは非常に大きな意義があるといえます。

■ 三農(農業、農村、農家)、タイ産米、観光地の安全、高水準な農地の建設にフォーカスしたのは、どれも三農と密接に関係しており、品質保証は三農事業の発展を進める上で極めて重要なことです。

■ 個人情報保護関連のレベルが引き上げられました。ステマ部隊やインターネット詐欺、抜け穴を利用したサイバー犯罪、その根本的な原因は国民の個人情報漏えいであると思われます。

以上簡単にご紹介させていただきました。中国市場についてもっと知りたいという方、いつでもお気軽にご連絡ください。