この夏、スマホ画面が話題のコラボ情報で溢れかえった
この夏、外出しなくてもさまざまな「限定コラボ」情報に囲まれていました。スマホを開けば、モーメンツで新商品コーヒーを投稿する人、小紅書(RED)でデリバリーで届いたサプライズギフトをシェアする人がいたり、ショート動画では「打卡攻略(チェックイン攻略)」が紹介され、コーヒーブランドと語学学習アプリが「結婚」する短編ドラマもあれば、観光地とタピオカブランドとの不思議な組み合わせもあり、さまざまな情報が溢れていました。
夏休みが新しいイベントの最盛期であることにはもう慣れていますが、今年は特に盛り上がりました。今回は最も代表的な4つのコラボ事例を取り上げ、この夏、中国の若者たちの消費事情とクリエイティブな遊び方をご紹介したいと思います。
1. Luckin Coffee × Duolingo:まるで結婚式に参加しているみたい
このコラボを最初に目にしたのはショート動画プラットフォームでした。『私たち結婚しました』というタイトルの短編ドラマです。Luckin Coffee(瑞幸咖啡)と語学学習アプリ Duolingo(多邻国)が新婚夫婦として登場し、ユーモアたっぷりのセリフやスタンプがSNSで一気に拡散されました。

画像出典:RED
実際に店舗を訪れてみると、カウンターは緑色のマスコット「Duo」で埋め尽くされ、カップスリーブやステッカー、ポスターまですべて彼の笑顔で彩られていました。限定ドリンク「緑沙沙ラテ」は爽やかな味わいでとてもおいしかったです。店員さんによると、この商品は発売初週だけでおよそ900万杯も売れたそうです。
💡 チェックポイント
◾️ 中国チェーンブランドLuckin Coffee と 語学学習アプリDuolingo が「結婚」をテーマに話題性のあるマーケティングを展開。
◾️ 短編ドラマ『私たち結婚しました』で物語性を演出し、SNS上で大きな話題を呼んだ。
◾️ 限定ドリンク「緑沙沙ラテ」が発売初週で約900万杯売れ、話題性と商品体験を結びつけることで爆発的な販売効果が得られた。
2. オリエンタルパールタワー × ミルクティー「蜜雪冰城」コラボ:ネットのネタが現実世界に出現
これは完全にネット発のコラボでした。きっかけは「東方明珠で蜜雪冰城を飲むと、タワーから攻撃が行われる(防御タワー攻撃)」というイタズラ投稿でした。それに対して蜜雪冰城の公式がそのネタを逆手に取り、タワーの下に販売ブースを設置し、オリエンタルパールタワーの公式アカウントまでもが「私は防御タワーだ」と認めたのです。
現地には長蛇の列ができ、人々はタワーを背景にミルクティーを掲げて写真を撮り、SNSに投稿していました。この夏、このようなネット上のミームがオフラインでに再現される現象をよく見かけます。

右:オリエンタルパールタワーのWechat公式アカウントが「私は防御タワーだ」と投稿しています。画像出典:Wechat動画チャンネル
💡 チェックポイント
◾️ 上海のランドマーク・オリエンタルパールタワーがネットユーザーに「防御タワー」と呼ばれたことから、「蜜雪冰城を飲むと防御タワー攻撃が発生する」というミームがネットでバズった。
◾️ これに対して公式側が巧みに応答し、実際にタワーの下で販売を開始。蜜雪冰城のドリンク購入を促進し、リアルシーンでの「ネタ体験型」コラボとなった。ブランドコラボの面白さを増幅しただけでなく、購買行動にも結びついた。
3. ゲーム × 文化旅行:若者たちの夏休み「ミッション」
この夏、多くのゲーム会社がキャラクターの誕生日を祝う「バースデー企画」を打ち出しました。ポップアップストアの地図や限定グッズを事前に告知し、ファンはオンラインで呼びかけ合い、現地へ向かいチェックインします。また、お茶飲料ブランドと博物館・観光地のコラボも同様に、まずREDやウェイボー等のSNSで大々的に告知し、盛り上げてからオフラインで正式に展開される形をとっています。


左:河南省の博物館とのコラボで登場した「中中中」シリーズのキャラクター谷笛の子犬。
中:内モンゴルではナーダム祭りとコラボし、オンラインテーマカップを発売しました。
右:河北省唐山では皮影劇(中国の伝統的な影絵)をモチーフにしたティーグッズを打ち出しました。
画像出典:RED
💡 チェックポイント
◾️ ゲームIPコラボの多様性:キャラクターや誕生日イベントなど、ブランドは異業種コラボを頻繁に展開。キャラクターの誕生日に合わせて限定腕時計や翻訳絵本、周辺グッズストア等を通して、オリジナル物語を高度に再現している。
◾️ 文化旅行、ローカルとの連携:お茶飲料ブランドがローカルの観光スポットや博物館と連携してご当地性のあるコラボ商品(飲料コラボカップ、文化クリエイティブ周辺グッズなど)を打ち出し、「最高のチェックインアイテム」として旅行者からの人気を集めている。
4. フードデリバリープラットフォームの「サプライズ」
フードデリバリープラットフォームも、完全にオンラインから仕掛ける施策が増えています。京東外売とゲーム「ブロスタ」のコラボでは、アプリのプッシュ通知で「注文するとランダムでグッズをゲットできる」と告知。ユーザーは注文品を受け取る際に、袋にキャラクターのスマホスタンドが入っていて驚くことも。欲しいキャラを集めようと、リピート注文するユーザーも続出していたようです。
一方で、淘宝フラッシュセールは、各都市の地域イベントとのコラボと通してプロモーションを展開しており、確実に話題を積み上げました。



💡 チェックポイント
◾️ 京東外売はゲーム「ブロスタ」とコラボしてデリバリーを展開。美团デリバリーでは、注文するとコラボ周辺グッズ(コースターやスマホスタンド、バッグなど)がもらえる施策を展開。
◾️ 淘宝フラッシュセールはローカルイベント(ビール祭り、地方コンサートなど)とコラボして、アイテム商品を無料配布することを、地域限定のイベント運営戦略として実施。
これらのコラボはなぜ「バズった」のだろうか?そこから得られる示唆は?
今年の夏休みに行われたコラボイベントの多くは、まずSNSで一気に拡散され、その勢いを保ったままオフラインへと展開されました。若者たちがイベントに参加する理由は、単に商品を買うためだけではありません。ネット上のホットな話題に乗り遅れないために、チェックインタスクを達成して、自分の体験をシェアしているのです。人気を集めたコラボイベントには、「ストーリー性(語れるネタ)」があり、「インタラクティブ(オンライン×オフライン連動)」、「共有性(映える写真や動画、拡散しやすい)」などといった共通点を兼ね備えています。そして、バーチャルとリアル世界の間で、高い注目度を集めながら、好循環のサイクルが生まれています。

最後に
上記でご紹介したコラボから、中国の消費者(特に若者たち)は単なる「買い物」ではなく、消費を通じて自己表現し、文化イベントに参加し、コミュニティとつながろうとしている傾向を示唆していると思われます。
夏季コラボはまるで映し鏡のようで、今の若者たちの消費スタイルの変化を映し出しています。オンラインで話題が急速に拡散されると、オフライン体験とつながり、再びオンラインで二次拡散されるサイクルへと変化しています。スピーディかつ効率的にこのサイクルは回り、熱は一瞬で盛り上がっては過ぎ去りますが、すぐに次のストーリーが登場して空白を埋めていきます。
このような夏季コラボは一つの消費スタイルの縮図に過ぎません。秋冬の新商品シーズンが到来すれば、また新しい異業種コラボやマーケティング手法が続々と現れるでしょう。次はどんな意外な組み合わせが現れ、ネットとリアルを行き来するのでしょうか。楽しみにしたいところです。