2026.07.10

ロープの価値を再定義:topologieはなぜ支持されるのか

「ロープ1本で数百元? どう考えても割高すぎませんか」

これは、私が topologie というブランドを知ったばかりの頃、SNSで最もよく目にしたコメントのひとつです。直径6mmのナイロンロープなら、ECサイトで検索すれば送料込みで10元もしないものはいくらでも見つかるのに、それがtopologieのタグを付けただけで318元に跳ね上がるのです。しかも、Tmall公式ストアでの売上数は2万点以上にも達しています。さらに、人気のボトルバッグシリーズは本体とストラップが別売りになっており、本体は600元以上、ストラップを組み合わせると、合計で1,000元近い価格になります。同じ価格帯を見てみると、PatagoniaやThe North Faceのショルダーバッグは大体600元以下で、Nikeなら300元以下の商品も少なくありません。機能性素材のテクノロジーを前面に打ち出しているわけでもない中で、topologieのこの価格は極めて強気であると言えます。

画像出典:天猫オフィシャルストア

topologieは2018年に誕生し、2022年のグローバル売上高は2,500万ドルに達しました。そして、2026年にはアジア・ヨーロッパ・北米の主要商業エリアで40以上の店舗を展開しています。派手なマーケティングで一気にブレイクしたのではなく、「高いけど欲しくなる」ブランドとして、多くの人に受け入れられてきました。

二人のクライマーのストーリー:岩壁からオフィス街へ

topologieは2018年、フランス出身のCarlos Granon氏と日本出身の浦野剛氏によって設立されました。二人ともクライミング愛好家で、そのバックグラウンドがブランドを形づくっているDNAとなり、機能美とフランス×日本ならではの洗練された感性を持ち合わせています。

二人は日本で暮らしていた当時、市場が取り残していた層の存在に気づいたのです。彼らは創業者たち自身と同じようにスポーツ、通勤、旅行を中心としたライフスタイルを楽しみ、アウトドアギアの機能性やデザイン性を求めていますが、エベレスト級の環境に耐えられるほどのスペックは求めていません。当時のクライミングブランドは本格派すぎるうえにデザインも無骨で、雪山や岩場に似合っていても、街中に溶け込めないようなものばかりでした。そこで、彼らはクライミングギアが持つ本質的な機能だけを残し、それ以外のパーツを大胆に削ぎ落として再設計した結果、日常にも自然に溶け込めるプロダクトへと進化させたのです。

そして、クライミングロープやカラビナ、ギアの造形からデザイン言語を抽出し、120種類以上の着脱式ロープストラップを開発しました。バッグ本体との組み合わせは理論上数千通りにものぼり、後にこの仕組みは 「topologie Wares System™」 として展開されました。

左:画像出典:RED公式アカウント。右:画像出典:topologieオフィシャルサイト

topologieが「高いけど欲しくなる」理由

topologie Wares System™ 

topologie最大の特徴は、やはりこの 「topologie Wares System™」 にあります。消費者の購入対象はデザインバッグの完成品ではなく、自分で組み合わせるためのパーツなのです。この発想は、近年の消費者心理の変化とぴったり合致しています。ラグジュアリーブランドのような「見せる消費」よりも、限られた予算で楽しさや自分らしさをアピールすることが重視されるようになりました。Labubuチャームの人気やビビッドでカラフルな雑貨ブランドの大ブレイクもその延長線上にあります。つまり、どれも「自分らしさを楽しむ」という消費心理を異なる形で満たしているのです。topologieはその考え方を早い段階から製品システムに組み込み、そして、実用性まで兼ね備えた形で実現しました。

実店舗に足を運んでみると、その商品ディスプレイの特徴がよく分かります。片側の壁には色や太さの異なるロープが何十種類も並び、反対側にはバッグやスマホケースが陳列されています。完成品を選ぶのではなく、自分だけの組み合わせを考えるのが楽しいです。例えば、自転車用にオリーブグリーンのボトルバッグを選んだ場合、10mmの太いロープでアウトドア感を強調するか、それとも細い差し色のロープで遊び心を加えるか、いろいろな組み合わせを考える時間そのものが楽しくなると、価格への抵抗感は自然と薄れていきます。また、この仕組みはリピート購入にもつながりやすいのです。通常ならバッグを新しく買い替える場合、数百〜数千元かかりますが、Wares System™なら、新しいロープを一本追加するだけで、今まで使っていたバッグがまったく違うデザインに生まれ変わります。季節やファッションに合わせてロープだけを買い足すという気軽にできるリフレッシュ体験こそが、ユーザーを何度も店舗へ足を運ばせる理由になっているのです。

画像出典:topologieオフィシャルサイト
画像出典:REDユーザー深圳万象城

ブランドとの密なコラボレーション

topologieはこれまで、Snow Peak、OWNDAYS、Polaroid、Macon、A.P.C.、Maison Kitsuné等のブランドとコラボレーションを行ってきました。興味深いのは、これらは「話題性重視」のブランドではなく、A.P.C.のミニマルなデニムスタイル、Maison Kitsunéのフレンチ×ジャパニーズ、Snow Peakのハードコアアウトドアブランドとしてのバックボーンのように、いずれも独自の美意識・アイデンティティを確立しているブランドばかりなのです。「人気ブランドの力を借りて話題になる」のではなく、「同じ美意識レベルを持つブランド同士」がセンスを磨いていく、そんな姿勢が感じられます。時間はかかるかもしれませんが、ブランド資産を着実に積み重ねられる方法であると言えるのではないでしょうか。これらのブランドを支持するのは流行に流される人ではなく、自分なりのスタイルを持ったファッション感度の高いニッチな消費層です。彼らにとってtopologieは単なるスマホアクセサリーではなく、自分らしいスタイルを完成させるための1ピースなのです。

左:画像出典:REDユーザーLili Heaney。右:画像出典:REDユーザー奇喵视觉VMD

「アーバン・ライトアウトドア」ポジションを確立

近年のアウトドアブームで最も大きく成長しているのは本格的な装備を必要とするハードコアなアウトドアではなく、アウトドアの機能性と日常や通勤のライフスタイルを融合させた「アーバン・ライトアウトドア」というスタイルです。現在、市場にある多くのアウトドアブランドやスポーツブランドは、バッグなどのアクセサリー類の展開が限られており、主力商品は依然としてアパレルやシューズなどです。そのため、アウトドアテイストのバッグに特化したtopologieのようなブランドにとって、これまで十分に注目されてこなかったニッチな市場が残っていたというわけです。実際、この「アーバン・ライトアウトドア」というスタイルに特化してバッグを展開しているブランドは現時点ではそれほど多くありません。その希少性こそが、topologieが消費者に新鮮な魅力を感じさせる大きな理由の一つになっているのです。

画像出典:REDオフィシャルサイト

東京という実験場からアジア市場へ

創業からわずか4年で、グローバル売上高は2,500万ドルに達しました。これはニッチなアクセサリーブランドとして十分に印象に残る金額だと言えます。創業者によると、その約半分は日本市場が占めていたそうです。つまり、日本はブランドにとって最初の実験市場であり、大きな成功だったことがわかります。また、2025年の報道によれば、2024年アジア市場の売上比率は18%から52%へと大きく増加したそうです。

現在、日本では東京・大阪・京都・神戸・横浜を中心に7店舗を展開し、タイでは2024年の1号店オープン後、わずか1年ほどでバンコクの主要商業施設で6店舗を出店しました。香港でも尖沙咀や銅鑼湾など一等地に3店舗を構えています。このように、出店先は販売規模よりも高級商業施設を選ぶというロジックは、単発のヒット商品に頼らず「システム」で勝負するプロダクト戦略とも完全に合致しているのです。

画像出典:topologieオフィシャルサイト

topologieは、欧米市場を皮切りにアジアへと展開するというルートではなく、あえてアジアを主戦場かつ実験市場として選びました。この判断は、最終的に正しかったという結論に至りました。日本市場にはもともと「機能美」と「洗練されたデザイン」を評価して購入する慣習があったため、topologieが掲げる「機能美 × フレンチ&ジャパニーズの美意識」というコンセプトが自然に受け入れられたのです。さらに、近年ではタイや香港でもライトアウトドアやアーバンアウトドアといったライフスタイル市場が急速に拡大しており、ニッチなアウトドアブランドへの関心も高まっています。こうした市場環境は、topologieにとって追い風となりました。フランスと日本という二つのルーツを持つtopologieは、アジアの美意識やライフスタイルに寄り添うブランドとなり、ブランド価値と認知度を着実に築いてきました。言うまでもなく、これはその後の競争の激しい欧米市場へ進出する際の大きなアドバンテージになりました。

中国本土は新たな試験場となっていますが、今のところ成績はまだ十分に良いとは言えない状況です。

中国本土は、topologieのグローバル戦略において、現時点では最も新しい市場です。2024年に上海・静安嘉里中心(JAKC)でポップアップストアを開きましたが、今はまだ試験段階です。2025年は上海・港匯恒隆広場や杭州・万象城でもポップアップストアを展開し、5月に上海iapmで中国本土初の常設店舗をオープンしました。さらに、9月には静安嘉里中心に2店舗目となる旗艦店を開設し、その後広州の天環広場への出店準備も進めており、中国華東エリア以外への初進出となります。こうして見ると、ブランドはこれまでと同様に、一歩ずつ慎重に市場を広げています。最初から一気に店舗数を増やさない姿勢は非常に現実的な戦略だと言えるでしょう。

画像出典:REDユーザー上海静安嘉里中心JAKC

一方で、ブランド認知と販売規模の差はまだ大きく、Tmall公式ストアで最も売れているボトルバッグの累計販売数は約3,000点ですが、lululemonでは600元前後のショルダーバッグがすでに1万点以上売れており、差は歴然としています。topologieは中国本土での知名度も店舗数もまだ立ち上げフェーズなので、この差は想定内とも言えます。現状はまだブランド認知を拡大する時期であり、街中で誰もが知る定番アイテムになるには、もう少し時間が必要でしょう。SNSでよく見かける「ロープ1本で数百元なんて、どう考えても高すぎるでしょ。」という声も、結局のところブランドの認知やストーリーが十分に伝わっていないからかもしれません。

もう一つ見逃せないのが、急増するコピー商品の存在です。ECサイトでは100元以下で購入できる類似品が数多く販売され、中には数千件単位で売れている商品もあります。ブランド側も2024年末には公式に偽造品対策を呼びかける声明を発表しました。topologieの魅力は、独自素材ではなく「デザインシステム」にあるため、模倣品の影響は技術訴求型ブランドよりも深刻です。消費者にとって、触感を通じてデザインの価値を判断することは難しいため、今後、単に偽物を取り締まるだけでなく、「なぜ本物を選ぶ価値があるのか」を伝えるブランドストーリーや、正規販売チャネルへ導くことの方がずっと重要になってくるでしょう。

フランスには「フラヌール(都市を気ままに歩き回る人)」、日本には「アーバンアウトドア」という概念や文化土壌があるため、topologieの「街を旅する」というコンセプトは自然に溶け込んでいきました。一方、中国本土ではそれに近いものとして、近年キャンプやサイクリング、Citywalkなどの人気が高まりつつあります。しかしながら、それらはいまだに誰もが思い浮かべるような統一されたイメージ・アイコンとしては定着していません。そのため、ブランドストーリーをそのまま中国語に置き換えただけでは、現地で育ちつつある文化とうまく融合できないでしょう。どれほどデザイン性に優れた商品であっても、「見た目はいいけど、なぜこんなに高いのか分からない」という印象で終わってしまう可能性さえあります。

topologieにご興味をお持ちの方はぜひお気軽にお問い合わせください。一緒にブランドの魅力や可能性についてお話しできたら幸いです。