2021.01.25

消費者リサーチ「聞き方」のコツ

balconia上海副総経理の川崎です。これまで、何度か消費者理解の重要性について取り上げましたが、今回はそのテクニック的なことをご紹介します。定性調査の聞き方のコツです。

定性調査におけるお悩み

消費者理解において力を発揮する定性調査ですが「情報量が多すぎてよく分からなくなる」といった声もよくお聞きします。確かに、調査に慣れていないうちは、その情報量に溺れてしまいがちですし、情報を適切に処理するには一定の経験も必要になります。

定性調査の分析には色んな考え方がありますので自分にあったやり方を見つけて頂くのが一番ですが、必ずやった方がいいこと、個人的におススメの方法を1つずつお伝えします。

1.仮説をもって聞く

「そんなこと分かってるよ!」と突っ込みが聞こえてきそうな程、当たり前なことでありますが、やはりこれが基本です。どういう結果になりそうか、自分達のターゲットはどういう人達なのか、というのは調査実施前にイメージ出来ているべきです。

「いや、それが分からないから調査してるんだけど・・・」というご指摘はごもっとも、なようでいて実は、やや的外れです。通常、どういう消費者にインタビューするかを決めるために、企画段階で対象者条件を設定します。また、当日のインタビュー内容をインタビューガイド(インタビューフロー)の形で整理しているはずです。それらは、調査によって得たいアウトプット及びターゲットはどういう人か、という仮説に基づいて作成されることで、はじめてワークします。その仮説がクリアであればあるほど、当日のインタビューも腹落ちしやすくなり、発見も多くなります。当然、仮説とは異なる結果が得られることも多々ありますし、それこそが醍醐味なのですが、それも事前に仮説をキチンともっているからこそクリアに捉えることが出来ます。

「変に仮説に囚われたくない」、そんな考えに囚われないで下さい。調査は強力なツールではありますが、残念ながら出来ることは限られます。調査が力を発揮するための大事なステップが仮説をもつことです。

2.自分に関連させる

次は、ターゲットを深く理解するにはどうしたら良いか、という少し実践的なポイントです。基本的には、消費者調査に協力頂く対象者さんは初対面の他人です。海外調査だと、国籍、文化、言語全てが異なる方です。そんな中で、相手の気持ちになって考えよう・・・というのには限界があると言えます。それが得意な方もいるのは確かですが、そう簡単ではありませんし、主観的になり過ぎて分析時に逆に迷路にはまってしまうおそれもあります。ではどうするか、という解決策の1つが「自分」起点で考える方法です。

自分のこともよく分かってないんだよね・・・という方、それはもったいないです。自分の中にある欲望や欲求に客観的に向き合ってみると、当然、色んな一面があることに気付きます。会社では即決でモノゴトを進める敏腕マネージャーだけど家庭のことになると優柔不断になる・・・洋服を買う時は1円でも値切りたいけど好きなアイドルのグッズには何万円もかけられる・・。目の前にいる「赤の他人」が、自分とは全く関係ないことを言ってるように見えて、実は自分自身にもあてはまる、ということは案外多いものです。

そんな内面的に向き合わなくても、「そういえば鈴木さんも同じようなこと言ってたな」「高校の時の山田さんに似てるなぁ」といったように、身近な人に重ね合わせてみると、「赤の他人」の発言が急に腹落ちすることもあります。同僚から言われて初めて気付きましたが、私もバックルームでインタビューを見ながら「あ、この人は友だちなれそう」といったことをよく呟いているようです。。。

このように自分に結びつけて発言を聞いていくと、ネクストアクションも思いつきやすくなります。「あ、○○さんだったら、たぶんXXが好きだろうな」「自分も△△の時に、こんなサービスがあったら嬉しいだろうな」という風に。

色んなマーケターの方が仰っている通り、人間の根源的な欲望や欲求は、国や文化が変わってもそれほど変わりません。その表出のされ方に国や文化、時代・トレンドが大きく影響するため全然違って見えますが、実は本質的な部分でのバリエーションは限られます。自分起点で考えることが、他人の深い理解の近道になると言えるでしょう。

以上、消費者理解のコツについてご説明してきました。おかげ様で消費者理解の考え方や進め方について社内研修を含めてご依頼頂く機会も増えて参りました。ターゲット理解でお困りの場合は、是非balconiaにお声かけ下さい。