2021.03.26

中国と日本のファネル構造の違い

皆さん初めまして、東北大学の経済学部経営学科3年生の辻壹万です!この度インターン生としてブログを書かせていただきます、よろしくお願いします!今後、インターン生の視点から見た中国と日本でのマーケティングについての理解を発信していきます。僕と同じような中国マーケティングについて知識が多くない方にもなるべくわかりやすい記事を書いていければと思います、どうぞよろしくお願いいたします。

今回の記事では日本企業のマーケターの方からbalconiaに寄せられる相談の中でもよくあるものについて弊社上海オフィスの代表久保山の回答を僕なりにかみ砕いた内容をお届けしていこうと思います。

よくある相談内容

さて、まずどのようなご相談が多いのかという共有からですが、「ブランドの認知があがらない」というご相談が数多く寄せられている現状があります。一口に認知があがらないと言っても様々な要素が含まれていますが、今回はその中でも特に多い、メディア戦略に関する誤解について取り上げ、中国でのメディア戦略を考える上で重要な要素とその実践例、陥りがちなNG集を紹介していきたいと思います。

メディア戦略に関する誤解

日本企業が中国市場でマーケティングを行う際によくありがちな失敗例として「日本と同じメディア戦略をそのまま取ってしまう」ことがあるようです。では何故中国では日本と同じようなメディア戦略で上手く行かないのでしょうか?その秘密はファネル構造の違いにあるようです。。

ファネルとは

さて、早速大学生のマーケティング素人には耳慣れない横文字が出てきてしまいましたね笑
ファネルを直訳すると「漏斗」のことで、逆三角形、すり鉢状の形をした器具のことを指しいます。(学校の理科の実験で使うやつですね)そしてこれを消費者の購入までの意識遷移に当てはめ図式化したものが、マーケティング業界でいうところの「ファネル」になります。消費者の意識が購入に近づけば近づくほどその人数は少なくなっていくため、消費者の購買フェーズとその人数を図式化するとちょうどファネル(漏斗)の形になるというものです。

中国と日本のファネル構造の違い

さて、このファネル構造ですが、文化的、社会的な背景から国ごとに各段階に含まれるメディアが異なるようです。以下に実際に中国と日本のファネル構造がどのように異なるのか図式化してみました。

この図はわかりやすくするためにかなり一般化したものではありますが、これだけでも中国と日本ではずいぶんファネル構造が異なっていることがわかります。日本と中国のファネル構造の特徴をざっくりとまとめると、日本はTV/雑誌などのマスメディアから段々とパーソナライズされていく形となっており、ブランドが作った表現が中心になる一方で、中国ではリアルな体験イベントから始まり、UGC(tiktokなどのユーザー起点のコンテンツメディア)における各分野のインフルエンサー、そしてECサイトという流れになっており、一貫してリアルな体験や感想といったユーザーが作った表現が中心になったファネル構造となっています。

ファネル構造の理解の重要性と失敗パターン

さて、ここまで読んでくださった方はもうお気づきかもしれませんが、この違いを理解しないまま日本と同じメディア戦略をとってしまった結果、中国市場でなかなかブランド認知が進まないという状況に陥ってしまうことがあります。例えば、日本ではマスメディアを通してブランドイメージを伝えられる分、広告代理店さんに依頼して良いクリエイティブを作ることで消費者と比較的意図したコミュニケーションを取りやすい一方で、中国でも安易に同じメディア戦略を採用した場合以下のような失敗例につながってしまうケースがあります。

①日本のファネル構造を前提にメディア、コミュニケーション戦略をプランニングしてしまう
→➁ブランドクリエイティブを中心に監修したり、ブランド発信のメディアへの予算投下を増やす
→③当たり外れが大きく、思うように結果が出ない、クリエイティブに課題があると誤解してしまう

→結果➁と③を行ったり来たりといった具合です。

中国市場の特徴とその理解を踏まえた実践

さて、ここまでファネル構造の違いとその重要性について長々と書いてきましたが、具体的にどうすればいいのでしょうか?ここからは中国市場において見直すべき代表的なポイントと重要項目について紹介していければと思います。

UGCメディアの成長と出稿検討

先ほどのファネル構造の違いを説明した際に出てきましたが、中国ではUGCメディアがかなり成長してきています。それに伴いUGCを活用していくことが有効な手段として認識されるようになりました。とは言え、具体的にイメージできる日本の方はそこまで多くないのではないでしょうか?(実際僕はあまりそのすごさをイメージできませんでした)ここで一つ具体例を紹介できればと思います。

以下の画像は小红书(レッドブック)というアプリの一画面です。このアプリはInstagramに規模が小さめのamazonが内蔵されたようなもので、20~30代のユーザーが多くなっています。このことから化粧品や育児関連商品の出稿は効果が高いようです。実際に、資生堂社など大手メーカーも公式の広告やクリエイティブを活発に発信しています。

見直すべき具体的項目

最後にここまでの話を整理し、balconiaがよく提示する改善ポイントを整理したものが以下になります。

・まずはファネルの理解を深める
・予算をブランド公式メディアなどのブランド中心の情報発信だけでなく、UGCなどのユーザー発信のメディアにも振り分ける
・ただしUGCメディアに出稿したり、口コミ拡散で活用したりする際には、ブランドエクイティとの整合性にも注意する。UGCメディアにおいても、公式クリエイティブの場合はブランドエクイティと大きな乖離が出ないように丁寧にブリーフやディレクションを行う
・UGCメディアも各種あるため、意図するターゲットに合致するよう、メディアの特徴を把握した上で出稿する先を選定する。

いかがだったでしょうか?
今回の記事を書く中で僕が最も興味深いと感じたのは、国によって異なるファネル構造の違いを理解していないことがメディア戦略全体に影響を及ぼし、ブランドの命運を左右してしまうという事実でした。大学の経済、経営系の授業よりもどちらかと言うと社会学や人類学のような授業に近しい内容に感じる知識が実際のビジネスの現場では重要な要素となっている点はマーケティング、ブランディングの領域ならではの面白さなのかなと感じました!

今回の記事は以上になります。
最後まで読んでくださりありがとうございました!

今回の記事が皆様のお役に立てば幸いです。