2021.07.19

「新・国貨」、新たなステージへ(後編)

 皆さんこんにちは。balconia上海のプロデューサー YUIです。

 前回では、「新・国貨」が台頭してきた背景をご紹介しましたが、今回は消費者側の変化を中心にお伝えしていきたいと思います。(「新・国貨」、新たなステージへ(前編)

新国産品に関連する消費トレンド

 国からの呼びかけやブランド側の取り組み、ブランドマーケティング施策など、各方面による共同努力の結果、天猫より発表された2020年の「国産品の光」中国ブランドランキングから見て取れるように、優れた品質と開発力を持つ数多くの国産品ブランドは迅速な勢いでブレイクアウトしています。昔の記憶に対して、中国消費者の「国産ブランド」よりも「海外ブランド」という意識が変化しつつあります。

 2021年5月10日は中国ブランドの日です、今回で第5回目を迎えました。これを機に、京東ビックデータ研究院は《2021中国ブランド消費トレンド報告》を発表しました。

 報告書から、2020年1年間のコロナ禍での生活を経て、近所又は在宅型セルフサービスを利用する消費者が増加傾向にあることが読み取れます。また、商品カテゴリー構成を見てみると、2015〜2020年にかけて、文化エンターテイメント、3Cデジタル、医療及び保健機能関連の中国ブランドのマーケットシェア率は顕著な伸びを見せており、全体をリードしています。このように、社会環境の影響を受け、中国人の消費価値観が少しずつ変化してきていることが見受けられます。

※引用元:《2019「新国货」消費趨勢報告》

 中国各省及び市において、地域別消費者の消費嗜好を見てみると、江蘇省、江西省、湖北省など多くの地域では、「国産品ブランド」の取引金額が占める割合は大きくかつ継続的な伸びを見せています。北京、上海のような一線都市の「国産品」の消費額もここ数年小幅ながら増え続けています。

※引用元:《2019「新国货」消費趨勢報告》

 このほか、消費者層にも変化が見られました。「シルバー世代」と呼ばれるシニア層の場合、中国ブランド商品を選ぶ傾向が強まる一方で、「国産品」ショッピングの好みにおいて、1995年代生まれの若い世代は1985年代生まれの世代よりも高い傾向にあることが見受けられます。また、新しいユーザーの年齢構成と分布状況では、16〜25歳の若年層および56歳以上の消費者が最も大きな割合を占めています。

※引用元:《2019「新国货」消費趨勢報告》

 以上の内容からみますと、「新国産品」のコアはなんといっても「新」という字です。

 3つのキーワードでまとめますと、「新しいコンセプト」「新しいエリア」「新しいユーザー層」となります。高度成長する中国ブランドは継続的なイノベーションを行っています。多様化、個性化する消費者のニーズに応えるために、ニーズの深堀や市場細分化をすることで、多くの優良商品やサービスを生み出していきます。

今話題の新国産品事例のご紹介

一、完美日記(パーフェクト ダイアリー)

 中国化粧品が急成長を遂げる市場環境の中で、2017年に新登場した化粧品ブランド「完美日記」は、2019年には2020年代生まれの若者に大人気となり、国産ブランド第2位の座(Huaweiが1位)を獲得しました、年商10億元前後で、最新推定市場価格は約10億ドル、化粧品業界の「国産品の光」と呼ばれ、新国産品を代表する人気ブランドとなりました。

 完美日記は業界を跨ぐプロモーション手法の活用が得意で、コスパ最強商品を売りに、若年層の「新しいものを追求する」消費者心理をうまくつかみ、スピーディーな商品リニューアルに取り込むことで商品の差別化を進みながら競争力の向上を図りました。こうして、完美日記は「国産品の光」として高く評価されました。

 当初、中国コスメブランドZEESEA(ズーシー)が大英博物館とコラボした眼影盤(アイシャドウパレット)は、2018年の天猫ダブル11で11.5秒に1つ売れたという奇跡的な実績を残し、国産ブランドと国際博物館とのコラボレーションの先駆けとなりました。

 そして、大都会博物館とのコラボ口紅は2019年の天猫618キャンペーンで爆発的な売れ行きを記録し、《中国国家地理》雑誌とのコラボ「幻想家16色アイシャドウパレット」は業界を跨いた傑作であり、大自然の色彩5色とアイシャドウを融合することで、発売後すぐに大きな注目を集め、中国版ツイッター微博(Weibo)の話題ハッシュタグ「チャイナビューティーカラーをアイに」の閲覧数は739.3万に達し、最終的には1秒に48個売れたという驚異的な数字を記録しました。

 そして今年は「動物アイシャドー」シリーズ第二世代の「玉兎アイシャドーパレット」を展開しました。これは中国神話に登場する「玉兎」からインスピレーションを得て、中国航天クリエイティブブランド「太空創想(スペース創想)」とコラボし、宇宙の惑星カラーをモチーフに色彩をマージさせることで、宇宙カルチャーとモダンな美学がパーフェクトに融合し、斬新なスタイルで人気シリーズを打ち出し、SNSプラットフォームやREDBOOKで多くの若年層ユーザー間でホットな話題となり、盛り上がりを見せました。

 今回のコラボレーションは業界を跨るプロモーションの成功事例として大変注目を集めており、中国の伝統文化や国家発展精神を注ぎ込んだ製品と言えるでしょう。Z世代にブランドへの期待感を持たせ、コアバリューを重視してもらいたいという想いは、「天猫中国トレンド」のコンセプトとピッタリ一致しています。

二、锺薛高(Chicecream)

 今から5年前なら、アイスクリームと言うと、誰もがまず思いつくブランドはハーゲンダッツやDQではないでしょうか。海外のアイスクリーム人気ブランドとして知られているハーゲンダッツやDQを食べることは、テイストやセンスのシンボルであり、中国国内で大人気となりました。しかし、今の若者たちはハーゲンダッツやDQに全く興味を示さないのです、なぜなら、新しい国産アイスクリームブランド「锺薛高」が生まれたからです。

 锺薛高は2018年3月に設立されたアイスブランドです。そのアイスの見た目がかっこよくて、中国風の瓦のデザイン、そしてトップには回字紋の彫刻、一つひとつ念入りに仕上げられています。オリジナリティ溢れるデザインは消費者の目をひき、急速に知名度を上げていきました。また、アイスの棒は生分解性材料である藁を使用しており、エコへの意識もPRポイントとして高く評価されています。それから、食べた後のサプライズとして、アイスの棒にはワンフレーズが入っており、さまざまな角度から顧客体験を重要視していることがわかります。

 また、品質への取り組みにおいては、锺薛高は添加物ゼロを約束しています。食用エッセンス、食用色素だけでなく、多くの商品に添加されている安定剤、乳化剤やコロイド溶液も使用していません。厳選された素材だけを使用しているため、価格は決して安くないのですが、消費者の期待を超えたハイクオリティ商品を提供しています。

 「中国ブランド」ブームのシンボル、魅力的な「新国産品」として、製品の本質的部分においては、高品質を維持すると同時にイノベーションを生み出し続け、鋭い洞察力と爽やかなPRを通じて更なる可能性を探っていかなければなりません。

最後に

 ただ単に盲目的に海外ブランドを崇拝するのではなく、「中国国産ブランドを支持する」意識が高まっており、今の多くの消費者、特に若年層の消費価値観の表れでもあります。数多くの「新国産ブランド」を目の前にして海外ブランドが中国市場に進出後、如何にして向き合い、競争に勝ち、生き残り、そして発展していくのかがますます厳しくなってきています。
 中国市場を熟知しており、消費者心理を洞察し、実績を積み重ねてきたブランドコンサルとして、マーケティングリサーチから、データ解析、ブランド戦略、クリエイティブ制作までのトータルソリューションをご提供いたしますので、ご一緒させていただければと思います。

YUI