クリエイティブかっこよくしすぎる問題
総経理の久保山です。当社もクリエイティブを作る会社なのですが、時々遭遇する「かっこよくしすぎる問題」について今日は触れたいと思います。特に中国においては日本とはかっこいいの基準ももちろん違うので、より重要な視点だと思っています。
かっこよくしすぎる問題とはなにか
クリエイティブを作るならかっこいいものが作りたいですよね。私も新卒で制作会社に入ったのでどちらかといえばそういうタイプだったりします。デザイナーって人々は性質としてかっこいいものを作りたいものです。それ自体は良いことなのですが、マーケティングでは、かっこよくすればよいかというと、必ずしもそうではなかったりします。
わたしたち、マーケティングに携わる人々はかっこいいものをいつも探してるから、かっこいいと感じる水準が特殊です。消費者とは違う目で世界を見ていると自覚しておく必要があります。ともすると、消費者が求めていないレベルに持っていってしまって、好かれるどころか敬遠されることもあり、どこがちょうどよいかっこよさなのかというのは一大テーマです。
いまだにクリエイティブやってると忘れること
私も最近とある商材で、少しシニアな男性向けの商品と思われているのをどうにか若者向けのかっこいいブランドにリブランディングしたい!というお仕事で張り切ってしまいまして。メンバーとブレストをしていると、少しかっこよい方向に振りすぎてしまったんです。で、副代表のブランドストラテジストに「いやいやその話してるときみんなポカンとしてるから、別に中国でそんなにかっこ悪いって思われてないから!」と言われて、はっとしました。そう、クリエイターの悪い癖ってのは制作モードになるとすぐに出てしまうものなんですよね。
ここで注意しなきゃいけないのが、私の場合はストラテジストが横にいたり、消費者を見る機会が多い職業なので、どこかでストップが効いて戦略側から再考するのですが、クリエイターの中にはそのまま走り抜けてしまう人がいらっしゃるということです。大御所でもそういう傾向のかたは少なからずいらっしゃいます。
ガリガリくんをかっこよくしちゃだめってのは誰にでもわかると思いますが、「リブランディングしてシニア向けの商品を若い人に向けて作っていこう」みたいなテーマになると、途端にこの「かっこよくしすぎる問題」に罹患する人が増え、クリエイターもそういうモードになってしまい、ブランド側も止められなくなって、これまでついてくれていたお客様が離れてしまう、というのは実際によく起こっていることだったりします。
ましてや中国ともなれば、日本の感性でかっこよくしてしまえば中国のお客様は「ポカン」としてしまうというわけです。
// 具体的にブランド名を出すと深刻すぎるので名前はあげないのですが、私に直接会う機会がありましたらいくらでも例を出しますのでおっしゃってください。
ブランド側は消費者のノンバーバルな反応を見る
凄腕ブランドマーケターたちはこういう感性的なテーマを扱うのがすごく得意です。自分ではないターゲット顧客たちがどこにこのブランドと自分のつながりを感じて買ってくれてるのか。どこまでかっこよくなってしまうと店に入りにくくなったり、手に取りにくくなってしまうのか。
そういう凄腕たちにはひとつの特徴があるな、と思っています。それは「消費者の言葉には出てこない反応を見ている」というものです。パッケージを評価させるときには、あけたときに「わー」と喜んだ顔を見せてくれたら言葉でなにを言おうと成功である、だとか。プロダクトを持ち上げたときにずっしりと重さがあるからこそ高級感を感じてくれてるんだ、であるとか。言語で理解するものではなく感性で理解するものにフォーカスをあてて消費者とブランドの関係を捉えていることがわかります。
考えてみると消費者としての私たちは、理屈ではなく、感性でブランドを評価しています。だから、この扱いが上手になるためには、やはり消費者の感性側のほうを見ていくしか無い、ということになります。
どうやって感性側を扱えるようになるの?
私のマーケティング師匠にこうした感性を扱うブランドの仕事ってどうやってうまくなるの?と尋ねたことがあります。彼の答えは「消費者の感性側を見てクリエイティブを作ってみる→失敗する。みたいなループを繰り返ししかない」というものでした。(本当はもうちょい含蓄のあるセリフでしたけど意訳するとこんな感じ。笑)
たしかに、こうしたスキルはサイエンスではなく、アート領域とも呼べるもので、座学だけで学べるものではないと思います。ですから、行った施策に対する消費者調査はマーケターとしての自分の血肉になるものだと思いますし、多くの消費者フィードバックを受けることはブランド育成につながっていくことになります。
さて、話を戻します。
クリエイティブかっこよくしすぎる問題を止めるのはブランドマーケター側の仕事です。素敵なクリエイターが走り始めてすっごくかっこよいものが出てきた。私たちのお客様はここについてきてくれるのかな?と判断するとき。その判断軸になるのは、どれだけ「消費者の言葉にはでてこない反応をどれだけ見てきたか」になります。日頃消費者調査を見るときはそういう観点で、言葉を追いかけるだけではなくて、その様子や感じ方を見ていくのが大切になります。
バルコニアは戦略とクリエイティブが両方得意な会社なのでこのあたりのテーマ得意です。お困りでしたらぜひご相談くださいませ。