2021.10.11

Z世代がけん引する高級品中古市場(後編)

 前回は中国の高級品市場の拡大予測や、高級品中古市場がどのような年代や都市で盛り上がっているか、どのようなものが売れているかご紹介いたしました。

 今回は中古高級品を買い求める理由やプラットフォーム周りをご紹介いたします。

コストパフォーマンスだけではなく、個性やストーリーを求めている

 中古高級品の消費者は富裕層ではなく主にホワイトカラーで占めています。

 彼らが中古品を扱う理由の一つ目は明快で、コストパフォーマンス問題が非常に大きく影響しています。高級品の新製品は年々価格が上昇しておりY,Z世代の収入では購入が難しいですが、中古高級品であれば手が届き、安価に高品質で好きなアイテムを得ることができます。

 見逃せない二つ目の理由は自分らしさや個性の追求の流れです。Z世代はファッションや香水でも「自分だけの個性」を追い求めており、その流れから人と被らないアンティークや廃版モデルなどへの人気が出ています。

 その一例として、2020年10月レッドカーペット定番スターの鍾楚曦(Zhong Chuxi)がELLE Style Awardsで1950年代のエメラルドグリーンのPhilip Hulitarサテンドレスを着用したことで話題になりました。このドレスは、スタイリストが中古アンティークウェブサイトから1,200ドルで購入した商品だったからです。このような中古商品を晴れ舞台で着用したことは、ヴィンテージ市場を強く支持したと言えます。

 予算が限られているということは別として、新品と中古市場で決定的な値段の差がない中で中古品が選ばれる理由の一つに中古ショップのストーリー性付与価値があります。

 例えば「前のバッグの持ち主がこのバッグを所有してから3ヶ月後、彼女は素晴らしい転職先を見つけ、成功を収めました。 このバッグは幸運をもたらすかもしれません。」といったようなストーリーです。一昔前はそんな話を聞いても感動しなかったかもしれませんが、

 中古市場が受け入れられ、個性を求めている時代にはマッチしています。物の価値を下げる「不完全さ」を「ストーリー性」が補うことで、より完璧に所有欲を満たすことができるのです。

 また限定品や一点もののよさは、興味がなくなった時に「減価償却」して中古高級市場に返却することができる価値の高さです。自分ではかなり背伸びする消費だったとしても、また売ってしまえばいい、と思わせる大きな理由です。

ライブコマース人気もあり、プラットフォームはオンライン主流がさらに加速。3-5年で代理購入は消滅?

 そんな消費者たちはどこでどのように買っているのか?ということも気になるかと思います。もともとEC文化の波が来ていたところにライブコマースの波が到来。さらにコロナ禍になったため、オンラインの伸びはもっと顕著となりました。月間売上15億円を目指すプラットフォームや、約3000万ドル(約33億円)を調達した会社、4-5時間で10万元(180万円)を売り上げる人もいてまさに成長業界と言えます。

 さらに上海ではヴィンテージブームも来ており、オフラインも伸びているのを感じます。

参考:
中国初の中古ブランド品のライブコマースプラットフォーム「妃魚」が資金調
https://36kr.jp/137238/
コロナ禍で“爆売れ”急拡大ライブコマー
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4529/index.html
中古ブランド品こそライブコマースに最適 中国では月間売上高15億円を目指すプラットフォームも
https://36kr.jp/82330/

 またもともとは中国とその他の国でブランド品は30%ほど価格の差がありましたが、現在では15%以下まで下がり、代購業者もあまり利益が出なくなりました。そうした海外で買うメリットが少なくなったこと、国内の中古市場が成長したことが追い風となり、2025年には国内消費が6割を超えると予想されています。

日本中古業者の参入

 3つの日本の中古高級品店「RECLO」、「Brandear」、「BRAND OFF」が天猫国際(越境EC)でショップを開き、日本最大の中古高級品店「KOMEHYO」は北京漢美嘉誠国際文化投資有限公司と戦略的パートナーシップを結び北京に出店、「大黒屋」は上海に完全子会社の設立を発表しています。

 2016年頃からのインバウンド全盛期に、代購だったり個人利用だったりで日本で中古品を購入することが流行していました。その口コミがSNSで拡散され、現 在のコロナ禍でも越境ECで大きく売り上げを上げている店舗もあります。

参考:
日本の中古高級ブランド品が“中国で爆売れ”のワケ 代官山「エディ」のやり方
https://www.wwdjapan.com/articles/1204133

 中国国内の中古高級品市場はまだまだ黎明期ということもあり、鑑定士不足や信用問題が大きく、特にライブコマースなどで衝動的に購入してしまうと保証はどうなのか?など高額商品故に様々な問題があります。こういった中で中古市場で先行している日本の業者が中国のカルチャーで運用できれば、大いにアドバンテージはあることでしょう。

 黎明期とは言え、中国の巨大な中古高級品市場。コロナ禍もまだまだどうなるかわからない中、確実に中国国内市場は伸びることでしょう。

 中国ならではのITの発展×中古高級品市場で新たなサービスが生まれること、また新たな潮流を期待せずにはいられません。

参考:
2021年中国二手
http://qccdata.qichacha.com/ReportData/PDF/78f688e5ba6cd7fe488a1cacbe6da0aa.pdf