2020.11.16

中国のスピードを見習う必要はない

総経理の久保山です。本日は中国のスピードを見習う必要はない、というテーマです。よく中国に住んでいる日本人がSNSなどで発信していることとして「中国のスピードが早い」「日本は遅れている」といった論があるかなと思います。

それ自体は間違っているわけではないのですが、日本人の経営者にそれをつきつけたところでなにが起こるの?という視点でもう一歩深く潜って考える必要があると思っています。日本人のくせを考えると、とにかく急げばいいってこと?ってことは今よりもっと働くってことだよね?!人増やすの?ってなってしまうんじゃないかなぁ、と。

私は中国のスピードを見習う必要はなくて、日本企業らしいスピードの追求をもっと考えるべきだと思っています。このあたりの私なりの解を本日はご紹介します。

中国のスピードの源泉は100点でなくてOKというマインド

まず前提として理解をしなければいけないのは、中国のスピードの源泉がどこにあるか?という点です。こちらの画像を御覧ください。

これは、いわゆる出前にくっついてくるスプーンなんですけど、先端が折れたものが混ざってます。おそらく品質管理そんなにきっちりやっていないんだと思います。品質管理するところにコストと時間をかけるぐらいなら、100個に1個ぐらいミスっててもよくない?という経営方針が出ているように感じます。先端部分が割れてるからもしかしたら手を切ってしまうかも!?みたいな心配はしないわけです。

そう、なにかものすごいスピードで働いているのかというとそういうわけではないんです。基本的に9割の人を満足させてるなら1割は別に捨てておいてもいいじゃん、というマインドがあるし、顧客側もそういうもんだよね、と思ってたりします。

私たちもクリエイティブチームでウェブサイトの制作もあるのですが、中国でデバイスの定義とかそんなに厳密にやらないです。だから、IEとかで見てると動かないサイトめちゃくちゃ多いです。要は100%全員を満足させようと最初から思ってないし、受け手もそれに慣れている、だから、リリースができてしまうということです。
日本企業のラーニングとしては、日本と同じ水準で100%満足させようとしない、ということが挙げられます。努力するべきは中国企業と同じスピードでリリースしていくことではなく、スピードを重視するなら90%の品質でも許容する、という文化の形成です。

とはいえ、日本企業のスピードが遅いのも事実。

しかし、たしかに日本企業の意思決定のスピードが遅いのも事実かなと思います。上海にあるとある日系メーカーの総経理とお話をしていて、ブランドの上市のときに、日本のHQから偽物が出てくるリスクについてどう考えるか説明せよ、と指摘され、2ヶ月リリースが遅くなった話を聞きました。こちらに住んでるとセンスのない話だなぁ、なんて思ってしまいますが、日本に住んでいて中国マーケットを見ていたらわからないのも理解はできます。品質も捨てられない、スピードもあげなきゃいけない、という現地法人代表の苦悩はこうして生まれるわけです。
ここでのラーニングは一定程度の検討の網羅性が確認できないと決められない、というのが日本企業のくせなんだ、ということです。これは中国企業のスピードとは相反するもので、これを追求し続けるとどんどんスピードの遅い日本企業になってしまいます。
チャートにするとこんな感じ。

この右上の領域に進むためには、どうやら「検討の網羅性を早く作る」ことが求められる、ということです。
ここで私のおすすめは「スピードの早い日本企業を見習う」という考え方です。中国企業のスピードは学ぶ点がありますが、日本企業にとってはらしくない戦い方をするということでもあります。それよりはトレードオフを抜け出し早く意思決定する方法を学ぶ必要があります。
スピードの早い日本企業は基本的にスピードを非常に重要視しているので、いかにこのトレードオフを脱却するかって常々考えています。例えば、判断基準が全社共通で明文化されていたり。だから情報を集めることも意思決定をするスピードもあげられるというわけです。こうしたTipsを真似していく、ということです。
もう1点日本企業をベンチマークする理由として、世の中に書籍やSNSでの情報が豊富なので、真似しやすい、ということもあげられるかと思います。
もう少し具体的に言うと、例えば、リクルートさんやサイバーエージェントさん、などは経営者も日本人で、人材を輩出しているので市場にもたくさん卒業生がいらっしゃいますし、文化も世の中に書籍で出回っているから真似しやすいと思います。

まとめ

私の主張をまとめますと、
 ・ 中国企業のスピードの源泉は100点取るよりスピード!という許容の文化
 ・ 日本企業が見習うべきは中国企業ではなく、スピードの早い日本企業
ということになるかなと思います。

今回は中国におけるスピードの話をしました。確かに「スピード」は中国マーケを考える上で一つの重要なキーワードです。私たちもスピードをあげていく日系らしい打ち手を色々と知っているのでお困りの方はぜひお声がけくださいませ。

久保山