2020.03.10

強い勢いに乗っている「ウィークコミュニケーション」

はじめに

「ウィークコミュニケーション」という概念は中国厦門大学の邹教授が研究し提出したものです。理論はあるのにまだ十分に活用されていません。SNSメディア運用者たちはあまり注目しておらず、SNSで「ブームを作る」「宣伝でバズらせる」「コンテンツで勝負する」などの強みでかつ手段で運用がうまくいくと話しています。

ウィークコミュニケーション論でおもしろいのは、世論と現実世界のルールのほとんどが逆転していることです。現実世界の「弱肉強食」は世論では通用せず、むしろ「強肉弱食」を招く可能性が高いのです。私は邹教授の言う「ウィークコミュニケーション」の本質を注意深く整理し、簡単にまとめました。SNSソーシャルメディアの運用者たちに役立てばいいなと思います。

本題

もし私たちが住んでいる現実の世界が「強みの世界」であるとすると、世論の世界は「弱みの世界」になります。

どういうことかというと、現実世界の強者や王は世論の世界に入ると弱者になるということです。反対に、現実の世界にいる弱者は世論の世界では強者や王様となります。

「ウィークコンミュニケーション」の研究対象と主体は「世論及び世論の世界」、すなわち現在のSNS世界であり、SNSで生きていくための鉄則でもあります。

世論=(何らかの対象)フォーカス+フォーカスの集まり

フォーカスとは、ただ見ているだけでなく、発信することでもあります。人々は発信するからフォーカスを強化されるようになり、フォーカスし合うことでみんなにお互いが注目していることを知らせます。したがってマクロの観点から見ると、世論は一種の「何らかの対象に対するフォーカスと発信の集まり」です。そして、フォーカスはさまざまなメディア(または人)を介して伝達され、世論の世界はインタラクティブなコミュニケーションで形成されています。この世界では、「弱肉強食」は「ウィークコンミュニケーション」であり、そのなかには4つの規律があります。

規律1:できるだけ弱く!

現実の世界の強者が発言したい、拡散されたい場合は、弱者に関連つけられるかさらに連携するべきです。次の事例を読めばわかれると思います。

村上春樹はエルサレムの表彰台で「高い壁と卵があれば私はいつも卵の隣に立つ」と言っていたことや、オバマ大統領が頭を下げ、子供に頭をなでさせた写真がSNSで拡散されたことなどがあげられます。

ネット写真

これが規律1の意味です。現実の世界では強者が王ですが、世論の世界では弱者が王です。

世論の世界では、自己評価が低いほど、世論からの評価は高くなる可能性があります。逆に、自己評価が高い(大げさな宣伝)場合、疑いの声はしばしば世論に現れます。評価も理由もなく潰されたりします (これは人々の心理に関係しています)。宮廷ドラマでヒロインは確かに注目されますが、脇役の可哀そうな役の方が視聴者からの共感を得ることができるではないでしょうか。

規律2:理屈ではなく感情で!

世論の世界は「女性」のような存在といわれ、理屈ではなく感情を求めます。

現実の世界では法律や学術などの理屈の高いレベルだろうと思います。しかし、SNSメディアではそれらは伝わりにくく、誰もくだらない法律文とロジックが強い論文を読みたいとは思いません。

世論の世界のみんなは感情と物語の魅力を求めているのです。アメリカのドラマ「BIGBANG THEORY」の主役Sheldonがみんなに気に入られないのはいつも理屈を言っているからです。SNSメディアで「コンテンツで勝負する」でバズる投稿がノーベル賞を得た人が書いた論文であることはありません。それらの共通の規律は「感情に訴えていること」です。人の心は感情喚起されやすいし刺激されやすいのです。それは生まれつきの本能です。国であろうと民族であろうと同じではないでしょうか。

2019年に中国のSNSでは「Peppa Pigってなに?」という広告動画が感情訴求でバズっていました。リポスト数は1千万を越えました。(春節直前に息子と孫をまっているおじいさんが孫にプレゼントを送くるために、アニメの「Peppa Pig」をすごく詳しく調べていました。できる限りの材料を集め手作りで「Peppa Pig」を作ったというストーリーです。ストーリーの起承転結に視聴者は泣いたり笑ったりしました。見ているうちに感情移入して感動するのです。同時に「Peppa Pig」は人々の印象に深く残り、広告の目的も達成しました)

規律3:軽ければ軽いほどシェアしやすい!

物を動かすとき、私たちは軽い物を探して動かすのが好きです。自然界では、植物は軽い花粉を動物や風の力を仮て拡散させ、種子をまき、次の生命に繋げることができます。一方で重くて大きな木の移動は根っこごと抜くことになり、災害とも言えます。

コミュニケーションの中でも「軽い」はより拡散しやすいということです。例えば、世界的に有名な会議で最も話題になるのは、首相の服のブランドと首相の奥さんが持っているバッグです。

ネット写真

規律4:サブキャラこそ主役!

主役は世論の世界では輝かず、何倍も注目されるのはサブキャラです。

人は完璧ではありません。完璧すぎる人は欠点がなく、どうしても好きになれないのです。

「西遊記」の三蔵法師と沙悟浄は主流で文化を訴えている人物です。いい人と気性がないいい人です。結婚には向いていますが恋愛に向いていないでしょう。

孫悟空は気性が大きくて傲慢です。短所も長所も多いです。いつも勇敢で正義感を持っています。長所を知ってから短所を知るとそれが個性に見えるようになるのです。

猪八戒は臆病で怠け者です。長所があまりないですが短所も少ないです。私利私欲で重色軽友でもみんなの話題になるのはなぜでしょうか。「ウィークコンミュニケーション」の中で「ネタが多い」は拡散されやすくなります。猪八戒は孫悟空より「ストーリー」が多いので話題になりやすいのでしょう。

主流の世論が活躍することができず、次主流の世論は活躍することができます。

ファインディング

近年、正統な博物館も上記の規律を取り入れ「弱くて軽い」表現を始めてきました。その結果、世論の世界で気に入られました。

敦煌博物館は自らスタンプとIPを作り出したのでとても新鮮です。

故宮文創が出した「六百年限定」 は化粧業界で勝てる相手はいないのではないでしょうか!

最後に

SNSメディアの運用者たちはチャンスを狙ったり、キャラクターを作ったりし、特定の分野のトップランドを占領したり、運用のやり方を見直したりしています。彼らは自分を突破していかなければならないことを知っています。ソーシャルメディアはこうすればバズるという決まりがあるわけではありません。一気にトップになったり、大量のコメントが寄せられる現象はますます少なくなってきます。「ウィークコンミュニケーション」を意識して弱々に世論の世界の王様になって、SNSという草原に別の模様の花を咲かせましょう。