2020.11.04

中国マーケットのキーワード:「做自己」自分らしく

balconia上海副総経理の川崎です。今回は、中国の消費者を理解する上で大事となる社会的なトレンドのお話です。「自分らしさ」を重視する風潮、これは日本どころかグローバルな動きだと言えますが、中国でも同じくあてはまります。この記事では、中国における「自分らしさ」文脈にスポットをあてていき、そんなトレンドに対してブランドがどう応えていくのが良いか、にも少し触れてみたいと思います。

 

90後世代のキーワード「做自己」

中国において「做自己 zuo zi ji」=「自分らしくあること」は、90後世代(1990年代生まれ世代)の特徴として注目されてきたと言えます。中国において、開放政策後の経済発展の豊かさを享受して育った第一世代である90後は、物質的にある程度満たされた生活の中、大量のモノ・情報に囲まれて育って来ました。生活様式や所有・使用するモノが同質化していく中で、個性に重きを置き、自分らしさを以前の世代より強く求める傾向にあります。彼・彼女らの志向に合わせて、多くのブランドが広告で「做自己」を叫び、TV番組、映画等エンタメの世界でも「做自己」がテーマとなってきました。

※各世代の特徴は下記イメージにまとめていますので参考にしてみてください。

 

三十而已、乘風破浪的姐姐のヒットに見る直近の「自分らしさ」トレンド

2020年の中国では、女性が主役のエンタメが立て続けに社会的ブームを巻き起こしました。ドラマ「三十而已」とリアリティバラエティ「乘风破浪的姐姐」です。前者は、日本で言ういわゆる「アラサー女性」の生き方や苦悩をリアルに描いたドラマで、3人の女性達が社会的な「~であるべき」(妻/女としてこうあるべき、30代になったらこうすべき等)と向き合う姿が強い共感を呼びました。後者は、言い方は悪いですが「ピークを過ぎた」女性芸能人(20~50代)が再起をかけてお互い切磋琢磨し合うもので、「女性は何歳になっても輝ける」というメッセージが大きな反響を得て「お姐さん」ブームを生みました。

このムーブメントも「自分らしい選択をすべし!」という大きなトレンドで捉えることが出来ます。若年層のトレンド、という性格の強かった「自分らしさ」ですが、より広く「ライフスタイル」や「生き方」という文脈に広がって来ていると言えます。まあ、90後がもう30代になっただけ?という見方も出来ますが、社会全体のキーワードになって来たのは確かでしょう。成功のあり方や、家族・女性に対する伝統的な価値観が問い直されて来ています。

 

青春有你2がもたらしたインパクト

では更に若年の層ではどうでしょうか。基本的に「自分らしさ」を重視する路線は変わりませんが、深化しているような印象を受けます。2020年の中国エンタメにおいて、もう1つ大事な番組があります。それは青春有你2という、これまた女性のアイドル発掘オーディション番組です。(詳しくは弊社プロデューサー不破のブログを参照下さい:ハマった!中国のガールズグループオーディション番組「青春有你2」https://www.balconia.cn/blog/youth_with_you.html

ここでは「女性アイドルが可愛くないとダメなんて誰が言ったの?なんで媚びないといけないの?私たちが新しい女性アイドルのあり方を示す」というテーマが打ち出されていました。実際、ジェンダーのテーマに深く触れるような場面もあり、単なるアイドル的人気に留まらず話題となりました。この番組や番組への反響を通して、男らしさ・女らしさといった価値観を見直す、というよりも、葛藤はありつつもこれまでよりも自由に「であるべき論」を飛び越えていくような中国若年世代の姿を見ることが出来ます。

 

「自分らしさ」トレンドを掴む

「自分らしさ」を求める動きの中で、ブランドとして、物的価値に留まらず、情緒的価値を提供していくことが益々重要になってくるのは間違いありません。ただ、ここまで見て来たように、その「自分らしさ」の中身や温度感は世代間で、もっと言うと同じ世代においてもセグメントごとに大きく異なります。より重要なことはターゲットの「自分らしさ」って何?ということを具体的に定義していき、定義された「自分らしさ」に向けた表現を考え、ブランドの価値を伝えていくことだと言えます。

そのためには、残念ながら(?)地道なターゲット理解を積み重ねていくしかありません。私たちがお手伝いする時にも、「彼ら・彼女らの自分らしさって結局何?」というテーマによくぶつかりますが、ターゲットの自宅を訪問して人となりや生活をまるごと観察したり、その人がよく行く(もしくは憧れている)場所にひたすら行ってみたり、彼ら・彼女らが見ている番組やSNSアカウントを片っ端から追ったりして、言葉やビジュアルに落としていきます。通常は戦略チーム、クリエイティブチームが一緒になって解像度を高めていきます。

あと1つ、最近感じることはブランドの「パーパス」に重きを置くマーケティングのグローバル・トレンドは中国でも浸透していくだろう、ということです。正直これまで、中国市場では、「パーパスの前に機能とベネフィット」という風潮がありましたが、上記のような流れの中で潮目が変わっていく、もしくは変わって来ているように感じます。どのブランドも日本国内では「パーパス」を見直すことが多くなって来ていると思いますが、パーパスに関する課題を設定する際には、中国も含めてグローバルで考えてみることが必要になるかもしれません。

 

これらのテーマ、balconiaも目下勉強しながら、知見や経験を蓄積しています。特に中国では色んなブランドさんと実績を重ねて来ました。このようなテーマがありましたら、是非一度お声かけ頂けると嬉しいです。