2021.06.18

中国のデータマーケティングは本当にすごいのか?

 総経理の久保山です。今日のポストはデータマーケティングの話です。中国に足を踏み入れようとすると、中国はデータマーケがすごいとか、データがすべてなんだ!といったお話も聞こえてくるように思います。たしかにデータの力はとても大切で、パワフルなのはそのとおりです。他方でちょっと日本と違う考え方なことも事実なので、そのあたりを今回は解説したいと思います。

 私以前デジタルマーケのエージェンシーにいたこともあり、デジタルも少しだけわかるのですが、データマーケばっかりやってたキャリアではないので、どちらかといえばブランド側の観点で中国でデータをどう活かしていくかお話できたらと思います。

ファネルの違い

 先日インターン生の辻くんに書いてもらったのですけど、まず前提としてファネルが大きく違うというのがあります。日本ではテレビや雑誌などで認知したブランドをyoutubeやアマゾンなどの口コミレビューを見て、最後ブランドオフィシャルECサイトにアクセスして購入する、といったファネルが主流です。この中心はブランドが作ったクリエイティブです。

 一方で、中国は芸能人が使用しているとか、大規模イベントだったりで知って、それをKOL/KOC(インフルエンサーやプロ消費者)でチェックして、ECモールで購入する、といったファネルになります。中心はユーザーが作ったクリエイティブです。

 データマーケの話をするにもここが前提になっています。
詳しくは辻くんのブログを参照してみてくださいね。
中国と日本のファネル構造の違い

データ取得の違い

 続いてデータ取得の違いです。データ取得においては日本ではLPに誘導させたらばそこにアクセスした人をCookieで持っておきリタゲしたり、そうした人をプライベートDMPで属性から拡張してターゲティングを行ったり、あくまでもアクセスした人に対して1stパーティデータを活用してアプローチしていくと思います。

 他方で、中国でのLPとはつまり淘宝や京东といったECモールになります。だから、アクセスデータは3rdパーティデータになります。

1stパーティデータ取得の目的が日本と違う

 さて、それが一体なんの違いを作るか、という点です。日本でマーケティングしてるかたはお気づきかと思いますが、モール側にデータを持っていかれている状況になっているわけで、こちらでデータ取得ができません。それってすごい問題じゃん、と感じられると思うのですが実は短期的にはそんなに問題でもありません。

 アクセス系のデータって考えてみると一番使われるのは広告のオーディエンス拡張とリタゲなのです。それは、淘宝や京东のデータ3rdパーティデータを使って行えてしまいます。例えばWeChatの会話の履歴から日本に旅行に行く人を認識してターゲティングしたり、競合の商品の購買履歴から競合商品購入者へのターゲティングなども実現できてしまいます。むしろ日本で一生懸命プライベートDMP使って実施してることはもっと高い精度でできてしまうわけです。そうなると1stパーティデータをその目的で取得する必要はなくなります。

 また、もう一点ここでファネルが効いてくるのですが、中国ではインフルエンサーマーケティングなど口コミをどう創出するかが非常に重要なファネルの構造です。日本と同じように運用型広告をPDCAで回していく、というやりかたはたしかに大切ですが優先順位は日本と比較すると相対的に低いわけです。であれば1stパーティデータを広げて取得することも優先度が低いということになります。

1stパーティデータはCRMで活用する

 じゃあ1stパーティデータいらないってこと?というとそういうわけではないです。先程の図に戻っていただくと「登録」「購買」のところはデータとして取得できます。ですからWeChatグループみたいなところで新商品の意見を聞いたり、限定のクーポンを出してあげたり。日本でいう共創マーケティングみたいな分野は中国では進んでいたりします。主にCRM目的においては「登録」「購入」してくれたかたのデータ活用は非常に重要です。ただし広告の効果効率を高めていく、という点においては日本とは違うアプローチが必要になるということです。

データマーケティングの潮流

 モール側がデータを持っていることでブランドは割と楽ができるかのように見えるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。モール側がデータを持っているということはモール側が強い立場でアクセスもコントロールできてしまう、ということでもあります。

 だから、ブランド側へのアクセス数を増やすから、もう少し値下げしろ、とか、ライブコマースを活用して売りを増やせ、とか、要求は常にあります。ブランドからするとブランド価値を毀損したり、広告費をかけ続けないとアクセスが稼げないということでもあります。ブランド・エクイティには常に下方圧力がかかっている状況になるわけです。

 そこで、大手ブランドを中心に私域流量(プライベートトラフィック)として、モールではなく自社のECやオウンドメディアで1stパーティデータを溜め込み、そこでマーケティングを行おうという大きな流れはあります。淘宝、京东にデータを牛耳られることで身動きが取れなくなる側面もあるわけです。

まとめ

 というわけで、データマーケティングのことを総論として解説しました。各論としては色々違う点もあるのですが、ざっくりこの構造を理解しておけば作戦は立てやすいかと思います。このあたりはTPさんや口コミ分析やってる会社さんも得意な分野ですが、私たちはブランド側からするとどこにコストかけるべき?みたいなテーマは強い会社だと思います。 このあたりお困りでしたらぜひご相談くださいませ。