ブランド・カルチャライズに必要な3つの「透」
みなさん、こんにちは。クリエイティブ担当のAsaです。
前回の記事「郷に入っては郷に従え」では、「ブランド・カルチャライズの重要性」についてご紹介しました。グローバルに展開するブランドにとって、カルチャライズは極めて重要です。では、具体的にはどうしたらよいか、少し長くなりますが、いくつの事例を交えてご紹介したいと思います。キーワードは3つの「透」です。
摸透(掴んで、見透す)
全体像を掴み、心を見透します。
ブランドが新しい市場へ参入することは恋人探しと似ているところがあります。好きな相手に受け入れてもらうには、まず、相手の全てをとらえなければなりません。相手の家庭環境、育ち、経歴や嗜好など、勿論、ライバルがいるかどうも知っておく必要がありますね。これらを最低限知っておかないと、相手の心をゲットできないでしょう。同様に、ブラントにも同じことが言えると思います。
まずは対象となるターゲットユーザーを探すところから始まります。ブランドにとって「相手の全体像」とは、市場環境やトレンドであり、ライバルを知るとはつまり、競合ブランドを把握することです。「彼を知り己を知れば百戦殆からず」という諺にもあるように、相手を知ることが勝利への第一歩です。
新しいブランドが海外市場に展開する際に、正確な情報を入手することは不可欠です。噂レベルの情報に振り回されるのは危険です。自ら現地に行くことも必要ですし、ターゲットとなる消費者にインタビューすることも重要となってきます。
消費者インタビューを実施せず、2次データや情報を参照するだけでは、「お見合い」が失敗する可能性が高く、すれ違いで終わってしまうかもしれません。また、インタビューも「お見合い後のデート」のようなもので、顔を合わせてコミュニケーションを取りたくさん話を聞くほど、相手がどんどん分かってくるでしょう。相手の全体像を捉えることができれば、相手の心を掴むことができるでしょう。ポイントは摸透(掴んで、見透す)です。
このステップで重要になる具体的な手法は以下の通りです:
マーケティングリサーチ
→ 市場環境分析
→ ターゲットインサイト把握調査
→ プロダクト/プロダクト受容性調査
悟透(考察し、見透す)
次のアクションは、「悟」、つまり考え抜くことです。何を考えるのか、もちろん、それは相手をどう口説いてゲットするかです。市場環境、ターゲット、プロダクト受容度など、ある程度の状況を把握した後、これらの情報をベースに布石を敷いていきます。あらゆる面から戦略を考えた上で、ブランド・ストラテジーに落とし込んでいきますが、そこで注意すべき点は、どんなに好きな相手が好きだろうと、自分自身を見失ってはならない、ということです。どんなに熱くなっていたカップルでも、時間の経過とともに気持ちが徐々に離れていくケースは多いでしょう。ブランドにおいても同じことが言えます。新しいブランドが市場で注目を集めるには、まずはブランド自身の「ブランド・エクイティ」(ブランドの資産)を定め、ブランドの魅力を一貫性を持って伝えていく必要があります。その際にも、ターゲット市場や消費者に受け入れられる形で伝えていくことが重要です。
ゲームを例に考えましょう。いかにストーリーが魅力的であろうと、そこに登場する組織団体や文化、習慣がターゲットの共感を得ることができなければ、ネガティブなイメージを持たれてしまうかもしれません。その場合、ブランド・カルチャライズの対応が必須となります。ネガティブに捉えられる組織団体を他の団体や組織にリネームする等、本来のストーリーの面白さをキープしながら様々な工夫をすることによってユーザーから高い評価を得られるでしょう。現地の文化を取り入れることで受容性が高まる可能性も大いにあります。
具体的なブランディング手法は以下の通りです:
・ブランド戦略の策定
→ マーケット・ポジショニング
→ ターゲット戦略
→ ブランドエクイティ・カルチャライズ
→ クリエイティブ戦略
浸透(伝えて、浸透させる)
最後のステップは「浸透」です。これは最も難しい部分でもあり、肝心な一歩です。ここで成功してはじめて、相手の心を引き寄せることでき、気づけば相手はいつもそばにいてくれるようになります。まさに恋愛を成功させるコツですね。
浸透するには時間を要します。急な達成は困難です。ブランドの市場参入段階から、ブランド戦略に沿って戦術を実行し、ターゲット獲得を狙っていきます。相手に喜んでもらうには、薔薇の花束を贈るか、高級レストランで豪華ディナーにするか、サプライズを準備するのか・・・どんなテクニックでアプローチするかの見極めが肝心です。「戦略なくして戦術なし、戦術なくして戦略なし」と言われるように、効果的な戦術には戦略との一致性が重要です。ブランドを拡張、浸透させるための戦略・戦術を策定する際には、最初のステップ:摸透(掴んで、見透す)で得られたファクトをベースに、ターゲットとなる消費者に合うようクリエイティブの方向性を定め、施策を企画し、効果の最大化を図ります。
・コミュニケーション戦略・施策案の策定
→プロモーション戦略
→メディア戦略
最後に
愛することも愛されることも容易ではありません。馴染みのない人に強引に受け入れもらうのと同じように、市場の構造やターゲット顧客に対して十分な理解をしないままの状態で市場に参入して、失敗するケースは少なくありません。新しい市場で成功したいがどう環境に馴染めば良いか分からない、そんな悩みを抱えるブランドの皆さまと寄り添い、多くのユーザーに愛されるブランドを作っていく。これこそが、ブランディング・コンサルである私たちbalconiaの使命です。
Asa