2022.07.22

非クリエイターのクリエイティブへのかかわり方

balconia上海副総経理の川崎です。今回は非クリエイターのクリエイティブへの関わり方について書いてみます。事業会社にいらっしゃると、専門ではないけれどクリエイティブまわりのお仕事に関わる機会が出て来て何をどうして良いか分からない…ということも少なくないと思います。そんな時に参考になれば幸いです。

非クリエイターは口出しできない?

私はずっとリサーチを中心にしたマーケティング支援をしてきており、専門的なクリエイティブのバックグランドはありません。

もちろん、全く無縁とは言えません。前職リサーチ会社時代には、クリエイティブ素材の検証調査や制作にむけた調査も相当な数を担当していたので、世に出ることがなかったものも含めて無数のコンセプト、コピー、パッケージ、広告などに触れてきました。

また、個人的に興味は持っていたのでクリエイティブ関連のセミナーに参加したりと、自分なりに情報には触れるようにしていました。

それでも自分でデザインすることは出来ませんし、専門知識も十分とは言えません。

そんな私が、クリエイティブチームを抱えるブランドコンサルである当社バルコニアに転職し、正直当初はマーケティング戦略まわり以外で自分は何か役立てるのだろうかと考えていました。

ただ、実際にはこれまでバルコニアで色んなプロジェクトに関わり、クリエイティブ関連のお仕事に入ることも少なくありません。その中で、非クリエイターなりに持ち込める視点もあると考えるようになりました。

マーケティングと同様、クリエイティブでもWho,What,Howつまり誰に、何を、どのように伝えるかという戦略をベースに進んでいきます。

そのうちHowに関してはクリエイティブのアイデア、知見、専門性が求められる領域であり、戦略チームがその部分にタッチすることはほとんどありません。

誰の視点でレビューをするか

では、普段どんな視点でクリエイティブに接しているのかですが、2つあります。
※念のためですが、以下の2つの視点はクリエイターの方も当然持ち合わせているもので、優秀なクリエイター程、強く意識されているものです。あくまでも、チームとして働く場合に非クリエイターが発揮できる価値、という意味で書いています。

①ブランド(戦略)視点でのレビュー

1つは当然ながら「ブランドとしてどうなのか?」という視点です。ブランドには、蓄積していきたいエクイティセットがあり、守るべきアイデンティティがあります。更に、それぞれの商品やプロモーションごとに伝えたいメッセージのテーマが設定されます。

クリエイティブがそれらとマッチするものなのか、ズレていないのかを戦略的な視点でレビューすることで、美しい/面白いけど企画としては成立していない、ということを避けることが出来ます。

制作が進むとどうしても、細部の作り込みの話や、技術的なフィージビリティの観点での議論が多くなります。それがクオリティを担保するために非常に重要なわけですが、場合によっては、どうしても視野が狭くなってしまうことも起こってしまいます。

そういった場面で、あくまでもブランドの立場で成立しているのかをチェックする機能をチームに持たせることは重要だと考えています。

このブランド(戦略)視点は、先ほどのWho,What,Howでいうと、What=何を伝えるか、の視点と言えるかもしれません。ブランドとして伝えたい、伝えるべき価値やメッセージに沿っているのかを確認していきます。

ターゲット視点でのレビュー

もう1つ、そしてこれこそが戦略チームが持ち込める視点で肝になるものだと考えていますが、それはターゲットの視点です。先ほどの中でのWhoにあたる部分と言えるでしょう。

美しいクリエイティブも、面白いものも、その主語はターゲットでなければ、マーケティングにおいて価値は発揮されません。つまり、「ターゲットが」美しいと思うクリエイティブ、「ターゲットが」面白いと思うクリエイティブが必要なわけです。

制作に際し、最初に企画する際には、必ずターゲットが意識されるはずですが、その際のターゲットの解像度をいかに高められるかが、クリエイティブと並走する戦略チームとして大きなミッションとなります。

制作が進む中でも、上記で述べた通りどうしてもターゲットが誰だったかの意識が薄れてくる場合があります。場合によっては、クリエイターの思いやこだわりの強さが、ターゲットの向かうベクトルとは違う方向に向かうことも起こりえます。

実際に、プロジェクトにおいて、制作過程で戦略チームからフィードバックすることも少なくありません。例えば、以前、クールでカッコいいイメージを目指したクリエイティブを制作している時、クリエイティブチームはドラフト案から、どんどんクールでスタイリッシュに、カッコ良く仕上げていったのですが、ターゲットから考えるとそれ以上いくと「もう自分に向けたものではない」と感じられるおそれがありました。私が把握している限り、ターゲットにとってはドラフト案の時点でもうダサいとは感じられないものでした。そこから、ターゲットにとってのダサいイメージ/かっこいいイメージを改めて見直すことになりました。

もちろん、これは「ターゲットみんながOKと言うような迎合したデザインを目指せ」と言っているわけではありません。ターゲットに刺さるクリエイティブには、いわゆるクリエイティブ・ジャンプが必要だと思いますし、逆にターゲットの意識の方を変えていく試みも、それが戦略的な判断なのであれば積極的にしていくべきだと思います。

ただ、異なる専門性を持った多くの人が関わるクリエイティブの現場で、一貫してターゲットの視点が高度に維持されていくことは案外難しいことだと感じています。その意味で、制作のこと、つまりHowには触れていない戦略チームだからこそ出来るインプットやフィードバックもあると考えています。

さて、以上書いてきたわけですが、多くの人にとっては「んなこと、わかってるわ!」という当たり前の内容になってしまったかもしれません・・・。

バルコニアは戦略チームとクリエイティブチームが日々タッグを組んでプロジェクトを進めていますが、上記とは逆にクリエイティブチームから戦略に対して非常に有用なインプットを受けることがたくさんあります。

同じ消費者インタビューを聞いていても、全然違う角度からターゲットを捉えていて、それが深いターゲット理解につながることもありますし、コピーワークから戦略がクリアになっていくことは少なくありません。

戦略スタッフ、クリエイティブスタッフが専門性を持ってお互いの領域を尊重しつつ、違う視点を持ち込むことでより良いアウトプットを目指していくことが出来ると信じています。