2022.12.02

年に一度の「ゴールデンブランド」特集
ブランド・ガバナンスに変化が見られたのはどのブランドか?

今回のデータは、第一財経マガジンの「ゴールデンブランド大調査」によるものです。端的に言えば、さまざまなブランドに対する消費者の好感度ランキングです。このランキングはブランド規模や価格等の要素を一切考慮せず、好感度のみに注目したものであるため、客観的な主観リサーチ研究だといえます。今年度は合計59のカテゴリーがありましたが、その中から3つをピックアップして一緒に見ていきたいと思います。3つのカテゴリーはそれぞれ車、炭酸飲料、フレグランスです。

1、車

車のランキングで、上位にランクインしているブランドは比較的安定しており、トップ5は皆さんお馴染みのフォルクスワーゲン、トヨタ、ホンダ、ビュイックなどがあります。しかし、今回は大きな変化が見られました、それは中国ブランドBYD(中国EV最大手)が初登場したことです。2022年、特に下半期のおけるBYDのパフォーマンスが市場で大反響しました。自己ベストとの比較では、昨年の販売数は倍以上急増しています。競争他社と比較しても、2022年上半期はテスラを抜いで世界で販売台数が最も多い新エネルギー車ブランドとなりました。販売車種にはEV車もあればプラグインハイブリッドもあり、この点ではテスラより優位性を持っていると言えるでしょう。BYDの販売業績は確かなものです。週末に自動車販売店を覗いていただければお分かりいただけるかと思いますが、販売員たちは丁寧に車種紹介をする暇もないくらい大忙しです。多くの新車購入客が並んでおり、人気爆発の光景は一目瞭然です。新車市場だけでなく、好業績のためBYDの株も高騰しています。BYDの市場価値は一時期テスラとトヨタの次に並ぶ世界トップ3にまで上昇しました。BYDがこれだけ好業績を収めたのは、市場トレンド及び消費者マインドの変化、そしてBYDの努力が欠かせません。

2017年、BYDは元アウディのデザインディレクターを招き、車の外観デザインを少しずつ改善してきました。大物を雇うだけでなく、大物とデザインチームに十分な権限を与えたことも大きなアクションでした。デザインを技術と同じくらい重要なポジションに配置し、ブランド内部では「ダブル駆動」と呼ばれていました。この他、BYDの強みとして電気亜鉛を自社で生産しているため、安定的な供給が可能です。急成長している業界において、生産能力が保持されることは極めて重要なのです。

2、炭酸飲料

4年前なら、このカテゴリーのトップ2を占めているのはいつもコカコーラとペプシーで、何の懸念もありません。コカコーラのブランドガバナンス力はペプシよりも一段と優れているようです。面白いのは「元気森林」の出現に伴い、2020年のブランドランキングでコカコーラはトップの座から降りました。ところが、残念ながら「元気森林」は今年のランキングのビリとなったことも予想外でした。

では、なぜ「元気森林」の順位がこんなにも悲惨な結果となったのでしょうか。リサーチ研究データを読み解いでみたところ、「味、マーケティング、コスパ」の3点において問題が見受けられます。

1、味: 元気森林が売りにしていた2つの特徴は砂糖の代わりとなる甘味料の使用とフルーツフレーバーでしたが、両方とも化学調味料の味、即ち食品添加物の味がするという問題を抱えており、未だ解決が難しいようです。

2、マーケティング: 当初、「元気森林」は名前からして日系ブランドだと思わせましたが、真実を知った消費者はお怒りのようでした。

3、コスパ: 「元気森林」の販売価格はRMB 5元ですが、ここは大変競争が激しい価格帯です。

また、ランキングからノンシュガー飲料の好感度が上昇していることが見て取れます。

3、フレグランス

このカテゴリーは今年新しく増設されたもので、過去データとの比較はありませんが、カテゴリー自体は以前から存在しており、特にヨーロッパ市場では伝統的なカテゴリーであります。今回の上位ランキングトップ5はそれぞれ: Jo Malone(ジョーマローン)、Diptyque(ディプティック)、CHANEL(シャネル)、BVLGARI(ブルガリ)、MaisonMargiela(メゾンマルジェラ)、全て欧州のブランドです。

このカテゴリーを注目したのは、ここ数年国内外においてコロナ禍の影響を大きく受けていたため、気分転換や自分自身を楽しむといったニーズから新しいカテゴリーが新規増設され、インテリア関連は以前よりも増えました。

このような背景は欧州の国際的な伝統ブランドに有利なだけでなく、中国のベンチャー企業にとっても大きなチャンスなのです。中国の強大なEC環境と潤沢な資金を持っているベンチャー企業の相乗効果によって消費トレンドを巻き起こせるでしょう。また、中国のOEMは成熟しており、利益率も高く、持続的な市場成長が期待できるでしょう。一方で、技術面においてハードルが高い調香の工程やブランド認知度といった難問もあります。

1.調香のコアは、香料メーカーがブランドのために香りタイプを開発し、生産するというポイントです。これはサプライチェーンにおいて重要な工程であり、現在、世界のトップ10の香料メーカーが全世界の市場をカバーしている状態であります。トップに立つのは「ジボタン」というブランドで、全世界の1/4の市場シェアを占めており、市場集中度が高いことが伺えます。フレグランス企業では、調香師を大変重要視しています。時間をかけて人材育成を行わなければなりませんし、香料の特徴やナチュラルな香りとの差異を熟知した上、調香やレシピの言語化、ストーリーテーリングまでのスキルを要します。これには長年の経験の積み重ねと豊富な想像力が必要とされます。

2.ブランド認知度。シャネルのようなトップクラスブランドは香料メーカーと長年業務提携しており、自社の調香師まで育てているため、新商品ローンチまで時間がかかるかもしれませんが、ハズレはまずないでしょう。一方で、ベンチャー企業の場合、速戦力をいかし、限られた時間で差異化していかなければなりません。また、多くの消費者がこのカテゴリーの商品を選ぶ際、まず試してから本購入するかどうかを決めるという特徴があるため、オフラインでの消費体験がとても重要になってきます。この点において、大手ブランドは優位性を持っています。例えば、つい最近では、Maison Margiela(メゾンマルジェラ)が上海で大型店を出店しました。定番商品のほか、コーヒーや香水なども販売しています。

今回は上述3つのカテゴリーについてご紹介いたしました。中国市場のブランドトレンドについてもっと知りたいという方、ぜひご連絡をください。お待ちしております。