2023.01.06

2022年中国マーケティングのまとめと23年の展望

 バルコニア総経理の久保山です。本日は2023年第1回目の記事ということで2022年の振り返り、2023年に向けて注目していることを整理してみたいと思います。2022年はゼロコロナ政策やデモ、年末にかけて一気にウィズコロナへ、とかなり激動の1年になりました。マーケティングはやりにくい環境が続き、各ブランド苦戦を強いられるケースが多かったように思います。
 とはいっても、下を向いてばかりもいられないので、23年に向けて一度足元の状況を確認できたらと思います。私自身頭の整理の意味も込めて書いてみました。よかったら読んでみてください。

盲目的な消費傾向は一巡。古くから愛される王道ブランドへの回帰が進む。

 やはり2022年中国を語る上で避けて通れないのはゼロコロナ政策だと思います。政策の良し悪しについての言及は避けますが、マーケティング観点でも大きな影響を及ぼす事件でした。
 特に3月のロックダウンでは、企業の倒産も相次ぎましたし、銀行の法人口座から物理的にキャッシュを移転できなくて、給与が支払われないということもありました。また、特に中国は営業職を中心に給与が歩合制で支払われるケースも多く、こうした職種では可処分所得に直接的な減額圧力がかかりました。
 中国人は消費意欲が旺盛というのはなんとなく感覚として持っているかたも多いと思います。その背景には継続的に経済成長をしてきて、持っている不動産も安定して投資回収していけましたし、いずれ自分の給与もあがっていくであろう安心感がありました。フロー、ストック両側面で家計が安定するからこそ、新しい消費にも積極的だったのですが、少しここにきて消費のありかたを見直すような動きが見られました。ブランドとしては、新しいブランドというよりは、これまでに有名だった王道ブランドへの回帰が進みました。

プラットフォームが分散。複数チャネルの管理が求められる。

 プラットフォームに対する規制も進んだのが2022年だと思います。大手プラットフォームに対しては政府から独占禁止法の指摘が入り、自社プラットフォームへの囲い込みを行わないような規制が入りました。このことで各社派手な方法を使って自社プラットフォームへの囲い込みをしなくなりました。
 具体的に言えば、アリババの天猫では、競合となるJDにブランドが出店をするのを止める、といったことはNGになりましたし、テンセントが持つ最も大きなメッセージングアプリのWeChatから別のネット大手企業へのサービスリンクも設定できるようになりました。

 淘宝網やJDといったこれまでのモールに加えて、tiktokも相当伸びました。独禁法の影響で消費者接点のプラットフォームが広がったこともありますが、消費者側の大きなトレンドとしても、短尺ムービーのプラットフォームが伸びているといったこともあると思います。
 このため、ブランドとしても分散するプラットフォームに対応していく必要が出てきました。共通顧客データベースを作ってみたり、CRMの仕組みを作るなど、分散したからこそ重要性が高まってきたところがあります。

インフルエンサーの規制。爆発的なニュースを演出しにくい環境へ。

 インフルエンサー経済の極端な成長に対する規制も強まりました。これは中国政府主導での規制で、行き過ぎた影響力に対する牽制的な意味合いなのですが、プラットフォーム側もこれに呼応する形で、インフルエンサーのポストが一気に伸びないような調整が入りました。当社が実際に行ったプロモーションの中でも、REDを使ったプロモーションでこれまでであればリーチするであろう人数が2分の1から3分の1になったような体感値でした。
 また、ライブコマースでは税務摘発からトップライバーの配信も下火になりました。22年11月のダブルイレブンでは李佳琦(1日で400億円売り上げるというトップライバーです)が復帰したことでやはり彼のおすすめの影響力は相変わらず強いことは証明されたのですが、それにしても過去のライブコマース頼みの施策だけだと難しいフェイズには入ってきました。
 とはいえ、そもそも、アドフラウド(広告の不正、BOTを使ったリーチ数の水増しなど)が深刻な環境ではあるので、リーチ数をKPIに組み立てることが良いのかというのは広告界隈でもこれまでにもなされてきた議論です。そのKOL施策がきちんと売上に結びついているのか、別の視点からKPIを組み立てることがより重要になりました。

中国国産ブランドの成長。日本ブランドというだけでは戦えない。

 これは2022年というより、ここ数年にわたる大きなトレンドになりますが、中国ブランドの成長が続いています。中国のものづくりの品質がよくなったこともあり、家電などではXiaomiやHuaweiのほうが海外ブランドよりも良いという価値観は以前から広がっていました。
 ファッションの分野では国潮(グオチャオ)と言って、中国国産の伝統的な模様やデザインを取り入れたものが伸びていました。こうしたトレンドに対して中国人にインタビューすると、単純にデザインがおしゃれ、といったことだけでなく、中国への愛国心や、ようやく成長してきて自分の国のブランドを慈しむことができるようになった、といった価値観から愛されている様子も見て取れました。
 22年もこのトレンドは続いていて化粧品などの分野でもメイク品を中心に面白い剤形の商品やトレンドにあった商品を次々に上市して広がってきていたのですが、より品質が求められるスキンケア分野においても中国ブランドが成長しています。また、肌や食べ物など、体に直接的に影響を与えるような、品質が求められる商材においても中国ブランドが成長しています。
 これは、日本ブランドの好意度が下がった、というわけではなく、日本のブランドは変わらず品質への期待値は高いのですが、相対的に存在感が薄くなった、というような見方が現実に近いかなと思います。
 日本ブランドは弱くなっていると落胆しすぎる必要もありません。日本ブランドという特徴だけでは戦っていけないよ、というのはもちろんそのとおりなのですが、日本ブランドという資産が全くなくなったというわけではないからです。ただし、日本ブランドということに加え、日本から来たどういうところに優れたブランドなのか、それはなぜ日本ブランドだから成し遂げられるのか、という日本資産をうまく活かせる戦略でブランド育成することが求められます。

23年の展望。

 というわけで、22年はどちらかといえば日本ブランド、かつ新しく中国で勝負しようとするブランドにとってはネガティブなニュースが多かったように思います。
 しかしながら、23年は22年よりは明るいはずです。少しずつ日本への旅行客も回復していくと思います。
 ここ数年旅行客が全くなくなってしまって、日本での売上が落ちた会社は多かったです。インバウンドがなくなった当初は、売上の影響ばかりを考えていたものの、実は日本ブランドへの認知にも大きく影響していました。
 日本でマツキヨ、ドン・キホーテに立ち寄ったときになんとなく手にとったブランド、買ってみたブランドは、中国においてノープロモーションでも知ってもらう機会を作ることができていました。ここ数年日本に旅行することができなくなったことで、こうした自然発生的な口コミで中国においてもプレゼンスを発揮していたブランドが徐々に認知を落としていくのを見てきました。
 逆に言うと、今後日本旅行が回復してくると、自然と日本ブランドを知る機会は増えてくるはずで、これは中国本土での売上にも影響を与えると思います。23年開始当初はまだまだ流動的な状況が続くと思いますが、うまく流れを活かしてブランド育成できるチャンスはでてくると思います。
 ここに書いているような大きな22年の流れをどう乗り越えていくのか?今後やってくるインバウンドの旅行客とどうコミュニケーションしていくのか?といったテーマは、私たちも積極的に取り組んでいこうと思っています。今年も全力で支援していこうと思いますのでなにかご一緒できることがあればお声がけくださいませ。
 2023年もよろしくお願いいたします。