2023.03.20

この冬バズった「围炉煮茶」のご紹介

画像出典:インターネット

2022年の秋から冬にかけて、SNS上で「围炉煮茶」を楽しむ若者の投稿が急増しました。友人と七輪を囲みながらお茶を煮出し、栗や柿、餅、落花生、さつまいもなども一緒に焼いて楽しむひと時は、ナチュラルな生活感と優雅さを併せ持つ、平凡で静かなリラックスした空間を演出してくれます。さらに、七輪を囲んでSNS映えする写真の撮り方からライティングや食材の攻略まで話題を展開しています。キャンプ、サーフスケート、フリスビー、スキーなどに続き、「围炉煮茶」は若者の間で人気ある生活スタイルの一つとなりました。2月時点、レッドブックで「围炉煮茶」に関連するする記事数は74万件以上あり、TikTokで関連テーマの動画再生回数は47.4億回に達しました。

若者たちの趣味がスタートアップ企業の新たなチャンスとなり、鋭いビジネスセンスを持つ商売人たちはすばやく「围炉煮茶」のセットサービスを押し出しました。「大众点评」のデータによると、昨年11月以来、全国で「围炉煮茶」のキーワード検索数は同期比11.7倍増加し、成都、上海、杭州、苏州、长沙などの都市では特にオンラインストアでの人気が高く、そしてブームの波はやがて北京に到来しました。「大众点评」の北京エリアで1000以上もの店舗が同サービスを提供しているそうです。「围炉煮茶」の産業チェーンが構成されると、上流で七輪や茶具を生産する業者の売り上げも倍増しています。

爆発的な人気を誇る「围炉煮茶」は、消費者が望んでいる自由な社交、生活感溢れるスタイルにピッタリだといえるでしょう。社長さんたちは「コロナ開放後、皆のお出かけ願望が強く、寒い冬の間は特に温まるものが必要です。温かい雰囲気に包まれ、生活感溢れる围炉煮茶は仲間と集まってお茶を飲みながらおしゃべりできるので、みんなの期待を満たしてくれるものです。」と話していました。また、スタイルや形式、コンテンツ、どれを取っても、「围炉煮茶」は現代人の心理的ニーズにマッチしていると思われます。形式に関していうと、非常に優雅で且つ禅の要素も含まれているため、アフターコロナにおける人々の心身の癒し、煩雑さから遠ざけたいという期待に応えています。コンテンツ的にも、レトロで昔懐かしのさまざまな要素が統合されたビジュアルは刺激的でパンチが効いています。そして、七輪というスタイルを通して、お茶やお菓子を焼きながら、思う存分リラックスできるだけでなく、個性的な社交も楽しめます。

ところが、そんな「围炉煮茶」は登場とともにさまざまな質疑に直面していました。消費者から最もクレームが多かったのはその価格の高さです。無知の対価として、自分たちがカモにされたのではないかという疑いの眼差しが向けられました。北京にある6000平米の温室キャンプ地で提供されている「围炉煮茶」の価格はお一人様298元で、予約は最低4名から、利用可能な時間帯は午後1時〜5時に制限されるなど、ハードルの高いものになっています。しかも298元のセットメニューに含まれるのはお茶とピーナッツ、ナツメ、栗、龍眼(フルーツ)、みかん数個だけです。

やがて、客単価を上げるため、「围炉煮茶」サービスを提供する店側はセットメニューの中身に力を入れるようになりました。さまざまなシーンや環境、設備、お茶や菓子類、カメラ機能などにおいて激しい競争が行われ、プレミアムサービスを拡大しようとしました。一部のキャンプ地では、「围炉煮茶」スタンダートメニューに加え、牛肉ステーキや羊肉ステーキ、海鮮を提供するなど、アップグレード後の価格をお一人様498元にまで上げました。このほか、漢服で楽しむ没入型サービスの提供を通して客単価を上げている店もあります。

若者に人気の「围炉煮茶」、その本質は外見至上主義、ネットで人気、自己満足といった若者の「感情的な価値を提供してくれるものにお金を払う」という消費習慣に合致するものであるといえます。業界に関していえば、「围炉煮茶」は短期間においてお茶の周辺商品の販売促進、オフラインビジネスの復活、伝統茶文化を広めるといった効果が期待できます。しかし、そのライフサイクルは非常に短く、中産階級に人気の「スキー」のような季節限定型レジャーです。気温が上昇するにつれ、七輪はすぐに「英雄も腕を振るう場所なし」となってしまい、サービスの提供期間はほんの2、3ヶ月で終わるため、市場規模の形成は厳しいでしょう。とはいえ、「围炉煮茶」はお茶そのものを突破し、更なる可能性を見出すことができれば、七輪ミルクティー、七輪酒、七輪焼肉など、新しい現象が生まれるかもしれません。

画像出典:レッドブック

実は、「围炉煮茶」の人気が最も爆発した頃、私もソーシャルプラットフォームにアップされた動画や写真に購買意欲を掻き立てられ、もう少しで電子七輪をオーダーして自宅で没入体験をするところでした。SNS映えする写真の構図からグッズのセットアップまで目に浮かんでいましたが、コスパが悪く結局諦めてしまいました。一時的な流行は短期間で消え去っていきますが、私たちの生活に活力と活気をもたらしてくれます、そんな新潮流をとても楽しみにしています。