2023.05.15

今最も注目されている「中国TCG市場」――80年代生まれからZ世代まで、幅広い世代がハマるわけ

皆さん、こんにちは。今回は中国で急速に成長している分野―― TCGについてお話したいと思います。

TCGという言葉をあまり耳にしたことがない、何だろうと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、カードやコレクショントレーディングカードでしたら、馴染み深いのではないでしょうか。TCGとはTrading card gameの略で、主な遊び方はトレーディングカードの収集と交換です。

Global Info Researchの調査データによると、2021年トレーディングカードゲームの世界収益は約9.8億ドルで、2028年には13.6億ドルに達すると予想されています。Frost & Sullivanがまとめた市場調査レポートでも中国のトレーディングカード市場の可能性を予測しています。専門家は、中国のトレーディングカード市場は今後3年間で300億元を超えると予想しており、さらに大きな上昇余地があると予測しています。

では、なぜ今日の中国TCG市場はこれほどまでに大きく発展してきたのでしょうか?

収集癖は人間の根底に潜む本能

元をたどれば、人はなぜ収集することに喜びを感じるのでしょうか。人類は農耕が始まる前から、長い間、生き残るために狩猟採集を通じて食物を確保してきたと言われています。その結果、脳には採集した後に喜びを得るというメカニズムが生み出され、生き残るために採集し続けるようになったそうです。従って、収集することは私たち一人ひとりの遺伝子に刻まれている、人間の最も原始的な本能であるはずです。

また、農業大国である中国は土と共生する本能から米や食料を備蓄し、十分な食糧を備蓄しておけば安心感を得られるという考え方が古くから根付いています。

人類が進化してきた今でも、中国人は他国の人よりもコレクションに夢中になりやすいと言われています。近年、特に文化創造的な分野において、Z世代にとってガチャガチャやブラインドボックスなどといった「潮玩」はエンターテイメントの主流となっているのです。

コレクションは情熱でもある

「闲鱼(中国のフリマサイト)」で、昔のリトルアライグマカードが2万元(約40万円)で売られている

中国で最も早く、最も繁盛したトレーディングカードといえば、1990年代のリトルアライグマの水滸伝英雄カードまで遡ることができます。当時は、たぬきのスナックを1パック購入すると、ランダムで商品に同梱されていた水滸伝108のトレーディングカードが1枚もらえました。

あれは非常に成功したマーケティングキャンペーンだったと言えます。80年代と90年代に生まれ、トレーディングカードを集めることに夢中だった人々の熱意が、Little Raccoon Crispy Noodlesの奇跡的な販売を成功させました。青少年たちはそれにどれだけ小遣いを注ぎ込んでいたことでしょう。また、リトルアライグマヌードルのパッケージに印刷されたレッサーパンダのマンガイメージが人々の心に深く根付いているため、80年代と90年代に生まれたほとんどの人は、今だに小さなアライグマと赤いパンダの違いを見分けることができないと揶揄されているくらいです。

今日でも、闲鱼 (中国のフリマサイト) でリトルアライグマの水滸伝英雄トレーディングカードを高い価格で買い取るというような情報がたくさん掲示されています。大人になった80年代や90年代生まれにとって、トレーディングカードを集めることは趣味だけでなく、情熱でもあります。

その後、日本の有名なIPである、ポケモンや遊戯王をテーマにしたトレーディングカードも中国市場に参入してきましたが、トレーディングカード市場は水面下だけでまだまだ未熟でした。そして、消費のアップグレードとブラインドボックスなどの潮玩ブームに伴い、トレーディングカードの消費は爆発的な時期を迎えました。

80年代や90年代生まれにとって、トレーディングカードコレクションは子供時代の思い出の延長線だと理解すれば、Z世代のコレクションにはもっと奥深く、深い意味を持っているかもしれません。

Z世代のトレーディングカードコレクションと社交

近年の文化創造的なブームの高まりにより、ブラインドボックスはZ世代のコレクションブームの焦点になっています。しかし、ブラインドボックスに比べてトレーディングカードはサイズが小さいだけでなく、購入しやすくて集めやすい、簡単に交換できるし持ち運びやすいなどといった特徴が注目を集めています。

トレーディングカードの最大の特徴といえば、集めるという機能に加えて、ゲーム機能を併せ持っているところです。トレーディングカードゲームのソーシャル機能を通じて同じ趣味を持つ人同士がつながり、集まり、そして他のサークルにどんどん広がっていきます。

トレーディングカード各社はカードゲームのルール作りをしたり、コンテストを開催したりしています。実店舗にて定期的に開催されるコンテスト以外にも、大規模なツアーを行っています。これによって、幅広い年齢層のトレーディングカードコレクターのソーシャルニーズに応えるだけでなく、トレーディングカードの利用シーンも広がりました。

外観が美しくコレクション価値が高いといった特徴を持つストラテジートレーディングカードゲームはZ世代の心を掴みました。これはトレーディングカード大手がより多くのプレイヤーを惹きつけようと懸命に取り組んできた結果なのです。

コレクション、コミュニケーション、エンターテインメント、ソーシャルインタラクションなど、この小さなトレーディングカード1枚でさまざまなニーズを満たすことができてしまうのです。なぜZ世代に人気があるのかお分かりいただけたでしょうか。

IPと文化の結合

画像出典:国産アニメIP「時光代理人(LINK CLICK)」、 bilibiliより委託を受け集卡社(Card.Fun)が制作

TCGの最盛期はまだまだ先かもしれませんが、トレーディングカード経済の盛り上がりは誰もが予見できる未来だと言えます。投資家が殺到しトレーディングカード市場をさらに活気づけてくれました。

つい最近では、トレーディングカード大手の杰森動漫(JasonAnime)傘下の集卡社(Card.Fun)がBilibiliから出資を受けたというニュースが検索ランキングで話題になりました。また、華立科技(Wahlap Technology)はA株市場の上場を果たし、現在の市場価値は26億元に達しています。

これだけのリソースを獲得したトレーディングカード分野の今後の発展はどこへ向かうのでしょうか。現在のトレンドから言えることは、依然として中国に根を下ろし、独自のIPとトレーディングカード文化を創出していく流れになるでしょう。

確かに中国では海外のトレーディングカードIPが過半数を占めていますが、国潮(中華風トレンド)が加速するにつれ、進化しつつあります。いま話題の国内アニメIP「秦始明月」、「斗羅大路」、「全日大師」などはすでに市場シェアを獲得しています。これは国潮文化と相まって必然的なトレンドであり、Z世代などの若い世代が中国文化に自信を持ち、高いレベルで自己認識ができているからです。

今の中国のトレーディングカード市場に足りないものはといえば、やはり文化の歴史でしょう。統一されたストーリーの展開や整合性のあるトレーディングカードIPの世界観、如何にしてプレイヤーの忠誠心を育み、市場の発展を後押していくか、これには多くの時間とエネルギーが必要となります。中国のローカルトレーディングカード文化を育成するには、高品質なトレーディングカードゲームのデザインや企画、二次創作などが欠かせません。そして、どのようにしてIPを通して文化と消費者をより密接に結び付け、高品質なIPの活力を維持し、トレーディングカードカルチャーをより多くのコミュニティに浸透させていくのか、トレーディングカード大手はまさに正念場を迎えています。

中国のTCG市場の急速な成長について、今回はごく簡単にご紹介させていただきましたが、カード市場に潜むビジネスチャンスにお気づきでしょうか。

もっと詳しく知りたいという方、まずはトレーディングカードコレクションを始めてみてはいかがでしょうか。コレクションの世界に踏み込んでみれば、Z世代コレクターたちの収集の楽しみがわかるようになるかもしれません。